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3−47話フォーリン・ダウンその2

 吉川美亜きっかわみあ、西女子高等学校の3年で生徒会長。物心ついた頃から同年代の誰よりも優れていると自負していた。実際、読み書きだって当時通っていた保育園の園児たちの誰よりも先に出来るようになったし、縄跳びの二重跳びだって鉄棒の逆上がりだって誰よりも早く完璧に出来た。正直自分は天才だと思った。だって周りの人達も美亜の事を褒める時、「天才だ」と皆口を揃えていうのだから。

 しかし、美亜の天下も長くは続かなかった。小学2年生に上がる頃、急に頭角を現し始めた人物が居た。それが吉良明良である。彼女はこれまでただ一日をぼーっと生きていて外見以外に大した取り柄は無かったのに、九九を美亜よりも先に覚えた、と言うよりも習う前から既にマスターしていた。美亜は明良に負けないように通信教材で勉強したけれど、その差は徐々に、しかし確実に広がっていった。一度だけ美亜は明良に何故そんなにも出来るのか、何か特別な事をしているのか聞いたことがあるが、返ってきた答えは「別に」だった。彼女の目はこちらを向いているけれど、美亜の事など映していないような、何か別のものを見ているような、そんな目だった。この時、本物の天才とは彼女の事を言うのだと思った。と同時に、明良には負けたくないと思った。

 美亜は明良と幾度となく競ったが、何一つとして明良には及ばなかった。そして中学に上がったある日、生徒会長選挙に美亜と明良はお互いに立候補した。結果は美亜の惨敗だった。これまで美亜は明良に勝つことだけに夢中になって気付いていなかったが、いつの間にか美亜の事を「天才だ」と言っていた者たちは美亜から離れ、夜の自動販売機の光に集まる虫のように、美亜より強い光、明良の方へと集まっていた。美亜は気付かない内に頂点の座だけでなく、人望すらも明良に奪われていたのだ。そしてそんな明良に勝つことに夢中になっていた美亜もまた、明良と言う光に集まる虫の一匹に過ぎなかったのだ。勝てるはずが無い。美亜はこれ以来、明良と競うのをやめた。受験する高校は明良とは違う西女子高等学校を選んだ。

 高校に進学すると、明良が居ないお陰で、美亜は自分が優秀である事を再認識する。そうするとかつて自分が頂点だった頃を思い出す。と言うよりあの頃の優越感を忘れられるはずが無い。美亜はかつての自分を取り戻すべく再び上を目指し、他の候補者に圧倒的な差をつけて生徒会長の座を手に入れた。しかし、どれだけ他人と差をつけて勝利しようが、必ず心のどこかに虚しさが残った。明良が居ない土俵でどれだけ勝ちを重ねようが意味がないのだと気付いた。そんな時、長宗我部洋貴と出会う。彼とは現在友達と言う間柄だが、いつ何がきっかけで仲良くなったのか覚えていない。気付いたら友達だった。でも友達なんてそんなものなのかもしれない。

 そして今、美亜はかつてのように情熱を燃やしていた。再び明良と競う機会が訪れたのだ。他の有象無象の事などどうでも良い。美亜はこの機会をくれた洋貴に感謝するのだった。 

ここまで台詞が無いのは初めてかもしれません。だから何だって話ですが。

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