3-62話邂逅その3
「…な、何だ、この記憶は…!?こいつは、長宗我部洋貴ではない!長宗我部洋貴は…ぼくの幼馴染は、もういない…!」
清虎は自分の額に刺さったUSBメモリ型の能力『メモリー・ドライブ』が目の前の長宗我部洋貴だったものから読み取った記憶を見た。スピードに絶対の自信を持つ『メモリー・ドライブ』は、相手に何かされるより速く動き、記憶を読み取ることが出来たが、読み取れたのはそいつと長宗我部洋貴の過去だけで、後は破壊される前に逃げ帰るしか出来なかったので抜き取るまでは出来なかった。つまり相手も『メモリー・ドライブ』に匹敵するスピードを持っている。
「…なんてスピードだ。不意打ち気味とは言え反応出来なかった。…それに、ついに知られてしまった。俺の能力も、正体も…。あんただけは、ここで絶対に仕留めなくては…!」
今まで清虎に長宗我部洋貴に見えていたものはいつの間にか白いマネキンのような人型に姿を変えていた。
「…記憶を読んだ通りだ。ついに正体を現したな…!」
「絶対仕留める…!じゃないと本物で居られなくなる!この距離なら仕留められる!」
人型は『メモリー・ドライブ』に負けずとも劣らないスピードで清虎に迫る。
「普段のぼくなら、未知なるものに対して好奇心が勝ってつい対応が遅れてしまう所だが、お前に対してそんな感情は一切湧いてこないよ。…入ったな、ぼくの領域に!」
「な、なんだ!?いつの間に大きく…!?」
人型はいつの間にか清虎のくるぶし辺りまで小さくなってしまっていた。自然と清虎を見上げる形になる。
「こ、これは…!!」
「かかったなアホが!ぼくの能力がスピードだけの貧弱な能力だと油断していたようだが、『メモリー・ドライブ』は相手から抜き取った能力に関する記憶をコピーし、我が物として使用できる。立花帝敬の『帝王領域』を使わせてもらったよ。大きさに比例してお前は弱体化している。これでぼくでも十分にお前に対抗可能だということさ!」
『メモリー・ドライブ』と同じくらいにまで小さくなった人型にロボット型に変形した『メモリー・ドライブ』が一瞬で距離を詰め、パンチを放った。その拳は的確に人型の顔面を捉える。
「ぐはっ…!?」
(…見えなかった…!まずい、それ程までに弱体化しているというのか!そして立花の様子が最近おかしかったのは、こいつに記憶を抜き取られたからだったのか…!)
「…くっ…!?がはっ!!」
人型が態勢を立て直すより速く『メモリー・ドライブ』の連撃が叩き込まれる。
「これだけ弱体化すれば『メモリー・ドライブ』を破壊するどころか得意の幻を見せて逃げることも出来ないだろう?これで終わりだ!!」
「う、うおあぁぁ!!」
清虎は人型の頭上から全体重をかけて踏み潰した。小さくなって弱体化された人型は抵抗するも成す術なく靴の下敷きになってしまった。
「…手応えが、無い。…あくまで能力によって生み出されたものだからこういうものなのか?」
「…それは違う。手応えがないのはあんたが俺を仕留められなかったからだ」
「!?」
『帝王領域』の領域の外、いつの間にかそこにさっき清虎が踏み潰したはずの人型が立っていた。そのサイズは領域外に出たことで元のサイズに戻っている。
「な、何!?あれだけ弱体化していたのに、何故!?」
「確かに弱体化したせいで幻覚を見せて領域内から脱出するのに時間がかかってしまったが、なんとか間に合ったぞ。あんたのその能力、そして『帝王領域』…少し甘く見ていた。だが次は必ず仕留める…!」
「ま、待て!」
人型はそれだけ言うと、清虎の前から姿を消した。
「…せっかく、ここまで溶け込んで長宗我部洋貴として自然に過ごせるようになったのに…!藤堂清虎…絶対に許せん!…だがその前に次の相手を見つけなくては」
翌日、長宗我部洋貴が帰らないのを心配した両親は警察に捜索届を提出。しかし、この捜査は随分前に打ち切られていると警察から説明を受けた。
今回で今年最後の投稿となる予定です。もし年内に少しでも書ければまた投稿するかもしれませんが…。
今年も1年お付き合いいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。




