3-40話フラッシュその11
長くなりました
「スンスン…コッチカラニオイマスゼ!」
「よ〜し、オリヴィア発進ですわ!」
サヴェージの匂いの追跡能力を頼りにアリスと隼人を乗せた巨大サヴェージオリヴィアは木を薙ぎ倒しながら進んで行く。
「カナリチカイナ…コノヘンデスゼ!」
「この辺って、全然居ねぇぞ」
「おそらく近くに隠れていやがるんですわ。だがしかし、フッフッフッ…このワタクシ相手に隠れたところで無駄ですわ!行きなさいサヴェージ共!」
「「「イーッハー!!」」」
近くにいたサヴェージが10体ほど集まって来て、匂いの追跡を始める。
(何なんだあのデカブツは!?大量に湧いてくるちっこいのといい、何がどうなってんだ!?)
「スンスン…コノヘンカラニオウゼ!」
竹中が身を隠した場所のすぐ近くから小さな人形達の声と足音が聞こえてきた。その足音はどんどん増えていく。
(ま、まずい!ここに居るのはまずい!)
「おらぁッ!!」
竹中が場所を移動しようと振り返ると、その瞬間飛んできた拳が竹中の顔面を捉えた。身を隠していた茂みから外へと飛ばされる。
「はっ、ぐっ…!!?か、侃士…!」
「よぉ、やっと見つけたぜ竹中…!どうした?今までのキレが無くなってるぜ?」
「日光だ!竹中の能力は日光で発電している。ここは日光が当たらないから発電出来ないんだよ。つまりこいつはもう詰んでいるんだ!」
「ウラァッ!!!」
侃士と共に来た蒼介から分身『パーフェクト・ブルー』が飛び出し、竹中に殴りかかる。
「危ねぇっ、何だこいつ!?何で俺の能力の事を知ってる!?」
竹中は非常用電力を開放してなんとか『パーフェクト・ブルー』の拳を躱した。そして距離を取る。
「ウギギ…!」
「何!?発電した電気を溜めておくことも出来るのか」
「何でこいつの能力についてそんなに詳しいんすか?」
「12年からこいつを追っているんだ。知りたくなくても情報は入ってくるさ。それと今気付いたんだが、電気を溜めておくことが出来ると言っても、溜めておける電気は多くないようだな。それか単に燃費が悪過ぎるのか…。溜めた電気で強化状態を長い時間維持出来るならこんなわけのわからない空間に閉じ込められた状況で能力を解除するはずが無いからな」
「マジで何なんだお前は!?…せっかく特別になれたのに、何で邪魔すんだよォ!!」
「それはこっちのセリフだバカ。僕はただ住み慣れた街で変わらない日常を平穏に過ごしていたいだけなのにその平穏を乱しやがって」
眩い光を纏って蒼介へと突っ込んでくる竹中を迎え撃つ為に『パーフェクト・ブルー』が立ちはだかるが更にその前に侃士が立ち塞がった。
「お前の相手は俺だって言ってんだろうがよぉ…!!」
「どけ!このガキ!!」
「バカだとは思ってたがここまでとは…。邪魔だ、下がってろ!」
「お前から殺すぞボケが!!」
竹中のスパークする手が侃士に迫る。
「ヤバい!侃士!!」
隼人は『エアマスター』の能力で侃士と竹中との間に空気のバリアーを張ろうとするが、間に合わない。竹中の拳が飛んでくる位置に侃士は両手を持ってきてガードを試みる。
「いい加減学習しろバカが、そんなもの無駄なんだよ!その手から感電して死ぬだけだぜ!!」
しかし、ガードをするかと思われた両手を掻き分けるように開くと、そこにはブラックホールのような歪みが出来上がる。
「なんっ…!?」
直感でまずいと思っても、もう既に拳を止めることは出来ない。竹中の肘から先は歪みの中に飲み込まれていく。
「!?うがッ!!?何ぃ…!?」
竹中は後頭部に凄まじい衝撃を受けてよろめく。自分の拳に殴られた事は理解したが、能力によって攻撃力の上がった自分自身の拳を後頭部に受けて三半規管が狂ったのか纏っていた電気も霧散し膝をついたまま上手く立ち上がれない。
「…兄貴がいつも学習しろってうるさく言ってた本当の意味がちょっとだけわかった気がするよ」
侃士は更に歪みに両手を突っ込んでワープさせ未だ立てないでいる竹中を掴んだ。
「そんなに特別で居たいんなら特別にしてやるよ。陽の光の届かない暗闇の世界の中でたった一人の住人としてこれまでの罪を後悔し絶望しながら死んでいくんだな!!」
「な、何!?やめろ!」
侃士の両手に掴まれた竹中はどんどん歪みへと引きずられていく。踏ん張ろうにも先程のダメージがまだ抜けていないので思うように踏ん張れないし電気を纒うことも出来ない。歪みへとどんどん引きずり込まれていく。
「ま、待て!おい待て!まさかお前、俺を殺そうって言うのか!?た、確かに?俺はお前の兄貴を含め何人も殺してきたが、だ、だからといってお前が俺を殺して良い理由にはならねぇよなぁ!?それにここで俺を殺してしまったら俺やお前の兄貴と同じ汚れて呪われた魂になるぜ!それでもやろうってのかよ!?」
「…この、何を今更!!お前に兄貴を殺された時から覚悟は決まってんだよ!!」
「は、放せ!!マジでやろうってのかよ!?…このクソガキ共がぁ!!う、うわああぁ…!!!」
竹中は歪みへと完全に飲み込まれ、入り口が閉じた。
侃士は完全に脱力し地面に仰向けに倒れ込んだ。
「はぁ、はぁ…ふぅ〜。十二年…長かったな。兄貴…俺達の戦いがやっと終わったよ」
「お〜い!侃士!大丈夫か侃士!!」
隼人は巨大サヴェージオリヴィアから降りて侃士に駆け寄る。
「よぉ、隼人。実際終わってみたら、思ったより色々込み上げてこないもんだな。もっと跳び上がるくらい喜びとか込み上げて来ると思ったけど、今はただスッキリしたと言うか、心に穴でも空いたみたいに虚しいんだ。…いや、もちろん嬉しいは嬉しいよ?」
「それより、お前…」
「…ここでの事は俺達だけの秘密ってことで」
「まぁ、あんなのは警察とかじゃ裁けないしな。…わかったよ」
「お兄様が秘密にすると言うならワタクシもそれに従いますわ」
「誰かに喋ったところで僕にはメリットが無いからな。それよりこの街に来た目的も達成されたことだし、今は早く家に帰りたい」
隼人達は『サヴェージ・ガーデン』から草薙霊園へと戻って来た。
「あ、そういやおじさん、何でここに?…だいたい察しはつくけどさ」
「義姉さん…隼人君のお母さんに頼まれたんだよ。ついでに君の様子も見てこいってさ。僕だって暇じゃないけど、義姉さんには逆らえないんだ。元気にやってるって伝えておくよ。外にタクシーを待たせてるから僕はこれで」
蒼介は草薙霊園を出ていき、隼人と侃士、アリスの三人が残された。
「…どうしようかな、これから」
「帰ろうぜ侃士。空いた穴はこれからこの街で埋めていけば良いんだよ」
「…そうだな。よし、帰るか!なんか腹減ってきちゃったよ。帰りにどっか寄っていこうぜ!」
「虚しいのは心の中ではなくお腹の方でしたわね」
やっと終わったよ…。




