15話キラーズ
オカルト同好会にクリスが入部してから二週間が経った。この2週間の間は特に新たな神隠しの被害など無く平穏な日常が続いている。そんなある夜のこと。
「おい、ここじゃね?さんかく公園ってよぉ」
「ふつーのただの田舎の公園だぜ。ホントにこんなとこで神隠しなんて起こってんのか?羽柴」
さんかく公園にやって来たこの二人組はI市内一荒れていると言われる北工業高校の三年で校内の不良たちのトップに君臨する羽柴と柴田。二人は神隠しの噂で有名なこのさんかく公園周辺にただの興味本位でやって来ていた。
「けっ、うみねこ荘といいこのさんかく公園といい、噂だけで何もねぇじゃねぇかよ!おい柴田、帰るぜ。完全に萎えたわ。こんなとこまで来て損した」
「あ?おぉ」
二人が公園から出た時、何やらブツブツと言いながら歩いて来たサラリーマンと羽柴の肩がぶつかってしまった。サラリーマンはそれに気付いていないのか素通りしていく。
「おいコラ、待てやオッサン!テメェ人にぶつかっといて一言もなしかよ?」
「…わたしに、言っているのかね?」
「今ここには俺達の他にお前しかいねぇだろがボケ!!」
「これは失礼した。すまないが急いでいるんだ。それでは」
「…完全にアッタマきた!『マグネティズム』!!」
「何だ!?か、体が!?」
サラリーマンの体が何か見えない力に引っ張られ、二人組の内、柴田と呼ばれた方へ引き寄せられていく。
「そぉら、寄ってきた!」
柴田の右腕が鋼鉄化しており、そこに引き寄せられ離れなくなった。
「何がどうなっているんだ!?」
「驚いたかいオッサン?実は俺達には他の人にはない能力があってな。俺の能力『マグネティズム』は触れた物何でも磁石に変えられんのよ。そしてあんたを捕まえてる柴田の能力『メタルフォーシス』は自分の身体を鋼鉄に変える。確か急いでるとか言ってたなぁ、俺達は今ここまで時間かけて来たものの無駄足だったんで結構ムシャクシャしてんだ。出すモン出せば開放してやるぜ?ヒヒヒ…」
「…まさか私以外にも能力を使える人間が居たとは、それも二人も…」
「何ブツブツ言ってんだ!!さっさと持ち金全部出せって言ってんだよ!」
「今なら何も無かったことにしてやるから、わたしを開放しなさい」
「はぁ!?頭イカれてんのかテメェ!!状況分かってねぇようだな!」
羽柴が身動きの取れないサラリーマンに殴りかかろうとした時、羽柴の頭上をラジコンよりも少し大きめな軍用ヘリが飛んでいるのが柴田には見えた。
「な、何だ!?」
「あ!?どうした?」
「おい、上だよ、上見ろよ!」
「何だ?ラジコン?」
そのヘリの両側面のドアが開き、そこから小さな兵隊が十体落下傘を広げて降下してきた。
「何だこいつ等!?」
兵隊達は降下しながら装備したアサルトライフルを羽柴に向けて発砲する。
「あぎゃああああ!!はッ、はぁッ、顔が、い、痛ぇ!!ああああ!!」
羽柴が大きなダメージを受けた事で『マグネティズム』の効果が切れ、サラリーマンは自由になる。
「おぉ、やっと動けるぞ。成る程、ダメージをある程度受けると解除されてしまうのか。一口に能力と言っても色々あるんだなぁ」
「な、何だよ、何なんだよお前は!」
サラリーマンは柴田を無視して羽柴に近寄る。柴田はその隙にその場から逃げ出した。
「逃げたか。ふん、まぁいい。何も問題はない」
「うああああむぐっ!!?」
「おいおい、いつまでもそんな情けない声上げるんじゃないよ。それくらい我慢しろよ、男の子だろ?誰かに聞かれたらどうする?」
サラリーマンは革靴を履いた足を地面をのたうち回る羽柴の口の中に突っ込み黙らせる。
「友達にも見捨てられて哀れな君に一つ質問に答えてもらおうか。わたしと君達以外で同じような特殊な能力を持った人にこの街で会ったことはあるかい?ン?」
羽柴の口から足を引き抜く。
「はッ、はッ、…お、俺が悪かった!た、助けてくれよ、何でもする!お願いします!」
「わたしは君に質問したんだがなぁ、さっさと聞かれたことに答えてくれよ。何でもするんだろう?あぁ!?」
「はッ、はッ、はぁッ、はぁッ、…し、しし知らない…あ、あんたが初めてだ。ホントだ、嘘じゃない!」
羽柴は激痛と恐怖に震えながら何とか言葉を絞り出した。
「そうか、知らないか。もういい、十分だ。早く帰って家族揃って夕食を食べたいんでね。失礼するよ」
サラリーマンは羽柴を残して立ち去っていく。
「…あぁ…た、助かった…」
羽柴は安堵のあまりボロボロと涙を流す。そんな彼の目の前にラジコンサイズの戦闘機が現れ、ミサイルを発射した。
「…ぇ?」
羽柴はミサイルを受けて跡形もなく消し飛んだ。サラリーマンは振り返ることもなく立ち去っていく。
「わたしの能力『キラーズ』は標的を絶対に逃さない。地の果てまでも追いかけて必ず仕留める。安心しろよ、すぐに君の友達もそっちに行くから、そこでケンカでもなんでも好きにやるといい」
程なくしてさんかく公園から少し離れた場所でも爆発が起こった。




