3-18話小説家がやって来たその3
「なんかこの間から大事なことを忘れているような気がするんだけど、全く思い出せない…。でも絶対に思い出さなきゃいけないことだったような気がするんだよなぁ…。ちょうど1週間前にさんかく公園で清虎先生と会って、今日もそこで会う約束をしたんだけど、その辺りの記憶が曖昧なんだよなぁ。何かされたような…そうだ!取材されたんだった!それで今日はその続きだ!はぁ~、思い出したらスッキリした!」
恵一は足取り軽くさんかく公園に向かう。隼人達は紅愛の『真紅魔眼』で共有した映像を頼りに少し遅れて後を追う。
「恵一はさんかく公園に向かってるな。一人で何しに行くんだ?遊具で一人で遊ぶわけでも無いだろうし」
「やっぱり女の子と隠れて会ってんだよ!見ろよ、足取り軽くルンルン気分じゃねーか!畜生!いいなぁ~」
「む、ちょっと待って。女の子じゃないみたい」
「え?スマホの画面越しだと、小さくてまだ良くわかんないな。もう少し近づこう」
更に近づいてみると、紅愛の言う通り、恵一と公園で待ち合わせをしていたのは女の子ではなく、大人の男性だった。
「先生、清虎先生!」
「やぁ、恵一君。よく来たね。じゃあ早速取材を始めよう。『メモリー・ドライブ』!!君の記憶を貰う!」
「え!?」
「…あの人、ヤバイよ」
「あの人、恵一になにかしたのか!?」
「え、何かって何を?」
「恵一君の額をよく見て」
紅愛が恵一と向かい合って立つ男性と視覚を共有しスマホに映し出された映像に二人が注目すると、恵一の額にはUSBメモリのようなものが突き刺さっていた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「もしかしなくてもあの人の能力。明良と同じで形にして召喚するタイプ。直接ダメージを与える能力じゃなさそうだけど」
「相手の能力分析してる場合じゃないっすよ!恵一が敵能力者に襲われてるってことじゃねーか!」
「やっぱり兄貴が言った通り、能力者同士が引き寄せ合ってんのか…?」
三人はさんかく公園に急ぐ。
「さて、この前は詳しく見れなかった他の能力者についてもっと見せてもらおう」
「き、記憶って!?先生、あなたは能力者なんですか!?僕に一体何をしているんですか!?」
「うるせぇなぁ、心配しなくても、君の身体に直接ダメージは無いから安心しなよ。ぼくが興味あるのは君の記憶だけだからね」
「おいあんた、俺の友達に何やってんすか?解放しろよ」
(なに!?こいつは『エアマスター』の今川隼人!それに『トリック・ハンド』の前田侃士ともう一人、能力は恵一君の記憶にも詳しいことは載ってなかったが、確か伊達紅愛だったか?…まずい、恵一君の記憶からは『メモリー・ドライブ』に関することは抜き取っておいたはず、恵一君が助けを求められるはずがない。何故ここに来た!?)
清虎は恵一に突き刺した『メモリー・ドライブ』を急いで抜き取り、引っ込めた。
「あれ?隼人君に侃士君じゃないか、どうしたの?それに伊達さんまで」
隼人達が駆けつけるまで清虎に襲われていたはずの恵一は隼人達に気づいて何事もなかったかのように話しかけてくる。額に刺さっていたメモリもなくなっており、外傷もメモリが刺さっていた跡さえもない。
「どうしたのってお前、そこの能力者に襲われてるんじゃないのかよ?」
隼人の問に恵一は全くピンときていない様子。
「能力者?違うよ、こちらは藤堂清虎先生、小説家だよ。それに襲われてたんじゃなくって、取材を受けてただけだよ」
「何だ?恵一のやつ、襲われてたことを全く覚えていないのか?女子と隠れて会ってなかったのは安心したけど」
「侃士お前、何を安心してんだバカ!外傷もなく、襲われていたことすら覚えてないってところが逆に不気味だぜ。てめぇ恵一に何しやがった!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何をそんなに怒っているんだ!?それにさっきから能力者とか何を言っているんだ?ぼくは恵一君に新作小説の為の取材をしていただけだよ。恵一君だって言っていたろう?」
(…かなりまずい、『メモリー・ドライブ』はこいつ等からは死角になっていて見えていないはずなのに、何故ぼくが能力者だと気づいているんだ?ぼくは殴り合いの喧嘩ってのは苦手なんだが…)
「てめぇとぼけてんじゃねえぞ!!メモリみたいなものを恵一の額に刺してたろ!」
隼人は清虎に向けて空気弾を撃つために構えた。それを見て清虎は自分の頭をフル回転させて考える。
(こいつ、空気弾を撃つ気だ!この距離では『メモリー・ドライブ』の射程外、一方的にやられてしまう!なにか無いのか?この状況を打開出来る手は…そうだ、恵一君の記憶を探るんだ!きっとこれまでに抜き取った記憶の中にこいつの弱点があるはずだ!どこだ…あった、あったぞ!!ちょっと信じられんが、これしかない!)
この間僅か0.1秒。
「君、その頭カッコいいと思ってんのか?まさかそんなダサい頭本当にカッコいいと思ってるわけはないよなぁ?ネタなんだろう?」
(これでどうだ!?)
清虎が隼人の頭を貶した瞬間、隼人が纏う雰囲気が一変。髪の毛が逆立っていると錯覚するほどにブチ切れた。
「…おい、今何つった!?もっかい言ってみろコラァ!!!」
「ふっ、ビンゴだったな。やはり記憶は嘘をつかない」
「隼人!?こいつどうしたんだよ急に!?」




