2-20話ディープ・ダイバーその1
丈志郎と六華との戦闘に決着がついてから時間が経って、地面に張っていた分厚い氷はキレイに溶けて無くなっていた。蒼介は丈志郎を連れたまま壁際で宇喜多を殺した人物を待つ。
(さぁ来い…!今度こそ見つけ出して攻撃を叩き込んでやる!)
「蒼介!やめろって言ってんのよ!!」
「安心してよ義姉さん。こいつが殺られる前に奴に攻撃を叩き込めばいいのさ。傷一つつけさせやしないよ」
「そういう問題じゃない!」
(やっぱりこいつこういう所は毛利彰の息子だわ)
少し離れた場所では男が一人蒼介達の様子を伺っていた。その男は松永にその能力を買われ、主に暗殺を請け負っている。名は風魔小次郎、余談だがこの名前は本名ではなく偽名で、彼の本名は松永ですら知らないし、松永の手下達にはその存在すら知られていない。彼等が万が一裏切った時に暗殺しやすくするためだ。
「やはりあの二人では無理だったか。何か喋られる前に始末させてもらう!ガキ共が、余計な手間かけさせやがって」
風魔は息継ぎをするとまるでプールに飛び込むように壁の中に潜っていった。彼の能力『ディープ・ダイバー』は、息の続く間壁などあらゆるものの中に潜る事ができる。因みに潜水の記録は最長二十一分四十八秒。これはちょっとした自慢だ。風魔は壁の中を泳ぐように誰にも気づかれること無く丈志郎の背後に回り込んだ。
(よし、あとはこの蒼介とか言う奴が目線を外した隙に一気に仕留める!…さっさと余所見しろよ。俺だって永遠に潜ってられるわけじゃないんだからよ)
「蒼介、いい加減にしなさい!」
「…義姉さんには、友達を殺された気持ちは分からんだろう!!宇喜多君は確かにどうしようもないクズ野郎だったけど、僕にとってはかけがえのない親友だったんだ!仇をとらなきゃ、このストレスは消えないんだよ!!」
「…」
(分かるわよ、あたしにだって…)
「奥様〜!お待たせしました!」
蒼介達の周りに三台の車が停まった。その一台から真田が降りてくる。残りの二台は回収班だ。
「やっと来たわね。じゃあ回収よろしく」
「はい。おい、雑賀!回収してくれ」
真田に呼ばれ、回収班の車から気だるげな男が降りてきた。彼は回収班の雑賀晋也。
「はいよ。いや〜しかし奥様、蒼介君が居るとは言え、その強さ全く衰えませんね。こりゃ一児の母とは思えんな。化け物っすよ」
「いいから早くしろ」
「分かってますって」
そう言うと雑賀の周囲に小さな虫のようなものが十匹程度現れた。その口は細い針のように尖っており、「プ〜ン」という独特な羽音も蚊によく似ている。この虫達は雑賀の能力『フライアンドシール』。針のような口で刺した相手の能力を一、二時間封印することが出来る。
「よし、行け」
『フライアンドシール』はまず気を失って倒れている六華の方へ飛んで行き、その首筋をチクリと刺した。
「おいテメー!六華に何しやがる!!」
「大丈夫、大丈夫。少しの間能力を使えなくしただけさ。その間ちょっと痒いくらいで命に別状はない。さて、次は君だな。蒼介君、抵抗されたら面倒だからしっかり抑えててくれよ」
雑賀に話しかけられて蒼介は雑賀を振り返った。
(蒼介がガキから目線を外した!今だ!!)




