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2-7話ラッキー・ボーイその2

 時は蒼介が取り憑かれる少し前。喫茶樹利亜に一人の男が蒼介を訪ねて来た。

「いらっしゃいませ」

「よっ蒼介、久しぶりだな。高校以来か」

「えっと…?」

「俺だよ俺、宇喜多だよ!高校時代の親友のこと忘れちまったのか?」

名前を聞いてようやく思い出した。彼は蒼介の高校時代唯一と言っても良い友人だ。名前は宇喜多雅紀。蒼介を伊弉波家の養子としてしか見ていないクラスメイト達とは違い、彼は蒼介の家柄など関係なく接してくれた。高校を卒業してからは疎遠になっていたが、思わぬ再会である。高校時代は黒髪の素朴な印象の男子だったが、現在の彼は高そうなブランドの腕時計やアクセサリーを身に着け、あの頃とは印象が大きく変わっている。

「あぁ!雰囲気が高校時代とは変わり過ぎててわからなかったよ。久しぶり、今はあまりお客さん居ないから好きな席にかけてよ」

「テンチョー、誰あれ?蒼介の知り合い?」

「アタシも知らないけど、そうなんじゃないかしら?ちゃんと友達居たみたいでアタシ嬉しいわ!」

「ふ〜ん、蒼介友達いたんだ。でもなんか成金っぽくて感じ悪くね?あーしは仲良くできねーわ」

「ちょっとちゃん茉希!しーっ、しーっ!お客様にそんな事言わないの!聞こえちゃうでしょ!?」

「…さっきから何話してるんです?それよりブレンドとチーズケーキお願いします」

「い、いや〜何でもないのよ?ブレンドとチーズケーキね、かしこまりぃ。…そうだ!蒼ちゃん、今はお客様あまり居ないしちゃん茉希も居るから注文持ってくついでに友達とゆっくりお話してきたら?蒼ちゃんの分もサービスしたげるわよ♡久しぶりに会ったんでしょ?ちゃん茉希も良いでしょ?」

「ま、まぁ、テンチョーもこう言ってるし、蒼介が嬉しいって言うなら?少しの間蒼介の分もあーしが頑張ってもいいけど〜?」

言いながら茉希は蒼介をチラチラ見る。彼女が何を考えているのか蒼介は理解した。

「ありがとう茉希ちゃん、嬉しいよ」

「はぅぁっ!!!…え〜なにヤバ!カッコよすぎて無理〜♡蒼介があーしにありがとうだって〜、うへへ…♡」

「はい、ブレンドとチーズケーキ。蒼ちゃんの分も」

「どうも。じゃあお願いします」

一人テンション上がりまくっている茉希を放置して蒼介は注文を持って宇喜多の席に向かう。

「茉希ちゃんありがとうってぇ〜、ひえぇ〜♡」

(もうちゃん茉希呼びじゃないのも気にならないくらい嬉しかったのね。恋は盲目ってやつかしら)

「いや〜、まさか蒼介が喫茶店で働いてるとはなぁ。あんまり接客業はしないイメージだったんだが」

「伊弉波グループの重役とかになるよりは全然マシだよ。宇喜多君は漫画家だっけ?」

「あぁ、それなんだけど、もう辞めたんだ」

「え!?何で?あんなに頑張ってたのに」

「俺には才能無かったんだよ。それに気付いたらもう何にも描けなくなって…その後も就活してたんだけど、どこにも引っかからなくてなぁ。あぁ、今は働いてないけど今の方が全然幸せだぜ?最近めちゃめちゃツイてるんだ。競馬や競艇とかギャンブルやったら面白いように当たるしよぉ、暫く生活に困らない程度の貯えは出来たしな」

 明らかに異常だ。いくら運がいいと言っても、ギャンブルの勝ち分だけで生活出来る程世の中甘くない筈だ。しかし眼の前の男宇喜多はギリギリ生活できていると言うより寧ろ贅沢をしてそれでも金が余るといった感じだった。

「そうなんだ。幸せなら良かったよ」

その後も二人は暫く他愛のない話をして解散した。

「じゃあな、蒼介。久しぶりに会えて良かったよ」

「僕もだよ。それじゃあ」

(やっぱ異常だよなぁ…でもまさかな)

その後は何事もなく閉店時間となり、店内の片付けをしていると、蒼介の耳元で何やら囁くような声が聞こえてきた。

「オイ、オイッテバヨ!キコエテンダロ?蒼介クンヨォ」

「何だこいつ?いつからくっついているんだ?全く気付かなかった」

蒼介の首元にいつの間にか人形のような何かがくっついていた。どうやらそいつが話しかけているらしい。

「仕事の邪魔だ、どけ」

「イデッ!?」

蒼介がそいつをはたき落とそうとすると、謎の強烈な衝撃が蒼介を襲う。蒼介はその衝撃で壁に激突する。その物音を聞きつけて樹利亜と茉希が駆けつけて来た。

「うぐっ…!?がはっ!」

「ちょっと蒼ちゃん、大丈夫!?」

「急にどうしたし!?」

「ダメダロォ〜?ヒトノハナシハサイゴマデキカナクッチャアナァ、蒼介クン?」

「…何なんだ、こいつ」

「ねぇ蒼介、その引っ付けてるの何?」

「オレガミエルノカ?ナルホド、コイツラモ能力者ダナ?マァ、カンケイナイガナ。オレハ『ラッキー・ボーイ』!運ヲコントロールスル能力サ。マスターニ蒼介、オメェヲコロセトイワレテルガ、マスターハ能力ニメザメタバッカデヨォ、オレヲトリツカセタノハイイガ、オマエカラハナレスギチマッタ。コンナニハナレチャ、オレノ能力モ弱マルッテコトヲワスレテヤガル。ヤレヤレダナ。」

(運をコントロールする能力?点と点が繋がってしまったな…まさか宇喜多君が、それより僕を殺すだって?どういうことだ?)
















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