49 田園風景と立ち話
「どうするつもりだ?」
「どうするとは?」
目に映る新緑、一呼吸で青さと同化する木陰。空気を揺らすような重低音の問いに、会話を歓迎するように返す青年は、自ら求められるがままに聞き役へと回る。
「このあとのことだ……」
「このあと?」
「俺は王女様についていく」
「なら何も問題はありませんよ」
それに、と続ける青年は終ぞ出なかった答えを出すように穏やかに微笑む。
「私の見立てでは彼女がそう望むでもない限り、きっとまたどこかで、お会いすることになるでしょうから」
「目指す場所が違うとしてもか」
「確かにそうかもしれませんが――少なくともお二人はまだ同じ道の上にいます」
「前を行くのは彼女だ」
「ならば後ろを踏み固めるのはきっと彼でしょう」
「支えになるのか?」
「そう思ったからこそ決断されたのでは?」
「ただ言ってみただけだ。好き好んでする寄り道を決断とはいわない」
「律儀ですね?」
「物事を順序だてて考えるのは苦手なんだ」
不器用な手つきでその柔らかな毛並みをなでる重低音。真似するように手を上げた青年は、そこでふと思い出したように手を下ろす。
「そう難しく考えずとも、もっと自分に素直になればいいんですよ。ハチミツだって上手くいったじゃないですか」
「あれは……いや、そうだな。そうかもな」
「それに誰かがついていてくれるのは私たちとて同じこと。守ってあげてください。それがあなたの望みでもあるのなら」
重低音は言葉を返さなかった。ただ木陰から見る地平線は、二人の目にやけに賑やかに映り――。
「始まったみたいですね」
「ああ」
「それでは」
「ああ、後でな」
どちらからともなく互いに背を向けては、すぐに靄と消えていく両者の影。残された緑がにわかにざわめいては、わずかに遅れて風が吹きすさぶ。
迎えに来たわよ――切り取られた世界に届けられた少女の声は、解放の狼煙にして宣戦布告、そのものだった。




