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3-4話マッド・クイーンその2

 1年2組の教室。放課後誰もいない教室に隼人は一人戻ってきた。隼人が教室に入った瞬間、校内放送用のスピーカーからこれまで隼人の事を見ていたかのようなタイミングで生徒会室に居た眼帯の女子生徒の声が聞こえてきた。

“あ〜テス、テス…んんッ、ちょっと待って、龍角散飲む”

「なんだ…?」

“あぁ〜、失敬失敬。えーでは、教室に着いたようなので、どぞ。お好きなタイミングで。…あ、言い忘れてたけど、この試験から逃げたりしたら、生徒会室に居る恵一君が爆散するんで。夜露死苦”

放送が終わって、教室には再び静寂が訪れた。

「…え!?何!?今なんて言った!?恵一が何だって!?おい!!…くそっ、行くしかねぇ!」

隼人が教室から飛び出すと、背後からとても大きな虫の羽音のような音が聞こえてきた。それが隼人についてくる。

「何なんだよ今度はよぉ!!」

隼人が振り返ると、隼人と背丈と同じくらいの大きさのハチのような何かが4枚の翅を動かし飛行していた。ただサイズ以外にも実際のハチとは違う部分があり、そのハチの下半身はドレスのスカートのように大きく広がっており、腕は女性のように細い華奢な腕が4本。

「うわあああぁ!!!!でっけぇ虫!?ハチ!?やべぇよ田舎!!」

隼人は転びそうになりながらもそのハチから必死に逃げる。しかしハチは逃げる隼人を追ってくる。

「ヤバイヤバイ!!来てる来てる!!」

ハチは大きく広がった下半身を隼人に向ける。穴がたくさん空いているその下半身はドレスのスカートというより、ハチの巣のようだった。その穴の一つ一つに小さなハチが詰まっている。

「ひぃいいい!!!!キモッ!!」

隼人はこの時初めて東京からこの田舎街に引っ越してきた事を後悔した。大きなハチは下半身に詰まったハチを隼人に向けて発射した。隼人は迫る小さな無数のハチを飛び退いて避けると、無数のハチは壁が見えていないかのように壁に激突して爆発していく。その爆発によって壁が抉れた。

「何なんだよマジでよぉ!!」

 一方生徒会室では恵一が軟禁状態にあった。

「あ、あの、さっきの僕が爆散するって、何なんですか!?今川君がもし試験から逃げたら、何されちゃうんですか!?ねぇ、吉良会長!」

「彼はきっと逃げないよ。ここで君を置いて逃げるような男なら最初から生徒会に誘ったりしないさ」

「…へ?何いってんだこの人!?なんだかそれっぽいこと言ってるけど、あの短い間で何が分かるっていうんだ!?」

「そんなことより、今川君が来るまで暇だろ?私には十歳離れた弟が居るんだが、その弟が本当に可愛くてね。一緒に写真見て待ってようか。動画もあるぞ」

吉良会長はタブレット端末を取り出し、恵一に弟の写真フォルダを見せ始めた。副会長は何か諦めたような顔をしており、眼帯の女子生徒がコーヒーのおかわりを持ってきた。

「ハァ…ハァ…ふひひ、見ろ恵一君、これが3歳で初めての自転車それでこれが4歳幼稚園のお遊戯会。そしてこれが5歳、初めての逆上がり。この瞬間を写真に収めるために私は一週間幼稚園に張り込んだんだ。どうだい恵一君、私の弟は最高だろう?可愛いだろう?なぁ?」

「え…えっと…はい…」

(さっきから何なんだよ~!こんなのほとんど盗撮じゃないか!生徒会長目茶苦茶美人だし噂では学食のクオリティ向上から老朽化した校舎の建て替えまで選挙で掲げた公約を全て1年以内に実現した超カリスマだって聞いてたのに、さっきから息は荒いし目は血走ってるし、第一印象と全然違うよ!こんなのブラコンってレベルじゃあないぞ!変態だよ!早く助けに来てよ今川君!)

恵一はこの時初めてこの私立東高等学校に入学したことを後悔した。







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