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3−50話フォーリン・ダウンその5

「そんな糸なんかで受け止めようったって無駄よ松平君。『フォーリン・ダウン』によって吉良明良が階段を転げ落ちる運命は決定されているんだからね!…勝てる!これなら勝てる!」

「重力ではなく、相手を落とす能力…なんだってこんな事をするんだ?」

「君に教えてやる義理なんか無いんだけど…でもいいわ。教えてやるわよ。まぁ色々理由はあるけど、何よりあたしは吉良明良が気に食わない、そしてそいつを超えてもう一度あの頃の自分を取り戻す為よ!邪魔するなら君達だって躊躇いなく攻撃するわ!」

「そんな理由でこんな事するのかよ。なら黙ってられないじゃないか!『ストリングス』!お前を操ってこの能力を解除させてもらうぞ!」

 雄輔の両手の指先から細い糸が伸び、『フォーリン・ダウン』を絡め取る。『フォーリン・ダウン』は絡まった糸を引き千切ろうとするが、『ストリングス』の糸はその見た目に反してワイヤーのような強度を持っている。『フォーリン・ダウン』のパワーでは千切る事は出来ないようだ。

「やはりパワーはそんなに無いタイプと見た。このまま操ってやる!」

「…さっき言ったわよね?君達でも攻撃するって。有象無象の分際で邪魔すんじゃないわよ!!」

「えっ!?」

 『フォーリン・ダウン』は翼を一度強く羽ばたかせると、その際に舞った羽根が糸に触れ、触れられた糸は力を失ったように解けて地面に落ちていく。そしてその糸から雄輔自身にも『フォーリン・ダウン』の能力は伝染していく。

「能力の強さっていうのは精神力の強さなのよ。十年間積りに積もったあたしの吉良を超えたいって想いはこんな糸なんかに縛ることは出来ない!奈落の底まで落ちるがいいわ!」

「俺はなんて役に立たない人間なんだ…。パワーで上回ってる相手すら捕らえられないなんて、俺はもうダメだ…」

「鬱人間一丁あがり〜。このまま放っておいたら松平君はどんどん気分が落ち込んでいって最後には耐えられなくて自殺するかもね。ちなみに励ましたところで無駄よ。伊達さん、これを見た上であなたもあたしの邪魔をするつもり?こいつのようになりたいの?」

「…」

 美亜の問いに紅愛は気分が落ち込んで鬱状態になってしまった雄輔を見て、もう一度美亜を見る。

「どぞ」

 紅愛のまさかの返しに、美亜は一瞬呆気にとられてしまった。

「は…?いいの?こういう時って、あたしの前に立ちはだかる流れでは?いや、いいならそれで構わないんだけど…」

「どぞどぞ勝手に。…ただし、出来るものならね」

「は?」

 次の瞬間、階段の下で爆発音が響き、美亜と紅愛の頭上に影が差した。見上げると『マッド・クイーン』に抱えられて明良が紅愛と美亜の頭上に飛んでいた。『マッド・クイーン』は四枚の翅を震わせるように羽ばたかせて空中で静止している。

「あ、あたしの頭上を…!?まさか、今の爆発は…!」

「『マッド・クイーン』のミサイルの爆発を推進力を得るために使ったんだよ。そういえば自分の能力に死角なしとか言ってたな。あったぞ、死角。これでチェックメイトだ」

「松平君と同じように鬱状態になっているはずじゃあ…な、何故!?」

「そんな精神攻撃で心揺らいでる場合ではないからな。姉には弟の平穏を守る義務がある。『マッド・クイーン』ミサイル発射!!」

「ぎゃあああっ!!!!」

 美亜の頭上から『マッド・クイーン』のミサイルが降り注ぐ。その爆撃で美亜は吹き飛ばされ、階段の下まで落下していく。

「ボロ雑巾一丁あがり〜」

「俺なんてもう…あ、あれ?俺は一体?」

「さて、帰るか」

「え?お、おう」

 明良達がその場を離れてしばらくした頃、帰宅途中の隼人とアリスはボロ雑巾のようになって意識を失っている美亜を発見した。ただ事ではないと思い、急いで駆け寄る。

「ちょっと、大丈夫っすか!?救急車!」

「お兄様、既に呼んでありますわ!」

 その後美亜は到着した救急車で近くの病院に搬送され、一命は取り留めたが、しばらく退院はできないだろう。












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