22話キラーズの戦場その3
「はぁ、はぁ…クソガキ共め!『キラーズ』が闘っている間に一旦退いて体勢を立て直さなくては…!断じて逃げるわけではない!戦略的撤退だ!!」
毛利はさんかく公園から必死に距離を取ろうと痛む体にムチを打ってひた走る。
「まずい、このままじゃ逃げられる!くそっこいつ等数が多すぎる!」
兵隊達は毛利を守るようにアサルトライフルで攻撃してくる。その弾幕のせいで毛利を追いかけることが出来ない。
「クソチビ共どけ!!」
クリスのペットボトルからレーザーのように圧縮された水が発射され、攻撃してくる兵隊達を貫き両断する。
「クソ親父が、勇太郎君をよくも…!!絶対に逃がしません!勇太郎君の仇!!」
クリスは兵隊達を蹴散らしながら逃げる毛利を追いかける。
「ちょ、ちょっと、一人じゃ危ねえって!」
「やかましい!!役立たずのパーマはそこで大人しくしてなさい!」
「何だとこの野郎!!」
毛利を追いかける二人を遮るように公園のいたるところから兵隊達が集まって来た。
「まだこんなに居るのかよ!?」
「こんなチビ共、『オアシス』で…!」
「戦闘ヘリ!?片桐さん、後だ!」
慧次が気付いた時には兵隊を蹴散らすクリスの背後にガトリング砲を装備した戦闘ヘリが照準を合わせていた。
「なっ…!」
(今からではもう間に合わない…!)
クリスが死を覚悟した時、地面が腕のように伸び、ヘリを叩き落とした。
「勇太郎君!勇太郎君が生きている…!!」
「…勝手に、殺すな…!チッ、痛えなぁ畜生…!」
「いけない、すぐに止血を!あなたは奴を追いなさい!私はここに残ります。『オアシス』なら応急処置くらいは出来ます」
「分かった!」
クリスの持つペットボトルから水玉がふよふよと飛び出し、勇太郎の傷口に貼り付いていく。伊弉波の傷口にも同じように水玉を貼り付け止血した。
「くそっ、居ない!逃げられた!…いや、あの傷じゃそう遠くまでは逃げられないはずだ」
「はぁ、うっ、くっ…は、ハハ、ハハハ!やった!やったぞ!あのガキ共を撒いてやったぞ!あとは『キラーズ』の戦闘機が復活し次第あいつ等を消し飛ばして平穏な日常を取り戻すんだ!!」
毛利は慧次達から必死に逃れ、無意識に自分の家に向かっていた。
「早く帰って、誕生日のパーティをするんだ…!プレゼントだってもう買ってある。蒼介きっと喜ぶぞ…!」
「ちょっとあんた、何やってんだ!?危ねえぞ!!」
「…え?」
通行人に注意されて毛利は今自分がどこに立っているのか理解した。逃げるのに必死になりすぎて自分でも気付かないうちに道路に飛び出していたのだ。だが気付いた時には既に遅かった。
「ぅおぐっ…?!!」
道路を走って来た居眠り運転の大型トラックに激突され、何度もバウンドしながら飛ばされる。そのトラックも電柱にぶつかり止まった。
「うわああ!!人が轢かれた!きゅ、救急車!!」
「うわぁ、ヤバい、ヤバいってこれ…!」
現場には野次馬が集まって来て騒然となる。
「…何だ?何の騒ぎだ?」
慧次も騒ぎを聞きつけて駆けつけ、集まった野次馬に尋ねる。
「どうしたんすか?」
「あぁ、三十代くらいのサラリーマンが道路に飛び出して大型トラックに轢かれたんだと。そのサラリーマンちらっと見たけど、ありゃ即死だろう。残念だけどな」
(サラリーマン!?まさか…!)
「すいません、ちょっと通してください!」
慧次が人混みを掻き分けて轢かれた男性を確認すると、確かに神隠しの犯人、毛利彰その人であった。
「マジかよ…でも、これで良かったのかも知れない。こいつは法律じゃ裁けない」
程なくして現場には救急車やパトカーが到着した。毛利はやはり即死だったが、トラックの運転手は重症を負いながらも一命は取り留めたらしい。
同日夜、毛利家
「あの人今日も残業かしら?蒼介、せっかくのご馳走が冷める前に食べちゃいなさい。お父さん今日もお仕事遅くなるみたいだから。お腹空いてるでしょ?」
「ううん、待ってる。誕生日くらいみんなで食べたい」
ひとまず街で何年もの間暗躍していた殺人鬼、毛利彰はトラック事故によってこの世を去り、平穏が戻った。しかし、この街が毛利によって傷つけられた傷の痛みに気付くのはきっとこれからなのだろう。
第一部《完》
第一部これで完結です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。




