3-36話フラッシュその7
「クソッ、あのアホみたいな頭したガキ以外にも仲間がいやがったのか…!しかしこの能力…あの時には居なかった」
隼人を追って『サヴェージ・ガーデン』の中に入った竹中は一人陽の光も殆ど差し込まない程に鬱蒼とした森の中を彷徨っていた。その森の中は不思議なことに、獣や虫が一匹も見当たらない。鳴き声も聞こえなければ気配すらないのだ。時折竹中が踏んだ小枝の折れる音が静寂の中に広がっていく。
「…」
しかし竹中はそんなことはあまり気にしていなかった。否、わけのわからない空間に迷い込んだ事よりも重大な事があったので、気にしている余裕がなかった。
「…まずいぞ、バッテリーが、もう殆ど無い。どうにかしてこの森から抜けなければ…!しかし、どこまで続いてんだこの森は!?」
彼の能力『フラッシュ』は、日光を浴びることで体内で発電し、その電力を使って身体能力を強化、またはその電気をそのまま攻撃へと転用出来るのだが、体内で無限に発電できるわけではなく、強力な分燃費も悪い。故に常に陽の光を浴びていなければすぐにバッテリー切れを起こしてしまうのだ。完全にバッテリーが切れてしまえば、ただの中年男性である。しかし、いざという時のために非常用電力の蓄えはあるので、バッテリーが切れても3分程度は日光を浴びているときのように動けるのだが。
(だが非常用電力はあくまで保険としていざという時に温存しておくのがベストだな)
竹中は節電の為、身体能力強化を解除して森の中を進んでいく。暫く進んだところで、右足に鋭い痛みがはしった。
「いッ…!な、何だ!?この小せぇのは!?俺の右足に、小さな矢が刺さっている!」
「ヒャッハー!アシヲトメテヤッタゼ!」
「ミツケタゾ、コノニオイハマチガイネェゼ!!」
「ヒメガイッテタヤロウダナ!モウニゲランネェゼ」
竹中の周りの茂みのあちこちから何者かの声が聞こえる。それらが走り回る音からかなりの数に既に取り囲まれてしまっていることがわかる。
「何なんだこいつら!?」
「ヒメカラハオマエヲブッコロセトイワレテル。ソシテカンゼンニホウイシタゼ!オマエハモウオシマイダ!!」
「…止まれ」
「え?なんすか?」
「今茂みが僅かに動いた。何かが居るぞ」
「何かって何?…うぉっ!?なんじあ!?」
竹中がサヴェージ達に取り囲まれている頃、蒼介とその後を追うようについてきた侃士の前に茂みの中から5体のサヴェージが現れた。
「ケッ、ニオイガチガウゼ。ヒトチガイダ、イクゾヤロウドモ!」
「コイツラヤンナクテイイノカヨ?」
「コイツラハアトマワシダ!ヒメノメイレイガサイユウセンダバカヤロー!!」
サヴェージ達は蒼介と侃士をスルーして走り去って行く。
「あいつ等って確か、あんたが植物に変えてた人形だよな?まだこんなに居たのか」
「…僕はあんたじゃない。伊弉波蒼介だと言ったろう?君はまず目上の人間に対する言葉遣いを覚えたほうがいいな。一緒にいてストレスだよ」
(すげー言う…)
「僕はあの人形を追う。僕の目的はおそらくあいつ等の行き先にある」
「なんでわかるんすか?」
「勘だよ」
「勘!?」
「嫌ならついてこなくていいよ。君は別方向に行くんだな。まぁ、君がついてこない方がくだらないストレスを感じずに済むので、僕としては好都合だが」
蒼介はまた侃士を置いてさっさとサヴェージを追う。
「俺も行くっすよ!つーかさっきみたいな言い方はないんじゃないっすかねー!?」




