3-41話藤堂清虎の幼馴染その1
第三部折り返しです。
「じゃあ僕は本屋に寄るからこれで」
「おう。じゃあな〜」
竹中悟志との戦いから数日が経ったある日の放課後、恵一が隼人達と別れて一人近くの本屋へと向かう道中、街路樹の陰からこちらの様子を窺っている人物に気付いた。
「げっ!き、清虎先生…」
その人物の正体に気付いた恵一は反射的に踵を返して逃げようとしたが、追いついた清虎が肩を掴んだのでそうはいかなかった。
「おいおい待てよ恵一君、逃げることないじゃないか。…今日はあのバカ二人組は一緒じゃないのかい?」
彼の名は藤堂清虎。二十歳でweb小説家の彼は恵一や隼人達と同じく能力を持っており、その関係で以前恵一達と一悶着あってしばらく入院していた。恵一は彼の作品のファンだが、以前のこともあるしあまり会いたくはない人物である。
「…だ、だったらなんだって言うんです?今の僕はあの時とは違うんだ、もう記憶は取らせませんよ!」
「まぁそう警戒するなよ。もう君達には何もしないさ。それにぼくは君には感謝しているんだ。君に出会ったお陰で物凄く貴重な体験が出来たんだからね。入院中執筆活動がとても捗ったよ」
「そ、そうですか…」
「あのバカ共が居ないなら都合がいいな。ぼくが昔この街に住んでいたことは前に話したよな?北地区に住んでたらしいんだが、ちょっとノスタルジーに浸りたくなってね。だが住んでたのは五歳の頃までだし、記憶が朧気なんだ。不安なんで少しでいいからついて来てくれないかい?」
(やだなぁ…。この人について行くと絶対碌なことが無いだろうし)
「えっと、ついて行きたいのは山々なんですけど、僕これから塾に行かないと」
「嘘は良くないな恵一君、君は塾なんて通っていない」
「清虎先生が入院してから通い始めたんです」
「嘘つけ、本当は本屋に寄ろうとしていたんだろう?」
清虎の額にはいつの間にかUSBメモリのようなものが刺さっていた。
「!?『メモリー・ドライブ』!いつの間に!?また僕の記憶を抜き取ったんですね!?先生こそ嘘つきじゃないですか!もう何もしないって言ったそばから!記憶を返してください!」
「落ち着けよ、今返すから。どうだい、驚いたろ?君達との戦いを経験して少しは成長したってとこかな」
清虎の額から離れた『メモリー・ドライブ』は凄いスピードで恵一の額に刺さり、記憶を戻した。
「…ところで君、嘘までついて断ろうだなんて、え、何?そんなにぼくのこと嫌なの?」
「そりゃそうでしょう…。前に僕にしたこと忘れたんですか?」
「そうか君はそう言う奴だったのか。このぼくがこんなに頼んでいるのに断るのか。ぼくは君のことを尊敬しているし気が合いそうだとも思っていたのに、少しドライブに付き合うくらいな事ですら断るのか。見損なったよ。しかし嫌なものは仕方ない。それじゃあな」
「…も〜、わかりましたよ先生。少しだけですからね」
「流石恵一君。君なら来てくれると思っていたよ。そこに車を停めてあるんだ。帰りにマックでも奢るよ」
二人は道路脇に停めてあった高級車に乗り込み北地区を目指す。
「やはり君とは気が合いそうだね」
「え、そうですか…?」




