2-5話悪魔の子その5
「その分身ごと挽き肉にしてくれるわぁ!!」
狼男の拳が『パーフェクト・ブルー』を捉える寸前、『パーフェクト・ブルー』の姿が狼男の眼の前から掻き消えた。
「!?なんと!!?バカな、スピードもパワーも、わしの方が上じゃあ…!?」
「確かに、スピードもパワーもじいさん、アンタの方が上だった。今この瞬間まではね。僕の能力『パーフェクト・ブルー』は相手に対する怒りや憎しみといった負の感情、つまりストレスを感じるだけ強くなる。さっきのはパワーアップさせるためにあえて受けたのだ。流石何人もの人間を食ってエネルギーを取り込んだだけあって凄まじい力だった。しかし、所詮はド素人のジジイだ。動きに無駄があり過ぎる。パンチだってそんなに大振りじゃ、当たるはずない。折角のパワーが台無しだ。パンチってのは、こうやるんだ!!」
「ウガアアァア!!」
『パーフェクト・ブルー』が雄叫びを上げながら狼男に連打を叩き込む。
(な、何じゃ!?…さっきまでとは比べ物にならんくらいに速すぎる!)
「はぐぁッ…!!」
狼男の巨体は嵐のような連打を受けて数メートル飛ばされた。
「攻撃がこれくらい気持ちよく決まるとやっぱり気分がいいなぁ。幼い頃から義姉さんに無理矢理叩き込まれた技術もこういう時には役に立つ」
「速すぎる、拳が見えなんだ…!しかし、パワーではまだ負けてはおらん!…ぅえっ!!?」
狼男は立ち上がろうとするが、手足に思うように力が入らない。思うように動かせない。
「な、ななんでぇ!?」
「…そろそろ効いてきたかな。今あんたの体は少しずつだが変化しつつある。植物にね。左拳で殴ったものを少しずつ植物に変えていき、右拳で殴った植物を成長させる。これが『パーフェクト・ブルー』の真の能力さ。徐々に自分の体が植物になっていく気分はどうだい?現段階では見た目はそのままだからまだ実感湧かないかなぁ?もう少し殴ってみようか」
「や、やめ…、ぎゃあああ!!!」
「ギャヒャハハ!!」
『パーフェクト・ブルー』は狼男を空中に放り投げ、そこに拳を連続で叩き込む。狼男の体は末端部分から徐々に変形していき、最後には立派な柳の木に姿を変えた。幹には人の顔のような不気味な模様が浮かんでいる。
「…!…!!」
『パーフェクト・ブルー』は蒼介の体に溶け込むように消えていった。
「ふぅ、スッキリした。…あ、しまった。このじいさんからは“ディスク”について色々聞かないといけなかったのに、完全に木にしてしまったぞ。これじゃ聞けないな…まぁいいか。義姉さんには色々言われるだろうけど」
変死体事件は解決し、柳川の河川敷に突如として出現した柳の木はちょっとしたニュースになったけれど、しばらくしたら誰も気にしなくなった。そして案の定、義姉の凪には小言を沢山言われた。




