3-53話愛と覚悟の無限回転その3
「ぐあっ…!!」
走行中の車の前に投げ込まれたカプセルを庇って飛び出した上杉はカプセルを無事キャッチする事には成功したが、その代償として車に撥ねられた。車の上をなぞるように転がって地面に叩きつけられる。
「まともに喰らったな。ふん、チョロいもんさ」
「…いてーな、この野郎!」
「え、は…!?」
車にまともに激突されて死にはしないにしても瀕死のダメージを負ったはずの上杉が起き上がった。所々擦りむいていたり、アスファルトに叩きつけられた時に切ったのか頭から血が垂れていたりするが、骨折などの重傷は全く負っていないように見える。
「へ…?ふ、ふざけんな!あんだけまともに喰らって、いてーで済むわけねーだろ!!」
「おいおい、本気でこの俺様がまともに喰らったと思ってる?…気が付かなかったのか?自身を回転させて、衝撃を受け流していた事に」
「え…?なにそれ…」
今思えば少し変だ。車に激突されて普通ならフロントガラスに叩きつけられるとか、車の進行方向に弾き飛ばされるはずだ。車体の上を転がってはいかない。だが、いくら能力があるからと言ってそんな芸当可能なのだろうか?
「お、おい兄ちゃん大丈夫か!?」
上杉を撥ねた車の運転手が降りてきて上杉の下に駆け寄る。
「ち、血が出てるじゃないか!きゅ、救急車…!」
「チッ、面倒くせぇなぁ…!こんくらいなんとも無いからよぉ、早くどっか行けよ」
「いや、しかし…」
「だから、なんとも無いって!今それどころじゃねぇからよぉ!あんただって警察の世話になりたくないだろ」
「いや、でもさ」
「さっきからしかしとかでもさとかうるせーんだよ!何も無かったことにしてやるっつってんのに、さっさと行けよ!」
「わ…わかったよ。でも悪かったと思ってるんだ。嘘じゃない、ほんとだ!」
運転手は振り返りながら上杉に「悪かった」だの何だの言いながら車に乗ってその場を去っていった。
「行ったか…さて、走行中の車の前にカプセル投げられた時は流石にちょっち焦ったが…一つ無事に取り返したぜ。しかしお前のそのやり方…とことん美しくねぇなぁ。人質取ったり、人の命を使い捨ての道具みたいによぉ…だが今はこれに閉じ込められてるやつを開放するのが先だぜ」
上杉は取り返したカプセルを開けにかかる。それを見た小早川は明らかに狼狽を見せる。
「よ、よせ!そいつを開けるんじゃない!」
「うるせーバカが」
小早川の狼狽を見て当たりととらえた上杉はカプセルを一気に開けた。すると中から飛び出してきたのは、上杉の取り巻きの内の一人ではなく、
「走行中のトラック…!!」
開いたカプセルから時速60キロで走行している大型トラックがこちらに向かって迫って来る。
「フフフ…バカは君の方だな。そんなに簡単に折角の人質を手放す訳無いだろ!罠だよマヌケ!罠だと疑いもせず庇いやがって、単純過ぎるにも程があるだろ!今度こそお終いだ!!」
「…いや、多分罠だってわかってはいたんだけどな…」
とっくに上杉を轢き潰しているはずのトラックはその場に留まり、動かない。
「へ?なんで!?」
「お前みたいな性根まで腐りきったクズがいかにもやりそうな事だ。…でも万が一、万が一この中身が花音、アサミ、凛子の内の誰かだったら…そう思ったら身体が勝手に動いちまうもんなんだよ。三人なくして俺は俺で居られねぇ。三人が傍に居てくれてこその俺だからなぁ」
「ぅわ、待っ…へばっ!!!!」
トラックのタイヤが突然高速で逆回転。スリップ音を轟かせながらバックし、小早川を撥ね飛ばした。
上杉は小早川がトラックに激突された際に落とした三人の取り巻きのカプセルとついでに恵一のカプセルを回収。早速三人のカプセルを開けて解放した。
「…え、ここどこ?凌ちゃん…?」
「テリーズは?って、凌ちゃん、血が出てるよ!大丈夫!?」
「あたし応急セット持ってるよ!手当てしたげる!」
「いいって、ただのかすり傷だよ。すぐ治る。…それよりよぉ、少しで良いからギュッとさせてくれねーか?」
「え〜、どうしたのいきなり?それにそんなに頼まなくたってあたし達が断るはずないじゃん!」
上杉は取り巻き三人と熱い抱擁を交わした。小早川との戦闘で人質に取られ、もしかしたらこの中の誰かを失っていたかもしれないという恐怖を掻き消すように。同時に、これから先何があってもこの三人だけは命に変えても守ってみせると強く決意した。
「さて、帰るか」
「「「は〜い♡」」」
トラックに撥ねられた小早川は多分死んではいないだろう。そのうち気がついたトラックの運転手が救急車でも呼んで病院に搬送されるはずだ。後ついでに恵一は上杉が三人をそれぞれの家に送り届けた後解放された。




