66 存在意義2
初めに破裂、次に雨。辺りに降り注ぐ粘性の塊は、ただでさえ劇的な邂逅をより印象的なものとして演出した。
サンダル……麦わら帽子……あれは……いったい何の頭だろう。差し込んだ明かりの中で私はただ記録する。そうすることが当たり前のように――。
白日の下に晒された私を、彼らは人と呼んだ。
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「まさか先客がいたとはな。怪我はないか?」
彼女というべきか、それとも彼というべきか。少なくとも三人の中では、もっとも私の知る常識に近いその人となりは、唯一意思の疎通が図れることを差し引いても、どこか期待できる、その思わせる説得力があった。
「はい。この星喰いはあなた方が?」
「名は体を表すとは言うが……そんな名前だったのか。通りで何もないわけだ」
「なるほど。大戦以降、それもかなり後にお生まれになられた方々のようですね」
「見ればわかるだろう?」
「そうですね。しかしピクニック気分もいいですが……そちらの……動物の頭? の彼の姿こそが、この場においての正解であることをお忘れずに」
「話が早くて助かるな。では手短にいこう。あれは何だ?」
彼女、あるいは彼は辺りに散らばった数多の肉片の中から、迷わずその上に鎮座するそれを指し示す。
「卵型、不透明、色は単色から複数色まで様々、大きさは星喰いに比例、私も実物は初めて見ましたが、その核で間違いないでしょう」
「ではそれを欲しがる者はいるか?」
「研究対象としてなら、以前であればあるいは。現在では扱うことも、動かすことも困難でしょう」
「なるほど、一応の筋道は通っているわけか。だがこれでは名称が総称に変わるだけ。悪くはないが……これ以上は余計に事を荒立てるだけになりそうだな」
「その余計を求めているとしたら――どうでしょう」
私は彼らへと進み出る。そうして自ら進んで語りだす。
「あなた方の求めるもの……私の求めるもの……大切な人――」
光――それは私にとっての彼だった。そして彼は私にとってのすべてだった。だからあの日、私の前から彼がいなくなったあの日に、私は私でなくなった。
故に私は何も持たない。何も持たない私は何者でもない。偶然、迷い込んだ星喰いの腹の中も、何も見たくない私にとっては却って好都合だった。
そこは暗闇以外に何もない世界、それが私にとっての唯一の平穏……言いようのない後ろめたさに似た居心地の悪さも、いつしかなくなっていた。
もう抗う必要はない。もう抗わなくていい。そんな諦めに似た気休めの言葉を繰り返すたびに、じわじわと大切な何かが黒で塗りつぶされていく。
そうして見えなくなった何か、それでも忘れられない何か。虚飾にまみれながらも消えなかった光に気づいた時、私はようやく素直になれた。
安息なんかいらない。誰のためでもない。他がどうなったっていい。私は私のために、ただ――。
「もう一度会いたい……」
「名前は?」
「戦艦落とし……」
それは私が失くした大切なもの。彼はあの日、空から降ってきた。




