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8話黒いストーカーその2

「まぁでも、能力持っててこういう活動しててもまだ他に能力持った人には会ったこと無いんだけどね」

「あ、あの…実は…」

 慧次は自分が能力者である事、そして勇太郎も能力を持っていることを話した。

「まさかこんなに身近に二人も居るなんて驚いたわ。でもこれで確信したわ。他にも能力者が居るってことは、神隠しの噂も今回の件も能力者の仕業だってことをね。っと、慧次、来たわよ!」

伊弉波先輩が指差す先、浅井先輩の背後の影を見ると、その影からゆっくりと黒い人型の“何か”が這い上がって来ていた。

「マジで出て来やがった!」

“何か”は影から這い上がると、浅井先輩に何をするでもなく、ただ背後に立って居るだけだ。慧次が伊弉波先輩に指示を仰ぐよりも早く伊弉波先輩はその“何か”に向かって動き出していた。

「えっ、早っ!」

「くたばれクズ野郎!!」

「えっ!?」

驚いた浅井先輩と共に振り返った“何か”の顔面に強烈な一撃を叩き込む。それを顔面にモロに受けた“何か”は浅井先輩の影に溶けるように消えて行った。

「き、消えた…」

「ふぅ、あたしにかかればこんなもんよ!」

「つ、強え…瞬殺だよ」

 あまりの強さにちょっと引いたのは内緒。その後は“何か”が現れることはなく、浅井先輩を無事に家まで送り届けた。

「少なくとも今日のところはもう現れないと思うから安心しなさい。それじゃあ、あたし達は帰るわ。あ、明日には多分解決すると思うから」

「今日は本当にありがとう。お礼は必ずするからね」

「これくらいのことでお礼なんていらないわ。慧次、帰るわよ」

「は、はい」

慧次は伊弉波先輩のすぐ後ろを歩きながら、いくつか気になっていたことを聞いてみた。

「先輩の能力って何なんですか?さっきは能力使ってるようには見えませんでしたけど」

「あたしの能力は触れた物や自分の鉄分から武器を作れる。でも武器を作るだけでその武器を急に扱えるようになるわけではないから、めちゃくちゃ訓練しないといけなかったんだけどね」

(だからあんなに強かったのか?)

「それと、明日には解決するって、どうしてですか?俺達はまだストーカー本人を見たわけじゃないのに」

「犯人の動機から考えればいいのよ。ストーカーの動機なんて、相手に一方的に好意を持っているか、過去にフラれるとかして勝手に恨んでるってとこじゃない?」

「でも浅井先輩ってめちゃくちゃモテるんですよね?それだけでは犯人をあまり絞り込めないんじゃ…」

「そこも問題ないわ。あの黒いのは犯人の分身のようなものだと思う。さっき殴った時にしっかり手応えがあったから本体である犯人にもダメージがあるはずよ。ってことは犯人の顔には殴られた傷がある」

「な、成る程、大分絞り込めてきたような気がする」

「とりあえず明日は校内の生徒で怪しいやつを探してみましょう。それじゃあ、あたしこっちだから」

 翌日、慧次は勇太郎と登校しながら昨日の事を勇太郎にも話した。

「…で、そのストーカーを探し出そうって事になってんだけど、伊弉波先輩の言う通りに今日中に解決すんのかな?」

「それは流石に無理だろ。ただ伊弉波先輩が良いカッコしたかっただけなんじゃねぇか?その浅井って先輩俺も見たことあるけど、めちゃくちゃモテるんだろ?好意を抱いている奴とかフラれた奴なんてウチの学校だけじゃなくて他校にも居るだろうしよぉ。そんなに都合よく顔に殴られた跡のあるやつなんて…あ!」

「ん?どした?」

「見ろ!都合よく居たぜ、顔に殴られた跡がある奴!どう見たって不良には見えないし、もしかしたらワンチャンあるんじゃねぇか?あれは二年かな?」

勇太郎の言う通り、黒縁メガネの男子生徒が向かい側から歩いてくるのが見えた。口の端につい最近殴られたというような血の滲んだ跡まである。

「確かに、そもそも殴られた跡のあるやつなんて普通に生活しててなかなか見るもんじゃないぜ。行くぞ!」

二人はメガネの男子生徒に近付き声をかけた。

「あの、すいません」

「!!ひいいぃぃっ!!」

男子生徒は慧次が話しかけた途端一目散に逃げ出した。

「おい逃げんなコラ!慧次、あいつ逃げたってことはそういう事だよな?あいつが犯人って事だよな!?」

「可能性はかなり高いな。確定とまでは言えないけど」

「何で?」

「お前結構校内で怖れられてるんだぜ。そんなお前を見たから逃げ出した可能性もある」

「…そう言えば直江の野郎もそんな事言ってたような…」

「どっちにしても今はとにかく追うぞ!」

「おうよ!あの野郎、俺たち相手に逃げ切れるとでも思ってんのか!」













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