3-26話サヴェージ・ガーデンその6
「…あの、副会長、これ、この糸解いてくれませんか?さっきよりも更に絞まってそのうち細切れにされそうなんですが…!」
「あぁ、すまん!戻れ!」
恵一を縛りあげていた糸はすぐに解けて松平の指先へと吸い込まれるように戻っていく。
「…し、死ぬかと思った」
「恵一、大丈夫か!?」
隼人が恵一に駆け寄ろうとすると、上杉がそれを手で制した。
「隼人待て、迂闊に動くな!」
「あぁ!?何で、っすか?」
「お前さっきの恵一見てなかったのかよ?ここら辺にはまだ副会長の能力『ストリングス』の結界が張り巡らされてるはずだ。迂闊にその糸に触れてみろ、糸に恵一のように襲われるぜ。俺達は運良くその糸に触れなかっただけだ」
「何でそんな結界なんか…」
「悪いな皆、この森、何か変な人形が居るんだ。急に襲って来た。その対策でそいつ等が接近したら気付けるようにっていうのと、そのまま迎撃出来るようにここら一帯半径50メートルの範囲に糸を張り巡らせてある。皆はここまでそいつ等に襲われなかったか?」
「その人形なら俺等も襲われたっすよ。あの人形共、一体全部で何体居やがるんだ!?」
「詳しくはわかんねーが、少なくても20体以上は居るよな。それに加えて、俺が閉じ込められてたコロッセオには口の中からガトリングガンを出してくる上位種みたいなのもいたぜ」
「厄介だな…。あの人形達は、能力者から離れていても使えて数が多い上に、仲間同士で言葉を話して意思疎通をしていたところを見るに、明良の『マッド・クイーン』の自動操縦と違って人形自身が考えて行動できるって感じか。更にその上位種もまだいるかも知れないとなると…。ッ!!皆気をつけろ!糸を切られた!何かがこっちに向かって来るぞ!まずい、『ストリングス』の糸で拘束してもすぐに切られる!」
「副会長、一旦糸を戻して!このままだと皆思うように動けねーっすよ!」
「わ、わかった!」
松平は周辺に結界として張り巡らせていた『ストリングス』の糸を指先へと戻す。草木がガサガサと揺れる音がこれまで遭遇した人形達とは比べ物にならないスピードで隼人達へと迫って来ていた。
「く、来る…!」
茂みから飛び出してきた人形は隼人達と同じくらいの背丈で両手がカマキリのように鎌状になっている。
「先手必勝、『スピン・ジャイロ・スミス』!!」
上杉の投げたネジは高速回転しながら真っ直ぐカマキリ人形へと飛んで行くが、両手の鎌によって弾かれてしまう。カマキリ人形は上杉に狙いを定めると、そのまま突っ込んで来る。
「何!?弾いた!…この野郎!」
更にネジを投げるが、カマキリ人形はそれを見切ったかのように前進しながらギリギリで全て回避していく。
「や、ヤバい!」
「『エアマスター』!!」
「!?」
突進してくるカマキリ人形を空気のバリアーで囲む。
カマキリ人形は突然現れた見えない壁にぶつかり一瞬動きを止めたが、両手の鎌でバリアーを切り裂き、脱出を図る。
「バリアーが破られるのは想定済みだ!」
鎌で切り裂かれた場所からバリアーの中に閉じ込められていた空気が勢い良く噴出し、カマキリ人形を吹き飛ばして距離を取る。はずだったが…。
「こいつ、噴き出す空気と一緒にバリアーから出てくるぞ!?」
バリアーから脱出したカマキリ人形は噴出する空気を追い風代わりに更に加速し、恵一へと迫る。
「うわああ!!『ヘヴィ・リーパー』、僕の身を守れ!」
恵一とカマキリ人形の間に割って入るように出現し、手に持った大鎌を振り下ろす。カマキリ人形は素早い動きでひらりと躱し、『ヘヴィ・リーパー』を抜き去って更に恵一に迫る。
「だ、駄目だぁ!!動きが速すぎて全然当たんない!た、助けて!!」




