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勇者パーティーはクビになりましたが、どうやらマスコットはやめられないようです!  作者: れんこんのきんぴら和風パスタ
夢見る少女は相容れない2
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51 風見鶏

「戦争は終結した――」


 言ってしまえば、それはあっけのない幕切れだった。ただ帝国の決定に最後まで付き従う王の姿は、危機的なまでに王国がいかに受動的であるのかも示していた。


「しかし落とされた砦は依然として帝国に占拠されたまま、補給線を圧迫するだけの(はず)がまさかこんなことになるとはな」


 やってくれたなと、エヴァは王城の一室から眼下に詰めかけた民衆を見下ろす。


「まあ(もと)を正せば、お前たちも良かれと思ってやったことなのかもしれないが……」


 エヴァがちらと振り返れば、すでに肩を落としている二人。立ったまま項垂(うなだ)れるクレマンとライナスは、まるで母親に(しか)られる子供のように元気がない。


「それが後々、相手の退路を断つことにつながるとは思わなかったのか?」

「それは……」


 意を決してとクレマンは一度はエヴァに目を向けるも、その結果やはり無理だとまた次の瞬間には(ふさ)ぎこんでしまう。


「何だ。言いたいことがあるのなら言ってみろ」

「姉さん、これは僕の――」

「私が()し進めたことです。エヴァ殿下」


 横からクレマンの声にかぶせるライナスは、そう早口に断言する。


「ですから、どうか責めるのであれば私を――」

「それは違います!」


 目を見開いては、食ってかかるクレマン。そうして責任の押し付け合いならぬ、責任の負い合いが始まる。


「ライナスさん。私が責任者なのですから――」

「いいえ、私が言い出さなければ殿下も実行に移されることは――」

「だから!」

「なんで――」


 二人の生真面目さゆえの平行線。それを始めこそ面白そうに眺めていたエヴァも、すぐに飽きては、窓辺でひとり風に当たりだす。


「まぁ、冗談だがな」


 エヴァは自然と窓の外を見やる。上には澄んだ青が広がり、下では武器を忘れた兵士たちが景気よさそうに走り回っていた。


「まったく、ライナスさんも分からない人ですね! 私がこの件の責任者で! あなたは私の部下なんだから!」

「そういうことを言いますか殿下! なら私も言わせてもらいますけどね! この件は何があってもいいように、書類上は私の独断になっているんです! だから――」

「おい」


 いつまでも熱心な二人を前に、エヴァは(あき)れた様子で目を向ける。


「何ですか殿下!」

「聞いてよ、姉さん!」

「いや、冗談だと言っただろう。聞いてなかったのか?」

「え?」

「へ――?」


 (そろ)って口を開けては、流れるように顔を見合わせるクレマンとライナス。そこに巨大な猛禽(もうきん)が窓から飛び込んできては、二人の間抜け面もすぐに真顔へと戻る。


「さて、どうなったかな」


 部屋の中央に降り立っては、器用にも椅子を止まり木にする猛禽。その(くちばし)で自らの(あし)に結ばれた紐をほどいては、小さな筒状の書簡(しょかん)をエヴァへと差し出す。


「ご苦労」


 受け取っては、簡単に広げるエヴァ。鼻で笑っては、エヴァからクレマンへと書簡が渡る。


「お嬢さんによろしく……」

「一ついいか、クレマン。そのお嬢さんとやらは私のことか?」

「え? あ、いえ……あ」


 しまったというように時が止まるクレマン。すかさずエヴァ殿下と矢面(やおもて)に立つライナスの姿は、まるで(ひな)を守る親鳥のようでもあった。


「私の認識では殿下はすでにご成熟なされている筈ですが」

「この通り、二人でも揃えばそれなりなわけだが、連合国はどうかな」

「それは……」

「終戦だよ。元々亜人の解放に(たん)を発した越境だ。現場の独断で始まり、現場の独断で終わったというだけのこと。政治が荒れるのはこれからだな」

「また姉さんは他人事みたいに……」

「王国に気にしている余裕はないからな。それよりも私は少し出る。あとは頼んだぞ、仲良し兄弟」


 きょ――と、また顔を見合わせる二人をおいて、エヴァと猛禽はそれぞれの道へと戻るように部屋を後にした。


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