3-38話フラッシュその9
気がつくと朝になっていた。激しい頭痛と吐き気はキレイに消えて、まるでそれが夢だったかのようなスッキリとした朝だった。
(夢…か…?)
独房のような部屋の鉄格子のはまった小さな窓から外を見ると、雲一つ無い快晴だった。その小さな窓から薄暗い部屋に陽の光が差し込んでいる。その光を浴びているとなぜだか体の奥から力が湧いてくるような気がした。妙な感覚だ。
(…何なんだ?どんどん活力が溢れてくるような気がするぞ)
「おい!竹中!!起床時間はとっくに過ぎてるぞ!!さっさと出てこい!!」
(…チッ、うるせぇな)
「はいはい、今出ますよっと」
その感覚の正体に行き着く前に看守の邪魔が入り、竹中は一旦考えるのをやめた。この日は竹中が点呼に遅れた為、連帯責任として朝食前に全員で運動場を走らされた。
(なんだ?あんだけ走ったのに、全然疲れてねぇ…)
「…おい、ちょっと待てや」
運動場を走り終わって、朝食を食べようと食堂へ向かおうとしていたところを呼び止められた。竹中が振り返ると、同じく施設に収容されている者たちが全員竹中に対して恨みがましい視線を向けていた。その中でも特に危険だと言われている少年が竹中の胸ぐらを掴んだ。
「何一人で先に行こうとしてんだよ。お前のせいで俺達全員とばっちりくらったのがわかんねぇのか?あぁ!?」
「うるせぇな、放せよ」
「なんだとコラ!!飯食うより先に俺達に何か言うことがあるんじゃねぇの!?」
「だから、うるせぇんだよ!掴んでんじゃねぇボケ!」
竹中の感情に呼応するように体の奥から力が溢れ出し、それは迸る電撃となって胸ぐらを掴んだ少年を灼き焦がした。あまりの電圧に少年は叫び声を上げることすらできずに絶命した。
「えっ!?…おいおいマジか、これって…」
竹中は昨晩の出来事が夢ではないことを理解した。自分が特別な才能に目覚めたことを理解した!
「は、ははっ…はははは!!うおぉマジか!なるほど、これがあの男が言っていた俺だけの特別な才能か!うはははは!!やった、やったぞ!俺は特別になれたんだ!!」
「た、竹中…お前なんだよ今の…!?」
「そ、そいつに、何したんだよ!?」
「…知りたいか?なら教えてやるよ。お前らの体に直接な!!どうせお前らゴミクズが何人か死んだところで、誰も悲しんだりしねーからよぉ!少なくとも俺の親は俺が死んだって悲しまねぇ」
それから竹中は施設に収容されている少年達を全員殺害。途中騒ぎを聞きつけ駆けつけた看守も殺害した。しかし、特別な存在になれた喜びと高揚感の前には人を殺めたことへの罪悪感は微塵も感じなかった。その後竹中は毎日“人並み”になるよう矯正される施設を脱獄。この日、最凶最悪の犯罪者が野に放たれたのだ。
ゴミクズはおめぇだよ…。
さて、これにて突然の竹中の過去回想は終わりです。6月ですね。6月か…。




