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1話ペーパー・ムーンその1

 S県I市、バスや電車は一時間に一本しか来ないようなよくある田舎街。けれどそんな街でも「オカルトの街」としては一部のマニアから有名だ。UFOの目撃情報や神隠しの噂など、不思議なことがよく起こる街として知られている。と言っても、この街に住む少年今川慧次はそういった事を経験したことは一度もないのだが。

 4月某日、この日はI市にある私立東高等学校の入学式。慧次は今日からこの学校の生徒となる。高校生になったら新しく出来た気の合う友達とバカやったり、可愛い女の子と付き合えたりするんだろうかとか、昨夜は妄想が膨らんで夜も眠れなかった。欠伸を噛み殺しながらも滞りなく入学式を終えて、慧次は現在自分のクラスの教室でクラスメイト達の自己紹介を聞きながらうとうとしていた。今朝は気合を入れて自慢の茶髪刈り上げパーマをしっかりセットしてきた。あまりにキマっていて自分でもうっとりしてしまったほどだが、眠気には勝てない。

(…眠い)

「はい次、出席番号五番、今川慧次」

「え?あ、はい!」

「ボーッとするな、自己紹介しなさい」

「K中から来ました、今川慧次です。趣味は、えっと…読書と音楽を聞くことです。よろしくお願いします」

「はい、ありがとう。では次…」

 因みにこの日は一人も友達は出来なかった。

「うおおお!!ヤバい、髪のセットに時間をかけ過ぎた!このままだと早くも二日目から遅刻だ!それは避けたい」

 翌日、慧次は学校への道を全力で走っていた。

「あんまりやりたくないけど、背に腹は代えられないか…周りに人は…よし、居ないな」

周りに人が居ないことを確認し、慧次は自身が持つ特殊な『能力』を発動する。体が一気に軽くなり、走る勢いのまま目の前の家の壁を蹴って屋根にフワリと着地する。

「よし!このまま屋根伝いに一直線で行けばギリギリ間に合うぞ!」

屋根から屋根へと全力で駆け抜ける。しかし、その一部始終を人に見られていた事に慧次は気付いていない。

「はぁ…はぁ…うっぷ、なんとかギリギリ間に合った…!」

 なんとかホームルームの時間に間に合い、その後の委員会決めや学校の施設案内などを終えた頃、教室の扉が開き、派手で奇抜な見た目の生徒が入って来た。

「さーせん、寝坊しました」

「織田、二日目から遅刻するやつがあるか!」

「以後気を付けまーす」

 この不良は織田勇太郎。だらしなく制服を着崩し、金髪赤メッシュの髪の毛の襟足をヘアゴムで結んでおり、とにかく奇抜な格好をしている。出席番号は六番。慧次の後の席だ。不良の前の席とはツイてない。そんなことを考えていると、織田が自分の席に向かう為にこちらに歩いて来た。そして慧次の前で立ち止まる。

「おい、お前放課後ちょっとツラ貸せや」

「えっ…何で?」

「いいから来いよ。もし逃げやがったら、分かってんな?」

「あっはい」


 







 読んでいただきありがとうございます。

初投稿で小説はド素人ですが、暖かい目で見守って頂けると幸いです。

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