2-26話裏切り者奮闘記その5
「うわああああ!!!く、来るなぁ!!」
血の海となったモール内を丈志郎は全力で駆け抜け水野から距離を取ろうとするが、血で滑って思うように走れず、転んでしまう。
「もうお前に逃げ場はない。『ザ・ファング』相手によくここまでやったと思うよ。だがここまでだ」
血溜まりの中を赤黒い背ビレが丈志郎に凄いスピードで迫って来る。丈志郎は何とか立ち上がり水野から再び距離を取りながらショッピングモールの出入り口を目指してエスカレーターを転がるように駆け下りた。
(や、ヤバい!既に一階も血の海だ!もしかして俺を追い詰めるためだけにこのモール内に居た全員を殺したのか!?今はとにかく外に出るしかない、このままここに居たらこれから入ってくる人達も同じように殺されてしまう!)
丈志郎は血の海を駆け抜けて出入り口から外に飛び出した。外に出て水野から距離を取ろうと再び走り出したとき、身体中に激しい痛みが迸った。
「うっ…!!こんな時に、このタイミングで…!リミッター解除の反動が…!」
無理矢理に身体能力のリミッターを解除し続けた事で丈志郎の体は限界を超え、悲鳴をあげていた。これまでリミッターを解除したことで羽根のように軽かった体は凄く重く感じる。
「…だがここで止まるわけにはいかない!動け、俺の脚!!ここで止まったら今度こそ終わりだ、追いつかれてしまう!」
丈志郎は限界を超えた体にムチを打って走り続ける。後方からは同じくショッピングモールを出た水野がモール内にあるサイクルショップから拝借したマウンテンバイクに跨り追ってきていた。
「急に動きが鈍くなったな。もう限界かい?いい加減鬼ごっこにも飽きてきたとこだ、今度こそ終わりにさせてもらう!『ザ・ファング』!!」
丈志郎の背後から雨で濡れた路面を泳いで『ザ・ファング』が迫る。これまで必死に水野から距離を取るために走り続けていた丈志郎は遂に足を止めた。
「…終わった。今度こそ終わりだ。ただし、あんたの負けでな!!」
「なに?ついにおかしくなったか。頼みの綱のリミッター解除も切れたお前のどこに勝機があるっていうんだ!リミッター解除があっても『ザ・ファング』に敵わず不様に逃げるだけだったお前に!!」
「俺がこれまでただ不様を晒して逃げ回っていただけだと思ってたのか?たしかにあんたの能力『ザ・ファング』、恐ろしい能力だぜ。まともにやり合ってもまず勝ち目はない。だから堅実が信条のあんたとは逆に賭けに出ることにした。この場所を目指していたんだよ、喫茶樹利亜があるこの場所を!!」
「何を訳わかんねぇことを言ってんだ。構わん、殺れ!『ザ・ファング』!!」




