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2-31話聖者の右腕その1

 蒼介と樹利亜は二人で教会を探索すると、奥の部屋へと続く扉を見つけた。

「樹利亜さん、松永が居るとしたら十中八九この奥ですよね?」

「扉らしいものは入口以外にはここしかないわね」

蒼介が扉を開けると、奥は礼拝堂と同様に灯りはなく、外から差し込む光もないので中は完全な暗闇だった。

「…ここも灯りはなしか。仕方ない、スマホを使おう」

「蒼ちゃん、暗闇の中からなにか来る!!危ない!!」

樹利亜の言う通り、暗闇の中から仄白く光る大きな腕が蛇のように伸び蒼介に迫って来ていた。樹利亜は咄嗟に蒼介を押しのけるが、自分自身が避け切れずに左腕をその大きな腕に掴まれた。そしてその腕は掴んだ樹利亜の左腕を引き千切っっていった。

「な、なに!?樹利亜さん!!」

引きちぎられた部分からは一滴も血は出ておらず、断面は白く光ってモザイクがかかったようになっていた。大きな腕は再び暗闇の中へと引っ込んでいく。

「大丈夫よ。なんだか分からないけれど、全く痛みはないわ。『LOVEマシーン』で時間を戻せばどうということはないわ」

樹利亜は自身の分身『LOVEマシーン』を出し、自分に触れさせることで時間を腕が千切られる前まで戻そうとするが、時間が巻き戻るどころか千切られた部分から徐々に白い光に溶けるように侵食されていく。

「時間が戻らない…!」

「無駄だ。その腕は存在を消されたのだよ。時間を巻き戻しても存在が消えたものはどうしようもない。そしてその腕から徐々にあなたの存在自体がこの世界から消えていくのだ。この右腕で掴み取ったものの存在を消す、これこそが私の第二の能力、『セインツライト』の力だ」

「…お前が松永か!」

「バカな、ディスクで能力を引き出す能力じゃ…」

暗闇の中から一人の男が姿を現す。その男の右腕は肘上まで大きなグローブを付けたように二回りほど大きく、仄白く輝いていた。

「この能力を引き出してから慣れるまでに少し時間がかかったが、ちょうどいいタイミングだったな。…仏教の話になるが、君たちは悪人正機(あくにんしょうき)説というのを知っているかね?ざっくり説明すると、悪人こそ仏の教えを聞いて悟りを得る能力、資格を備えた往生するにふさわしい者であると言うことで、つまりは悪人こそ救われるということなのだが、誤解しないでもらいたいのは、救われるために悪行をすればいいとかそう言うことではなく、悪事を働いて裁かれ苦しんでいるもののことを指しているんだ。この教えが実に素晴らしいと思ってね、私も自分のできる範囲で苦しむ人を救おうとこれまでやってきたのだが、それを阻もうというのなら、君たちを悪とみなし全力で排除させてもらう」

「牧師のくせに仏教の事を長々と…僕にとっては誰が正義だとか悪だなんてのはどうでもいいんだ。ただ自分とその周りの人達が平穏に過ごせればそれで良いんだよ。僕の平穏を乱すものは正義であろうとなんだろうと排除する」







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