2-9話ラッキー・ボーイその4
「…そうか、それは大変だったね」
宇喜多は気が付けば祭服の男、名前を松永天真と言うらしい。にこれまでの事、ここに来るまで何もかも投げ出して楽になろうとしていた事などを全て話していた。松永は宇喜多のそんな話に真摯に耳を傾け、静かに聞いていた。
「そういえば看板にお悩み解決致しますとか書いてたけど、さっきから聞いてるだけで何にもしないじゃねぇか」
「はは、申し訳ない。ではここから解決に移るわけだが、君には二つの道がある。」
「二つの道?」
「そう。一つは君がやろうとしていたように全て投げ出して楽になる道。ただ一つ違うのは、自分でするのとは違って、全く痛みも苦しみもないことを保証しよう。そしてもう一つの道はもう少し自分の可能性に賭ける道。これは完全に賭けだ。賭けに勝てば自分だけの特別な才能が手に入るが、とても苦しむことになるかも知れない。苦しんだ末に何も手に入らずそのまま君は一生を終えるかもしれないがどうする?」
「どうするって、あんたが何を言ってんのかよく分かんねぇぞ」
「どちらか選んでくれ」
(何だこいつ、頭おかしいぞ!言ってることが意味不明だ。やっぱこんなとこに居るやつはマトモなわけがないんだ)
「分かった。じゃあ俺は三つ目の道、どちらも選ばない道を選ぶぜ。じゃあな」
「ここに来た以上、どちらも選ばず帰ることは出来ないよ。選ばずに帰ろうとするということは、なんだかんだ言いつつ君は命が惜しいんだな?ならば道は一つしかない。特別に無償で与えよう。『アカシックレコード』」
「!?なに…!?」
松永はいつの間にか手にディスクを持ち、帰ろうとする宇喜多の背後からいきなり頭部にそのディスクを押し付けた。すると宇喜多の頭部にディスクのスロットが現れ、そこにディスクが吸い込まれていく。
「な、何しやがった!?…う!?うがあぁあ!!」
「さぁ頑張れ頑張れ!これに耐えれば君だけの能力が手に入る。その能力があれば人生を簡単に逆転できるぞ。素質自体は皆持っているものなのだ。それを発現出来るかどうかは別だがな」
「うぐ…お前、さっきから何いってんだよマジで!!頭が割れる…!!」
宇喜多は激しい頭痛に襲われ立っていることさえ出来なくなってしまう。
「…だめかなこれは、耐えられないか」
「うあああ!!…はぁッはぁッはぁッ、痛みが、消えた?どうなったんだ!?」
「オイ、キコエルカヨ?マスター」
痛みが消えた途端、宇喜多の耳元から何者かの声が聞こえてきた。
「な、何だよ!?あまりの痛みに頭がおかしくなっちまったのか!?」
「オイ、コッチダヨ、オマエノアタマハ正常ダゼ」
「何だお前!?俺はどうなってしまったんだ!?」
宇喜多の首元に人形のような何かが引っ付いている。どうやらそいつが話しかけているらしい。
「おぉ、素晴らしい!見事賭けに勝ったようだね。その小さいのが君だけの特別な才能、能力さ。しかもここまでしっかりと自意識を持っているとは、なかなか珍しい」
「俺の、能力…?」
「ヤットオチツイタカヨ、ソウサ、オレハ『ラッキー・ボーイ』。オマエガウンデクレタ能力サ。オレハ運ヲコントロールスル。タメシニオマエガカッタ宝クジノ当選通知ヲカクニンシテミナ」
何が何だかわからないままスマホで当選通知を確認すると、そこには一等の欄に宇喜多が一枚だけダメ元で買った宝くじの番号が書かれていた。
「…07組142356…。07組142356!?07組142356!!ま、間違い無い!ホントだ!一等二億が当たってる!!やった!ラッキー!!これがあれば遊んで暮らせるぞ!!」
「ドウダイ?コレデワカッタヨナァ?オマエハ運ヲ自在ニコントロールスル能力ヲテニイレタンダゼ!」
「お前がやったのか!?凄い!凄いぞ俺の能力は!!」
「なんということだ、私は君のことを少々見くびっていたようだ。まさかこれほどの能力を持つものになるとは…!」
「なぁ牧師さん、これ金取るのか?どれくらい?」
「本来なら頂いているが、無償で与えると言っただろう?要らないよ」
「そんな、流石にそれは悪いよ。せめて何かさせてくれ」
「そうか、いい心がけだ。それじゃあ…」
そして今に至る。




