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2話ペーパー・ムーンその2

 その後の時間を憂鬱な気分で過ごし、放課後。慧次は勇太郎に連れられて体育館裏までやって来た。

「織田君、俺君になにかしたっけ?」

「お前、今朝のアレ何だよ?」

「え?何のこと?」

「しらばっくれるな、お前も特殊な『能力』を持ってんのか?」

「お前もって、まさか…!」

織田の足元の地面が腕のように伸びた。

「俺も中学の頃から使えるようになってな。おかけでそこらの不良には負けたことないんだが、ちょっと退屈しててな。能力者同士ってのはまだ無いんだわ」

慧次はここで織田が何故自分をこんな所まで連れてきたのか理解した。こいつは自分以外の能力者と初めて会うので自分が能力者としてどれくらい強いのか力比べがしたいのだ。

(勘弁してくれよ…)

「やらないよ。それじゃあ」

慧次は帰ろうとして踵を返すと、目の前の地面が腕のように伸び、殴りかかってくる。

「うおっ、危ねえ!」

慧次はなんとか躱すが、躱したことでかえって織田との距離が縮まってしまった。

「逃さねぇぜ?オラオラ、お前も持ってんだろ?使ってみろよ!」

「…そんなに見たいなら使ってやるよ。『ペーパー・ムーン』!!」

慧次がジャンプすると通常ではあり得ない高さまでフワリと飛び上がる。体育館の壁を蹴って登っていき、屋根に着地した。同時に体育館の壁際に居た織田からは死角となって慧次の姿が見えなくなる。

「能力見せたし、これで良いだろ?それじゃあ俺今度こそ帰るから」

(流石に死角には攻撃出来ないだろ。あいつ強そうだし、逃げるが勝ちってね)

慧次はそのまま体育館の屋根を走って逃げる。

「あ、おい!逃げてんじゃねぇぞこの腐れブロッコリーが!!」

 その瞬間、慧次の足が止まった。

「…お前、今なんつった?」

織田の方に引き返す。

「逃げんなって言ったんだよ!勝負しろコラ!」

「そこじゃねぇんだよ!今俺の髪型のことをブロッコリーとか言いやがったな!?俺はこの自慢のヘアスタイルを貶されんのが何よりムカつくんだ!」

慧次は体育館の屋根から飛び降りながら持っていた鞄を頭上へと放り投げた。慧次の能力『ペーパー・ムーン』は自分自身と触れたものに掛かる重力を5秒間だけ1/6、つまり月面と同じに出来る。よって放り投げられた鞄は通常よりも高くまで飛んで行く。

(5…)

「やっとやる気になったな。だがお前の能力、パワーの無い能力と見たぜ。俺の『マジック・ハンド』には敵わねぇ!」

織田が地面から二本の腕を伸ばし、飛び降りてきた慧次を捕まえる。

(4…)

「捕らえたぜ!このまま地面に叩きつけてやる!」

(3…)

「ちょっと待った、何で俺がこんなに無防備に飛び降りてきたのか疑問に思わないのか?」

「え、何が?」

「わざと無防備に飛び降りて捕まえさせたのかも知れないってことだよ」

「な、何のために?」

(2…)

「さぁ?それは自分で考えろよ。もしかしたら俺が嘘を言ってるだけかもな。だが俺の能力『ペーパー・ムーン』は自分自身と触れたものに掛かる重力を5秒間だけ1/6に出来る。体育館の屋根から飛び降りる時に使ったから、今4秒くらいしか経ってない。仮に今地面に叩きつけても落下の衝撃も1/6になって大したダメージにはならないぜ?」

(1…)

「ちょ、ちょっと待て!何で敵である俺にそんなにペラペラとバラすんだ!?」

「信じるか信じないかはお前次第だけどな」

「うおおお!!訳わかんねぇ!!」

(…0!)

「残念、時間切れだ。俺だけに注目していた時点でお前の負けだ!」

体育館から飛び降りる時に投げた鞄が織田の頭目掛けて落下してくる。

「…は?ぐはっ!?」

落下速度が十分についた鞄の威力は織田を一撃で戦闘不能にした。慧次を捕らえていた二本の腕が消え、フワリと地面に着地する。

「ふぅ、こいつの能力『マジック・ハンド』、正直賭けだった。こいつが頭悪くて助かったな。…ここに置いていくのもなんか気が引けるし、仕方ない、保健室まで連れて行くか」

気を失っている織田を保健室まで連れて行き、養護教諭には色々聞かれたが、適当に誤魔化して慧次は家に帰った。

 翌日、慧次は鬱々とした気分で登校していた。

「昨日はついカッとなってやってしまったけど、ああいう奴って後で報復とかしてくんのかな?…勘弁してくれよホントに」

校門をくぐったところで何者かに後ろから肩を叩かれた。慧次は驚いて後を振り向く。

「よぉ、昨日は悪かったな。あの後お前が保健室に運んでくれたんだって?いきなりケンカふっかけたのは俺だし、お詫びの印にコンビニでパンとか色々買ってきたからよ、後で一緒に食おうぜ。後お前のことは慧次って呼ぶからな、俺のことも勇太郎って名前で呼べよ」

 入学三日目、初めての友達は奇抜な見た目の不良だった。また、この一部始終を見ていた他の生徒からヤバそうな不良をパシリに使っていたと思われ、慧次は勝手に不良だと勘違いされることになるが、本人は気付いていない。






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