3−61話邂逅その2
「な、何なんだお前!?」
3年前。長宗我部洋貴は自室で能力に目覚める。突然目の前に真っ白なマネキンのような人型が現れたので驚きのあまり尻餅をついてしまった。真っ白な人型はこちらを向き、尻餅をついた洋貴に目線の高さを合わせる。
「…君ガ僕ノマスター、ハジメマシテ」
「何言ってんだよ!?何なんだよお前!」
「僕ハ、君カラ産マレタ。君ノチカラガ形ニナッタンダ」
「俺の、力…?」
急に出てきてそんなことを言われても洋貴にはさっぱり分からなかった。人型はそんな洋貴の心中を察したのか、「僕ノ能力ヲミセテアゲル」と言うと、その姿が一瞬にして洋貴の姿に変わった。まるで鏡に写したようにそっくり、と言うか本物にしか見えなかった。
「変身した…!?」
「違うよ。君にそう見えているだけさ。これはただの虚構」
「虚構…?なんか喋りも流暢になってるな?」
「これも君にそう聞こえているだけだよ。実際には何も変わってない。錯覚って言えば分かり易いかい?」
「…なんか分からんけど地味だな。あと喋りはそのほうが聞き取りやすいのでそのままで」
「オッケー」
人型は洋貴や人物の姿以外にも柱や部屋にあったラックなど、次々と姿を変える。あらゆる物や風景に対して人型の能力は発揮されるようだ。なんとなく洋貴にもこの能力の仕組みが分かってきた。トリックアートみたいなものなんだろう。ただそういう風に見せているだけなので、実際に触るとラックに見えていても人型だと分かるし、一度そう認識するともうラックには見えなかった。
そしてこの人型は自分から離れても大丈夫なようなので洋貴はこの能力を使って人型を自分に化けさせて学校に行かせたり、色々利用した。触れられなければバレることはないのだ。学校で他人と一緒に教室に詰め込まれかったるい授業を受けるよりも自分で問題集を解く方が洋貴には合っていると思ったし、実際結果もそれなりに出た。人型は時々何か言いたげな様子だったけれど、それでも大人しく従ってくれた。だがそんなある日、
「じゃあ今日も頼むわ」
洋貴は家の近くの空き地で人型を喚び出し、いつものように命令する。
「…嫌だね」
「え?」
「もう君の奴隷のように過ごすのはうんざりだ。俺の方が君よりコミュニケーションも上手くやれるのに、君より優れているのに、今のままではどこまで行っても俺は君の偽物なんだからな。俺は本物になりたい。…いや、俺の方が優れているのだから俺が本物であるべきなんだ」
「本物になるって…!?何言ってんだよ!?」
「偽物が本物になる方法は一つ。…本物を消し去る!」
洋貴の背中から人型の腕が貫いていた。しかし洋貴の目の前には洋貴の姿の人型が立っている。
「…な、なんで…!?」
「まだ分かってないのか、君の目の前に見えているのはただの虚構、錯覚だよ。まぁ今更分かったところでどうにもならないけどな。これからは俺が本物だ。学校から帰ったらちゃんと埋葬してやるよ」
洋貴は死体をその場に残して去っていく。もちろん誰に死体が見つかったりしては困るので、周りの風景に同化させておいた。




