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勇者パーティーはクビになりましたが、どうやらマスコットはやめられないようです!  作者: れんこんのきんぴら和風パスタ
夢見る少女は相容れない2
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54 積乱雲

「アリアーヌ様が()()クロナと結婚するんだってよ!」

「かーっ! まさか冒険者から王族の仲間入りたあ、夢があるねえ!」


 終戦以来の明るい知らせに、日も高い内から酒場に集う男たち。その発信源たる王都ともなれば、今やどこにいようとも聞こえてくる話題は同じだった。


「めでたいねえ!」

「うんうん!」


 通りを逸れたところで耳からは離れない喜びの声。それでもと迂回(うかい)を繰り返す少女の影は、やがて決意を改めるように、目深(まぶか)に被った頭巾を脱ぎ捨てる。


「私は……!」


 ♦


 王城の長々とした廊下に響く複数の足音。満を持してと呼び出しを受けたクロナは、同行するおまわりやサラブレッドを背に、ひとり牛頭の下で辟易(へきえき)としていた。


「ワンッ! 流石のクロナ殿も参っているご様子」


 おまわりに指摘されては、自分でも驚いたように足を止めるクロナ。すぐにまた歩き出しては、気を引き締めるように背筋が伸びる。


「これからという時に……ありがとうございます。お二人が一緒に来てくれて、本当に心強い限りです」

「ヒヒーン?」

「いえいえ、私としても間に合ってよかったです。よもやこのような一大事に不在とあっては、このおまわり、一生の不覚を取るところでした。しかし気になるのはやはり殿下の方ですが……」


 図らずも目的地に到着しては、自然と切り上げられる会話。ある部屋を前に行く手を(ふさ)ぐ騎士たちが左右に割れては、合わせるように(おごそ)かな扉が開かれていく。

 そうして見えてくる(きら)びやかな空間。先導されるがままにクロナたちも足を踏み入れては、指定された位置にてクロナを先頭に、他の二人も片膝をつく。


「これはこれは、まさかクロナさんだけではなく、夢の国からおまわりさんとサラブレッドさんにも足を運んでいただけるとは……」


 まずはとあいさつ代わりに両手を広げては歓迎を示す男。先を急ぐように(ひざまず)く三人の前へと進み出ては、その顔に分かりやすい愛想笑いを浮かべる。


「心配なさらずとも、アリアーヌ殿下もすぐにお見えになります。しかし困ったことに時間は有限、有効に使っていかなければすぐに底をついてしまう。難儀なものです。早速、別室にて今後の打ち合わせといきましょう」


 男はただ不快にさせなければいいと、結論までの駆け足をその張り付けた笑顔でごまかしては、強引に場の流れを引き寄せる。しかし――。


「その前に一つよろしいでしょうか」


 見計らったように男の出鼻をくじくクロナ。それでも笑顔でどうぞと答える男の前で、許しは得たぞとクロナの視線が一瞬の(すき)を突くように最上段へと駆け上る。


「申してみよ」


 ただそれにいち早く反応を示したのは、不測の事態などないとする王自身だった。そしてクロナもまた、余計な追及を避けるようにすぐさま頭を下げる。


此度(こたび)の件。なかったことにはできませんでしょうか」

「何を――!」

「よい」


 壁際に控える貴族たちを一瞥(いちべつ)しては、一言で収める王。流れかけた不穏(ふおん)な空気に、(いま)だに愛想笑いを浮かべる男は、すかさずと火中の栗を拾う。


「クロナさん。そう言われるからには、それ相応の理由がなければ……むしろそうでなければ貴方の立場が危うくなりかねませんよ?」

「少なくとも僕には――いえ、()には十分な理由であると、そう考えております」

「もはや止める理由もありませんね……」

「すみません……しかし私は、他ならぬ王族ではない彼女を知る一人として――」

「一人として?」


 望み通りの機会を得ながら、中途半端なところで語るのをやめるクロナ。ほどなくしてその場で頭をかいたのち、何を思ってか、おもむろに立ち上がる。


「く、クロナさん?」

「間違えました。()は彼女に笑っていてほしい。結婚はしません。それだけです」

「ワンッ! さすがはクロナ殿!」

「ヒヒーン?」


 何もかもを(わきま)えないクロナに、喜々として追従するマスコットたち。当然と跪くことをやめては誰もが唖然(あぜん)とする中で、(がん)として愛想笑いを浮かべる男だけは、その役目を全うしようとする。


「意志は……固そうですね?」

「はい」

「そうですか……。しかしこれは高度に政治的なこと。残念ながら、はいそうですかとは言えないのが実状です」

「それでも――」

「別に形だけでも構わないのです。他に愛する者がいるというのであれば……」

「六位では気に食わないというのか」


 きりがないと、とうとう(しび)れを切らす王の声。もはや現状に収拾をつけられるのはその人しかいないと、秩序(ちつじょ)を求める場の意識が最上段へと集中する。

 そして――当然と続くかに思われた王の言葉を予想外にも(さえぎ)ったのは、クロナの肩を(おもんぱか)るように叩いては歩み出てきた、サラブレッドだった。


「おい、×××すぞ」


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