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64 通過点

 青空に浮かぶ白い雲、一面の緑に降り(そそ)ぐ暖かな陽光。向かい合う二つの点同士は、互いに荷物を片手に手を上げる。


「やあ。元気だったかい?」

「私はな。ただこっちはどうだか」

「おかげで毎日が(にぎ)やかだよ。まさかまた子守をする羽目(はめ)になるとは、思わなかったがな」


 苦笑交じりに並べられる、中心に穴のあいた円卓(えんたく)椅子(いす)が四脚。卓の中心に大きな(かさ)が差し込まれては、その下にささやかな影が落ちる。


「ケーキを焼いてきたんだ」


 そうして手に()げていたカゴを開けば途端(とたん)にその場を包み込む、甘い香り。そっと着席する三人の前で手早く切り分けられては、その美しい断面をすぐに皿の上へとのぞかせる。


「これはまた……食欲をそそるな」

「おお……」


 手元に運ばれては、その場で回転させて目で楽しむ二人――遅れて行き渡った飲み物とフォークを片手に、まだかまだかとその時を前のめりに待つ。


「それじゃあ、食べよっか」


 全員が席については自然と合わさる両手。待ちきれないと口に運ぶ二人とは対照的に、落ち着いた二人はまずはと揃って飲み物へと手を伸ばす。


「食い物に一喜一憂(いっきいちゆう)、まるで人だな」

「お前はもっと人らしくしろ」

「まあまあ、二人とも喜んでくれて何よりだよ」

「お互い苦労してそうなのは、相変わらずか……」


 他愛のない四人のやり取り。心地の良い風がその間を(おだ)やかに抜けていく。


「そっちは平和そうだな?」

「今のところね」

随分(ずいぶん)他所(よそ)()め事に、首を突っ込んでいるようだが?」

「何だ、一人だけ仲間はずれで(さみ)しいのか?」

戯言(ざれごと)を」

「まあまあ。まだ分からないけど、これからはそっちにも顔を出せるようになると思うよ」

「そうなのか? というより、けしかけといて丸投げはあんまりだろ」

生憎(あいにく)と私()()は忙しくてね」

(うそ)つけ」


 カップの中身を(あお)るように飲み干しては、勢いを殺しきれずに卓を打ち付ける軽い衝撃。図らずも、その(となり)で皿の上に置かれたフォークが(むな)しく鳴る。


「半分食べる?」

「いいのか?」

「うん」


 降って()いたような幸運に浮かぶ、嬉しそうな笑み。そして切り分けた(そば)からその期待を裏切るように、無情にも横からぶすりと突き立てられる一本のフォーク。


「これは私のだ」

「お前は今やってはならないことをした……」

「まあまあ、少ないけど焼き菓子ならあるよ」


 カゴを開けては底から取り出される小さな円形の板。全員に数枚ずつ行き渡っては、不穏(ふおん)な空気も一応の収まりをみせる。


「そういえば今度、新しく学校ができるんだよね」

「例の街か。相変わらず物好きな奴だ」

今更(いまさら)どうこう言う気はないけどな。あまりうちの連中を刺激してくれるなよ?」

「そこまでの意図はないと思うけど……そうだ。椅子に限りもないし、よかったら君たちのところからもどうだい?」

「やめとく。いま以上の厄介(やっかい)ごとを抱える気にもならないしな」

「何なら私が――いや、冗談だ」


 焼き菓子を(たい)らげ、示し合わせたかのように立ち上がる二人。(きびす)を返そうとしたところで、ふとその顔に(かす)かな笑みが浮かぶ。


「美味かった」

「ごちそうさま」

「うん」

「次はこちらの番だったな?」

「机と椅子は持っていくよ」

「ああ。目玉が飛び出るぐらいのを期待しておけ」

「本当に飛び出るようなのは持ってくるなよ」

比喩(ひゆ)だ、比喩」


 言うが早いか、陰を出ていく二人。直後に吹きつけた陽気な風に思わずと引き留められては、そういえばと並んだ背中に声が投げかけられる。


「ついに彼女がやったみたいだよ」

(なに)――?』

「つながったみたいだ」


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