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18. 王様との謁見

 

 王の間は、結構、荘厳。

 無駄に広くて300畳ぐらい。


 大賢者時代、1度だけ来た事あるが、王様は、5段ある階段の、それまた一段上がった上座に座っている。


 平民は、5段の階段から離れて10メートルの位置までしか近寄れない。


 そして、貴族は、5段の階段の前までと決められてるのだが、

 大賢者時代は、5段の階段を上った所に、しかも、王様がわざわざ椅子から降り、そして、1段下がって対等の目線でお話したのだった。


 そして今回も、王の間まで行くと、本来、呼ばれていないお付のアーモンド侯爵とエドモンド様は、5段の階段の前で止まる。


 しかしながら、リーナは、そのまま5段の階段を上がってしまう。


 リーナは、謁見の前、係の人に初めてだからと、王様との謁見の仕方についてのレクチャーを聞いていたのだが、昨日、徹夜したので、とても眠く、全く聞いていなかったのだ。


 大賢者時代、王様と謁見した事あるから、その時と同じようにやれば、いいんだよね!

 と、思っていたのである。


 アーモンド侯爵は、リーナを止めようとしたのだが、謁見の間では、王が喋るまで誰も喋ってはいけないのだ。

 なので、リーナを止める訳にはいかない。


 そして、リーナはというと、欠伸しながら、王様が座る一段上がった段差部分を椅子がわりにして座ったのだった。


 そう、大賢者時代、王様と謁見した時は、このスタイルで王様とお喋りしたのである。


 なんか、王の間に居る者達が騒いでるが、リーナは気にしない。

 下手に意識すると緊張しちゃうので、茄子かジャガイモだと思うようにしてるから。


 とか、やってると、


 王様が、欠伸してるリーナの隣に腰掛けてきた。


「モッコリーナ様、久しぶりですね」


「ふぁ~久しぶり」


「今回は、また、可愛らしくなられて」


「そうそう。今回、女の子に転生しちゃったんだよね~もう、ビックリって……えっ!? 何で、分かったの!」


 リーナは、とてもビックリする。

 大賢者モッコリーナから、リーナに転生した事、誰にも話してないのに。


「ハッハッハッハッハッ! 相変わらずですね。本当に、人に興味がない。

 そりゃあ、流石に分かりますよ。

 このスタイルで、私と喋るのは、モッコリーナ様しか居ませんから!」


「そうなの?」


「そうですよ。普通は、アーモンド侯爵が居る位置で、貴族は謁見するのです」


「だって、大賢者時代、俺……じゃなくて、私は、平民だったんですが……」


 なんか、王様が、大賢者モッコリーナ時代と同じ感じで喋ってくるから、男言葉が出てしまった。


「ハッハッハッハッハッ! 平民は、もっと後ろに立つのですよ」


「そしたら、王様と話せないのでは?」


「平民とは、普通、直接話しません。人を介して話すものなのですよ」


「そうだったの?」


「そうです」


 なんかよく分からないが、リーナは反省する。

 どうやら、大賢者モッコリーナは、特別だったみたいだ。


「それでは本題に入りましょう。モッコリーナ様。今はリーナちゃんでしたね。

 是非、エリクサーを譲って下さい!」


「リーナちゃん言うな! 恥ずかしい……」


 大賢者時代を知ってる人に、リーナちゃん言われるのは、どうやらとても恥ずかしいみたいである。


「ハッハッハッハッ。それではリーナ嬢。私にエリクサーを譲ってくれませんか?

 実は、娘が、体が腐る奇病によりゾンビになっているのです。

 本当は、リーナ嬢に魔聖水(超)を、優先的に譲ってもらおうと思ってたのですが、今日のリーナ嬢の態度で、大賢者モッコリーナ様の生まれ変わりと気付いてしまったので」


「いつから気付いてたんだ?」


「本当に、今、さっきです。もしかしたらとも思ってたんですが、まさか人が転生できるとも思っていませんでしたので。

 ですが、大賢者モッコリーナ様なら可能かもと、少しは考えてました」


「まあ、いいや。バレてんならエリクサー上げる。ほら!」


 リーナは、王様にエリクサーを上げた。

 結構、この王様には、お世話になってたから。

 大賢者モッコリーナ時代、世捨て人のように過ごせていたのは、この王様のお陰でもあったのだ。


 王様と友達だと、変な奴に、絡まれないですむのである。


「1本だけですか?実は、娘の侍女や、城に仕えてる貴族子女も結構、ゾンビ化してしまったのですが……」


「今は、1本しか持ってないんだよ! 欲しかったら、アーモンド侯爵の王都の屋敷に来てくれ!

 暫くは、そこに居るから!

 というか、エリクサーを、アホみたいにばら蒔いていいのか?

 娘にだけ使うのが賢明だと思うぞ?」


「言われてみたら、そうですね。魔聖水(超)でも、時間を掛ければ治る訳ですし」


 流石は、この国の王様。リーナが作ってる魔聖水が、魔聖水(超)である事に気付いてるようだ。

 まあ、鑑定持ちでも、Lv.60ぐらいの鑑定持ちなら分かるのだけどね。


「そうそう。そうしとこう! その方が、後々いいって!

 また、エリクサー作れる者が現れたと知れると、大変じゃん!」


「ですね。そしたら、魔聖水(超)じゃなくて、超級ポーションを、王家に卸して下さいませ。その方がこちらも楽ですから」


「だったら、アーモンド侯爵家の屋敷に、初級ポーションを持ってこい。そしたら、それを全部、超級ポーションにしてやるよ!」


「絶対ですよ!」


「ああ。約束する。その代わり、俺……じゃなくて、私が、絶対に、大賢者モッコリーナの生まれ変わりってバラすなよ!

 案外、今の生活が気に入ってんだから!」


 そう、リーナは、書庫部屋でのグーダラ生活を、思いのほか気に入ってるのである。


「ハイ。心得てます。リーナちゃん」


「だから、リーナちゃん言うな!」


 こうして、大賢者モッコリーナの生まれ変わり、リーナちゃんの平穏は、確保されたのであった。

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