3-13前田兄弟その5
恵一からの電話を受けて、明良は急いで学校からさんかく公園に向かう。
「むやみやたらに首を突っ込むなと言ったんだがな…」
「あ、会長さよなら〜」
「どけカス!」
「ありがとうございます!」
学校から出て赤信号を無視して横断歩道を突っ切り、盛大に玉突き事故を起こした車も無視して最短ルートでさんかく公園に急ぐ。
「おい!アンタ!赤信号見えねぇのか!?この状況どうしてくれんだよ!!」
玉突き事故を起こした車の運転手が何か叫んでいたけれど、明良は振り返る事もない。
一方、前田兄と対峙する隼人は一瞬にして対象を入れ替える能力『トリック・ゾーン』の攻略法をまだ見つけられないでいた。
(こいつ、ふっ飛ばした恵一を能力を使えば一瞬で自分のところに戻して盾に出来るのに、しようとしない。ってことはあんまり遠くのものは入れ替えられないんだ。だったらやりようがあるかも知れない!)
「『エアマスター』!!」
隼人は自分の周りに空気のバリアーを展開し、穴を開けた。上杉をふっ飛ばした時のように、空気がパンパンに詰まったバリアーは中の空気を噴出させて、隼人をふっ飛ばす。
(こいつ、空気を噴出させて『トリック・ゾーン』の射程範囲外に出ようとしているのか!?あの時も恵一とかいうやつに空気弾を俺が当てさせたのではなく、まさかこいつにそうするように仕向けられたのか!?友達を逃がすと同時に、『トリック・ゾーン』の射程範囲を見極めるために!…畜生、してやられたぜ!だが!)
前田兄はポケットから小石を取り出した。
「『トリック・ゾーン』!」
その小石と隼人の位置が一瞬にして入れ替わる。
「くそっ!もう少しだったのに!」
「今のは流石に焦ったぜ。だがもう二度とさせねぇ。もし弟が侃士ではなくお前なら能力者狩りももっと楽だったかもな!!」
前田兄は目の前に瞬間移動してきた隼人に殴りかかるが、隼人も空気のバリアーを展開し、その攻撃を防いだ。
「チッ、空気を操る能力…シンプルだが、思っていたより厄介だ」
「ふん、俺はあんたの能力にだんだんと慣れてきたぜ?そしてこの距離なら、その能力の発動も間に合わねぇんじゃないすか?くらえ!」
隼人が至近距離で放った空気弾は前田兄に直撃し、吹き飛ばす。
「ぐはぁっ!!な、なにぃ!?」
「よし、手応えあり!モロにくらったな!」
「やった!命中!隼人君の作戦勝ちだ!!」
しかし、地面に叩き付けられた前田兄はまだ立ち上がってくる。
「こいつ、まだ立つのかよ!?」
「…俺は、俺達は、負けられねぇんだよ…!相手が誰であろうとな…!!能力者は、許さねぇ…!!」
「すごい執念だ…!一体何がこの人をここまでさせるんだろう?」
「恵一君、待たせたな。…あいつが犯人か。まさか、同じクラスの人間が犯人とはな。4月からウチのクラスに転校して来た前田将吾君。正直驚いたよ」
「か、会長!やった!やっと来てくれた!」
「え、会長!?」
「会長…?そうか、吉良明良、お前もそうだったのか…!やはりこの街は能力者に関してだけは困らないな…」
「なんだ、急いで来たが既に満身創痍じゃあないか。さっさと終わらせよう。『マッド・クイーン』!」
明良の側に4本腕の異形のハチが現れる。異形のハチ『マッド・クイーン』はハチの巣状の下半身を将吾に向けた。
「か、会長!待って!!」
「問題ない。撃て!」
隼人が止めるが、『マッド・クイーン』はその下半身からハチ型ミサイルを発射した。しかし、そのミサイルが着弾する前に将吾の能力『トリック・ゾーン』によって隼人と将吾の位置が入れ替わる。
「うわあああぁ!!待ってって言ったのに!!」
「馬鹿め、そのまま同士討ちしてろ…えっ!?」
「うわあああぁ!!…え?」
隼人に着弾するかと思われたミサイルは隼人の目の前で軌道を変えて逸れていく。
「なっ、ホーミング!?はぐぁああ!!!」
「ホーミングってレベルじゃないぞ!?精度が高すぎる!」
軌道を変えたミサイルは将吾に全弾命中し爆発。将吾を吹き飛ばした。
「問題ないと言ったろう?生徒会の試験の時に見せたのは標的を自動でどこまでも追撃する遠距離形態。対して今回は私自身から2m以上離れられなくなる代わりに『マッド・クイーン』本体とそのミサイルを自由にコントロール出来る近距離形態だ。まぁ2m以上離れられないと言っても、ミサイルの射程距離5mと合わせて実質射程距離は7mだな」
「「雑に強過ぎる…!」」
ミサイルってカッコイイですよね。
僕は好きです。




