12話オアシスその1
直江から神隠しの件の依頼を受けて一週間が経った。その間特に新たな情報や手がかりは無く、いつもと変わらない日常が続いている。慧次は勇太郎と登校中、以前から気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ、その鞄に付いてる宇宙人のストラップ、お前そういうの好きなの?」
勇太郎の鞄にはいつもタコ足が生えた宇宙人のデフォルメキャラのストラップが付いているのだが、彼が好んでつけるとはなかなか考えにくかったので気になっていたのだ。
「あぁ、これか?五歳くらいの頃に幼馴染みから貰ったんだよ。その時に何か約束したような気がするけど思い出せねぇんだよな。何か常に付けてないといけないような気がしてな。捨ててもいつの間にか戻ってきてるし」
(それはもう呪いの類なんじゃ…)
「約束って、すげー大事なことだったりしてな」
「それはないだろ。そんなに大事な約束なら覚えてるはずだろ」
「そうか?」
「そうだよ」
他愛ない会話をしながら登校し教室に入ると、教室がやけに賑わっていた。どうやらこのクラスに転校生が来るらしい。
「こんな時期に転校生?珍しいこともあるもんだな」
賑わうクラスメイト達を横目に眺めていると、担任の教師が教室に入ってきた。
「お前ら席着けー。えー、今日からこのクラスに転校生が来ます。それじゃあ入って」
担任の教師に促され転校生が教室に入ると、慧次と後の席の勇太郎を含めたクラスの男子生徒を中心にどよめきが起こった。
「お、おい、慧次!スタイルバツグンだし、すげー美少女だぞありゃあ!!俺の好みド真ん中だぁ!!今日ちゃんと登校してきて良かった!」
「浅井先輩と同等、いやそれ以上かも知れない!お、俺、このクラスになって良かったー!!いぇーい!!」
陽の光を浴びてキラキラ輝く白銀のポニーテールに碧眼、それに出る所はしっかり出ているという、男子の好きな要素を詰め込んだような美少女だった。こんな美少女を見て沸かないほうがどうかしている。
「お前ら落ち着け。まぁ、気持ちは分かるが静かにしろ。自己紹介出来ないだろ。…それじゃあ、自己紹介してくれるかな?」
教師が何とかその場を落ち着かせて転校生に自己紹介するよう促す。
「はい先生。イギリスから来ました、片桐クリスです。父が日本人で母がイギリス人のハーフで、父の仕事の関係で十年間イギリスに住んでいました。まだこの国には不慣れで、色々頼ることもあると思いますが、その時は助けてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
再び教室内は歓声に包まれる。
「はいお前ら静かにしろー。誰か片桐に校内の案内とか頼みたいんだが、やりたい人ー?」
クラスのほぼ全員が一斉に手を挙げた。
「まぁ、そうなるよな。じゃあ俺がランダムに選ぶことにするわ」
「先生、あの金髪の男の子にお願いしても良いでしょうか?」
「金髪の…って、織田のことか!?あいつはやめとけ、と言いたいが本人がいいと言うなら、織田、頼めるか?」
「え!?お、俺!?っしゃ!!」
「くれぐれも片桐に迷惑をかけるなよ。分かってんな!?」
「わってるよ」
「はぁ…それじゃあ、席は織田の隣で良いか。すまんが少しずつずれてやってくれ」
「織田君、よろしくお願いします」
「え、お、うへ、よ、よろしく…」
(そのストラップは…!…やっと会えましたね)




