3−67話 姉の流儀その3
隼人と恵一は、侃士の入院している病院からの帰り道、近くで物凄い轟音が鳴り響いた。
「な、何今の音!?」
「…さんかく公園の近くだな、行ってみるか」
隼人と恵一が音のした場所まで行ってみると、根元からボッキリと折れた電柱が倒れ、激しい土煙が舞っていた。
「な、何だこれ!?何で電柱が!?」
「ただ事じゃないって感じだな。気を付けろよ、恵一!」
二人が土煙が晴れるのを注意深く待っていると、倒れた電柱の下で数回何かが爆ぜる音が聞こえて、さらに土煙が舞い上がった。倒れた電柱が更に細かく折れる。
「な、何か出てくる…!?」
「…!」
「…弟、…守る…!絶対、に、逃がすものか…!『マッド・クイーン』!…っ!ゴホッ!はぁ、はぁ…!」
土煙の中に人影がゆらりと浮かび上がる。隼人と恵一が身構えると、ゆっくりとその人物が姿を現した。
「か、会長!?」
東高の生徒会長、吉良明良がゆっくりと出てきた。頭やだらりと垂れた左腕からは血が滴っており、同じく血まみれの左脚を引きずりながら、姿を現した。
「何があったんすか!?凄い怪我だ、救急車呼びますよ!」
「…必要、無い…!…見つけたぞ、長宗我部洋貴の能力…」
「えっ!」
「そいつにやられたんすか!?…電柱をへし折るほどのパワーがあんのかよ…!」
「それにしても会長、下敷きになってよく無事でしたね」
「…流石に、倒れてくる電柱を受け止めるパワーは『マッド・クイーン』にもなかった。だから、咄嗟に真下の地面にミサイルで穴を穿ってそこに隠れてやり過ごしたんだが…その際にミサイルの爆発で私自身ダメージを受けてしまってね、この通りだよ…」
「おっと、流石迷いがなさすぎるぜ…」
力が抜けて倒れそうになった明良を隼人が咄嗟に支える。
「無理しちゃ駄目っすよ会長」
「…奴を逃すわけにはいかん。…どさくさに紛れて変なとこ触ったら殺すぞ…」
「しませんって!なんだと思ってんすか俺の事!恵一、手を貸してくれ」
「う、うん!」
隼人と恵一は協力して明良を支えて助け起こした。
「…『マッド・クイーン』を奴のところに自動操縦で向かわせた。既に奴に攻撃を当てているから、ゴホッ、藤堂清虎の説明なら、奴が能力で自分を何かに誤認させて逃げようとしても、『マッド・クイーン』なら惑わされずに攻撃出来る…!その爆発を辿れば、奴を見つけられる、はず…」
「こんなにボロボロになっても追撃をやめないなんて、物凄い執念だ…。吉良会長、精神力が強すぎる!」
「全ては可愛い弟の平穏の為…邪魔するものは、絶対に排除する…!」
「会長ブレねぇなぁ」
その頃、桐生はゆっくりとスマホの地図アプリで自分の住むアパートの場所を確認しながら帰宅していた。すると背後から微かに虫の羽音が聞こえてきた。どんどん近付いてくる。
「…かなりでかい虫だな、ってなにっ!?」
桐生は振り向きざまに背後に迫っていた『マッド・クイーン』のミサイル攻撃をまともに受けて吹き飛ばされた。
「…ばっ、バカなっ!?仕留めたはずでは…!?何故まだ攻撃してくるんだ…!?」
『マッド・クイーン』の四枚の翅はボロボロ、二本ある左腕のうち一本がもげていたり満身創痍だが、その複眼に明確な敵意を宿して桐生を狙っていた。
「く、くそ…!」
立ち上がった桐生の姿が分身して十人に別れた。実際は分身していないけれど、能力で相手にそのように見せたのだ。しかし、『マッド・クイーン』は一切迷う事なく、本体の桐生をミサイルで攻撃する。焦るあまり、一度触れられたり攻撃を受けて能力を破られると二度目は効かないと言う弱点を失念していた。
「…ま、まずい…!!」
「見つけた!隼人君、吉良会長、『マッド・クイーン』が攻撃してるよ!!」
「ビンゴ!どうやら間に合ったみたいだな」
「…言ったろ、『マッド・クイーン』からは逃げられん、もう詰んでいるとな…!」
「な、何ぃ…!?何でまだ生きているんだあいつ!?化け物か!?」




