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勇者パーティーはクビになりましたが、どうやらマスコットはやめられないようです!  作者: れんこんのきんぴら和風パスタ
夢見る少女は相容れない2
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57 道

 帝国の西に位置するエレーナ山脈(さんみゃく)。大陸を東西に分割する巨大な壁は、人と魔族との生存権を二分する、いわば境界線の役割も果たしていた。

 そしてそれが割れたとなれば、その程度によっては、人側が受ける影響は計り知れないものになる。出来る事ならば現状を確認したい、そう思うのは当然だった。

 ただ向かうにあたり、一つだけ問題があるとしたら――それは帝国を横断しなければならないという、道筋にあった。


「すみません、エカテリーナさん。馬車の操縦(そうじゅう)までやらせてしまって」


 馬車に乗り込むこと()()。手綱を握るエカテリーナを先頭に、開けた荷台でエヴァと顔を見合わせるクロナは、人知れず目を細める。


「いえ、実はこういうのがしたかったんです」

「そうですか? ならいいんですが……」

「それに殿下の名声に、一目で分かるクロナさんの知名度。私にはいい組み合わせだと思いますよ」

「おかげで円滑(えんかつ)なことこの上ない。なんだ、いいことを言うじゃないか、エカテリーナ」

「次はエヴァだからね」


 分かったわかったと身振りで応えるエヴァに、クロナは苦笑する。


「それにしても……」


 クロナは言いながら周囲を見回す。そこには人から緑に(あるじ)を変えた、自然に帰りつつある町の姿があった。


「これだけのものを作りながら、こうもあっさり手放すなんてね。帝国は本当に南部から手を引いたみたいだ」

「逆さ。帝国は南部を元から切り離すつもりでいた。連合国が要らないといえば、そこは自然と空白地帯になる。当然の結果だな」


 エヴァはあっけらかんと言う。それにクロナは安心したよと、息を吐く。


「どうやら連合国とはうまく行っているみたいだね」

「一部、とはな。連合国もエヴラール相手によくやっている」

「多分ヤナさんかな。でもだからこそ、アリアがまた連合国に行きたいって言い出すようなことにならなきゃいいけど……」

(とりで)の件はそう易々(やすやす)と消化できる課題ではないさ。世間がどうあれ、あいつの言うみんなには、すでに王国以外も(ふく)まれているからな」

「アリアが元気そうでよかったよ」

「六位じゃ気に入らないのか?」

「そりゃサラブレッドさんも怒るよね」

「あれは笑えたな」


 思い出しては、にやつくエヴァ。クロナもまた苦笑を笑みに変えては、荷台の後部で足を投げ出すネクロマンサーがふと、欠伸(あくび)でもするように背伸びする。


「そういえば……山脈の向こうには公国があるけど、そういうことではないよね?」

「魔族の国か。あり得ない話ではないが……何なら観光でもしていくか?」

「珍しい。やけにやる気だね?」

「そうじゃないと分かっていることには、誰だって強気でいられるものさ」

「そういうものかな?」

「公国が北の魔族に一線引くのは、彼らが平和を愛しているから。他ならぬお前が言っていた言葉だぞ?」

「それはそうだけど……」

「へぇ? クロナさんは公国に行ったことがあるんですか?」

「え? ああ、ええと……」


 (あん)にはいと答えては、エヴァに視線で助けを求めるクロナ。それを分かっていながら真顔で泳がせるエヴァは、クロナが限界だとネクロマンサーに目を移したところで、ようやくと助け船を出す。


「この世界には二人の王がいる。お前も聞いたことぐらいあるだろう?」

「西と北、二人の王は(たもと)を分かち、相反する。おとぎ話ですね」

「歴史の上では真実さ。首尾(しゅび)よく割れたからこそ、今の公国がある。いうならば、偶然の産物というやつだな」

「しかし北の王は、今でも西方のそのほとんどを影響下に収めていると聞きますが……公国が名ばかりでないというのであれば、その独立性を担保(たんぽ)しているのは力の拮抗(きっこう)では?」

「連邦らしい考え方だな。だが支配下にないというだけで、その存続自体は見逃すという行為によって成り立っている」

「ではやはり公国もまた、北の野蛮(やばん)な連中の――魔族の一員だということではないですか」

「性急に過ぎるとはこのことだな。それとも連邦ではそれが普通なのか? お前に言わせれば帝国も連邦も変わらないことになるが……まあ、()()人間か」

「それは――!」


 もはやクロナのことなど眼中にないエカテリーナ。当然、荷台で誰が移動しようともそれがエヴァでなければ、気にしない。ただそうしてクロナの横へと腰を下ろしたネクロマンサーは、不意にその名前をはっきりと口にする。


「クロナ」

「う……ん?」


 一足遅れで自分の耳を疑うクロナ。すぐにその腕をネクロマンサーが(つか)んでは、強引に注意を引く。


「ぃ……」

「い?」

「い」

「い……」


 何でもない――それは端的(たんてき)なネクロマンサーからして、らしくないものだった。そして見計らったかのようにエカテリーナから上がる戸惑(とまど)いの声。遠目に向こう側が見える山脈は、もはや線でもなければ壁でもなくなっていた。


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