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2-27話裏切り者奮闘記その6

 喫茶樹利亜にはこの日あまり客は入っておらず、茉希と六華の他に居た客は既に帰って店内に客は二人だけだった。

「…えーと、こ、この問題はこの公式を…」

「あ〜、なるほど分かった!…多分!」

「た、多分…?」

「あのちゃん茉希がこんな時間まで飽きずに勉強なんて、珍しいこともあるもんだわ。明日は雪でも降るのかしら?」

「なんでも留年がかかってるらしいですよ。もし赤点取ったら親にバイトを辞めさせられるとか。知ったことじゃないですけどね」

「えっ!?それはダメよ!ちゃん茉希けっこうお客さんに人気あるんだから!もっと勉強頑張ってもらえるようにケーキと紅茶サービスしちゃうわ!!蒼ちゃん、急いで用意するからあの二人のとこ持ってって!」

「…はい」

(こんなところでわざわざ勉強なんて、絶対このサービスが目当てだな。樹利亜さんすぐサービスするもんなぁ)

 蒼介が勉強する茉希と六華の席までケーキと紅茶を持っていくと、外から何やら声が聞こえた。

「俺がこれまでただ不様を晒して逃げ回っていただけだと思ってたのか?たしかにあんたの能力『ザ・ファング』、恐ろしい能力だぜ。まともにやり合ってもまず勝ち目はない。だから堅実が信条のあんたとは逆に賭けに出ることにした。この場所を目指していたんだよ、喫茶樹利亜があるこの場所を!!」

この声に六華がいち早く反応した。

「アニ、あんちゃんだ!外でこ、こんなに大声で、何やってるんだろう?」

六華は外の様子を確認するために窓からちらりと覗くと、血相を変えて店の外に飛び出した。

「あ、ちょ、六華!?」

「何を訳わかんねぇことを言ってんだ。構わん、殺れ!『ザ・ファング』!!」

「あんちゃん!!」

「…賭けに、勝ったぜ!ここ喫茶樹利亜に来れば誰かしらいると思ったが、大当りだ。こいつが敵だやれ!六華!!」

「ああああああっ!!!」

六華を中心に地面が分厚い氷に覆われる。丈志郎はジャンプして氷を躱したが、水野の足はくるぶしのあたりまで氷に覆われた。濡れた路面を泳いでいた『ザ・ファング』も凍りつき動けなくなった。

「…な、何だとぉ!?」

「これであんたの『ザ・ファング』は封じたぜ!」

「フフフ…甘いんだなこれが。『ザ・ファング』は凍りついた時点で形だけのただの氷だ。そして雨は未だ降り続いている。これがどういう事か分かるか?雨が降ってるってことは、この氷の上から『ザ・ファング』は何度でも蘇る!お前はもうお終いだ!!店の中にも何人か居るなぁ、後でそこの店の奴等もまとめてあの世に送ってやる」

「蒼ちゃん、アタシ達も行かないとマズイんじゃないの!?」

「マジでヤバイって!」

「大丈夫でしょう。…それに僕は寒いの苦手なんです」

店の窓からは樹利亜と茉希、蒼介が外の様子を伺っていた。どうやら相手は蒼介達にも気づいているらしい。

「…だから、さっきから言ってんだろうが。お前の負けだって。奥の手行くぜ六華!『ロック・スター』!!」

丈志郎は六華めがけて『ロック・スター』の鍵を投擲した。その鍵は六華の体に吸い込まれていく。

「こいつ、何をした!?そいつに一体何をしたんだぁ!!」

「あああああっ!!!!」

六華の叫びに呼応して路面の氷は更に分厚く、周囲の気温はより低く、ついには降りしきる雨粒すらも瞬時に凍て付かせるほどになっていった。

「こ、凍る!俺の体のみならず雨粒までも一瞬で、呼吸をしただけでも肺が凍て付きそうだ!そのオドオドしたガキのどこにそんな力が!?」

「リミッターを外したんだよ。人間ってのは無意識の内にリミッターを掛けてるもんだよな、それは能力だって同じことだぜ!六華の能力のリミッターを『ロック・スター』で意図的に解除アンロックしたのさ!この状態の能力を名付けるなら…『アイスクリーム・リミット・ブレイク』!!」

「バカな!?こんな、あり得ん!あ、雨で濡れている分、より凍ってしまう!畜生!!裏切り者のクソガキ共が!!あああぁ!!」

水野の体はみるみる内に氷に覆われていき、氷像と化した。

「はぁ~、マジでヤバかった…死ぬかと思った…」

「あ、あ、あんちゃん、や、やばいよ!死んじゃったかな!?」

「まだ生きてんじゃねぇか?それより早いとこ雑賀さん達呼んてくれ。さっさと回収してもらおうぜ」

 その後、水野は駆けつけた雑賀達回収班に回収され、この一件は片がついた。が、

「そういえば丈志郎君、坊ちゃんのお迎えを頼まれてたと思うんだが、そっちはどうしたんだい?」

「え」












2023年最後の投稿です。2024年もよろしくお願いします。

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