4-11話浅井先生と黒い靄その2
2026年一発目、遅くなりました。
今年もよろしくお願いします。
旭は戦闘態勢を取りながら、この状況を整理する。目の前には背中から立ちのぼる黒い靄のような能力によって朝倉真希奈の動きを封じ人質のようにして旭と向かい合う担任教師の浅井恵一。対する旭はこのまま戦闘となれば背後に友人の直江響を庇いながら一度しかまともに使ったことの無い能力で戦わなくてはならない状態で、どちらが有利かは火を見るよりも明らかである。端的に言って勝ち目は薄いだろう。
「だる…」
(せめてマッキーが逃げられれば良かったんだけど、機械の中に入り込む能力も身動き取れなければ使えないのか。なら、何かされる前に叩き潰す)
「うわぁっ!?ごめん待って待って!!一旦話を聞いてほしい!戦う気はないんだ」
旭の命令を受けた『ステイ・ゴールド』が大きなインステップと共に恵一に攻撃を仕掛けようとすると、恵一は背後の黒い靄を慌てて引っ込めて真希奈の拘束を解いた。それを見た旭も『ステイ・ゴールド』の攻撃を中止させる。
「え?なに?」
攻撃を中止させたが、『ステイ・ゴールド』を引っ込めることはせず、警戒は解かない。
「誤解させるようなことをしてごめんね。黒い靄みたいなやつは『ヘヴィ・リーパー』、僕の能力だよ。今日は君たち三人に話があって呼び出したんだ。伊弉波さんのその能力を引き出すきっかけとなったポルターガイストの件の事とか、色々ね」
「何で先生がそのことを知ってんの?」
「伊弉波グループに対能力犯罪組織がある事を知ってるかな?実は僕もその組織に所属してるんだ。君のお父さん、蒼介さんの仕事仲間でもある」
「は?なにそれ聞いたことないんですけど」
旭には恵一が何を言っているのか全く理解出来なかった。確かに旭の父蒼介は数多くの事業を展開する伊弉波グループの会長であり旭の祖父伊弉波大和の養子だが、伊弉波大和が引退する際に蒼介はそんなストレスが溜まる立場は御免だと、義姉の夫にあっさり会長の座を譲ってその後伊弉波グループの事業には一切関わらず喫茶店の店長をしていると聞いている。対能力犯罪組織なんてものがある事も、そんな組織に所属しているなんて事も蒼介からは聞かされていない。
「デタラメ言わないでよ。パパは喫茶樹里亜の店長だよ」
「じゃあ何故蒼介さんは君の能力を引き出した『アカシックレコード』を持っていたと思う?あれはただの喫茶店の店長が手に入れられるようなものじゃない」
「…」
「信じてくれたかな?先に中等部の朝倉さんに先日のポルターガイストの件について話を伺おうと思ったら、逃げられそうだったんでやむを得ず能力を使いはしたけど、誓って攻撃の意思はないからそろそろ金ピカのそいつを引っ込めてくれないかな?」
そう言う恵一からは敵意のようなものは確かに一切感じない。旭は溜息を一つ、『ステイ・ゴールド』を引っ込めた。
「その組織のこととかも聞かせてよね」
「もちろん。まぁ座って、飲み物でも出すよ。…生徒指導の小山田先生がこっそり隠してるやつだけど。何がいい?」
旭たちをソファに座らせてから、恵一は全員分の飲み物を用意して旭たちの向かいに座った。




