3-15話前田兄弟その7
「ボケっとすんなこのバカ!!」
「…はっ!?あ、そうか、俺と位置を入れ替えたのか!」
将吾の能力『トリック・ゾーン』によって将吾自身と侃士の位置が入れ替えられたことで、侃士は危機を逃れた。そう、侃士は。
「がふっ…!!貴様、は…!」
「あっ、兄貴!!」
侃士と位置を入れ替えた将吾の胸は急に現れた何者かの拳に貫かれていた。
「うはははは!!ラッキー!!マヌケな弟を狙えば絶対に庇うと思ったぜ。本命はお前だったんだよ!お前の一瞬にしてものを入れ替える能力には流石に俺のスピードでも敵わんからなぁ」
「竹中、悟志…!うぐっ、よ、ようやく…見つけた…!」
「お前ら兄弟の事は全く覚えてねぇ。もちろんお前らの両親のこともな。能力者同士は磁石のように引かれ合う、だったか?ククク…いいねぇ、それが本当ならこれから退屈せずに済みそうだぜ!」
将吾の胸を貫いた竹中の拳から発生した電撃が将吾の体を容赦なく灼いていく。
「ぐああああぁ!!!」
「兄貴!!!てめぇ!!」
「侃士…!俺に近寄るな!!お前も感電するぞ!…いいか侃士、お前は、これからは自分が正しいと思う方へ…!」
「長々とうるせえんだよ!さっさとくたばれボケが!!」
「うわぁ、眩しい!目を開けてられない!!」
竹中が更に電力を上げると、拳の電気の輝きが一層強くなり、将吾は真っ黒に灼け焦げて絶命した。
「ヤバすぎんだろこいつは!」
「あ、兄貴…!…お前だけは絶対許さねぇ!!」
侃士は『トリック・ハンド』の能力で両拳をワープさせ、竹中に殴りかかる。ありとあらゆる方向から次々と襲いかかる侃士の拳を竹中は涼しい顔で避け切った。
「お前の能力は十分見せてもらったし、当たらねぇぜ。遅いんだよ、お前の攻撃!その拳が兄貴の能力みたいに瞬間移動してくるんなら別だがな!」
竹中は人間離れした超スピードで侃士に接近、勢いそのままに侃士を前蹴りで蹴り飛ばす。
「ぐはぁっ!!?」
「『マッド・クイーン』!!」
「それももう十分見せてもらった!」
明良の喚び出した異形のハチ『マッド・クイーン』のミサイル攻撃を後ろに大きく跳ぶ事で射程範囲外に逃れた。
「チッ、射程外か…」
「なんだ今の跳躍力!?人間のレベルを超えてるぞ!?」
「良いなぁこの街、こんなにも俺と同じような能力を持ったやつが居るなんてなぁ。気に入った!…おっと、今はお前らとこれ以上殺り合うつもりはないぜ。もうすぐ日も暮れるしよぉ。俺は好きな食べ物とか楽しみはとっておくタイプなんでな。次は精々俺を楽しませろよ。それじゃああばよ!」
竹中は超人的な跳躍力とスピードで忍者のように建物から建物へと跳び移りながらすぐに見えなくなった。
「待てコラ!!逃げんな!!…あ!兄貴!!」
侃士は黒焦げになって絶命した兄、将吾に駆け寄る。
「胸を貫かれた上に、あれだけの電撃を受けたんだ。もう死んでるよ」
「…兄貴はこれまで俺の知らないたところでも何人も能力者を殺してた。そりゃこうなって当然、自業自得ってやつさ。頭悪い俺でも分かる。…でも、兄貴は最期に、俺が竹中に襲われそうになった時、庇ってくれたよな…?命懸けで俺を守ってくれたよな!?なぁ、皆見てただろ!?」
「…あぁ、確かにお前の兄ちゃんは、最期にお前のことを庇ったよ」
「命懸けで弟を守る、その点だけは心から尊敬できる人間だった」
夕暮れ時のさんかく公園に侃士の慟哭が響き渡った。
スピン・ジャイロ・スミスとの温度差よ




