表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーはクビになりましたが、どうやらマスコットはやめられないようです!  作者: れんこんのきんぴら和風パスタ
夢見る少女は相容れない2
31/68

31 それは人生で初めての積極的な開き直りだった

「ちょっと、あの旗……」


 人魚のヤナに促されては船の甲板からのぞく海の水平線。連邦まであと少しというところでアリアーヌたちが目にしたのは、ある一隻の船だった。


「黒地に赤……あれは……開いた瞳孔でしょうか。アリアーヌ様」


 アリスンは船を遠目に見ては若干の危機感を覚えたようにアリアーヌへと視線を送る。


「ええ? 全然見えないけど?」


 アリアーヌは横から言われて水平線をより一層睨みつける。しかしいくら目を凝らしたところで、ぼんやりと海上に浮かぶ黒っぽい影はアリアーヌからしてただの影の域を出ない。


「っていうか、何? 赤の瞳孔……? 何それ? 聞いたこともない旗だけど、もしかして海賊か何か?」

「ア、アリアーヌ……あんたそれでも一応王族でしょ? そのくらい、って……」


 ヤナは言いながら途中で目を細めては、それまでの考えを振り払うようにそっと頭を振る。


「あんたが普通の王族なわけないわよね……。あれは皇国の討伐隊の旗よ」

「何かすごくバカにされてる気がするんだけど……。ていうか皇国の討伐隊ってことは代表団の護衛か何かなの? もう私たち以外はとっくに連邦入りしてると思ってたけど」

「護衛ではないと思うよ」


 クロナは少し離れた場所から船を見据えたまま続ける。


「あれは純粋に魔族を狩るためだけに動く、皇国の中でも一際独立性の高い――」

「ちょっと! もう少し簡単に説明してよね」


 クロナを射抜くアリアーヌのジトっとした視線。クロナは一瞬の間を挟んではほとんど即答に近い形で意訳する。


「猟師」

「ふーん?」

「いやいやいや、それはそれで簡単すぎるでしょ。ていうか言われて確かにって思う部分もあるけど、ようは魔物専門のが王国にはいるでしょ?」

「冒険者? でもそれって、あっ! そっか! それが皇国ってことは、もしかしてその専門が魔族ってことっ?」

「そそ。つまるところがお金をもらって魔族を狩るわけね」

「へー! あ、でもさでもさ! 皇国ってそういうのが他にもいっぱいいるんでしょ?」

「私も別に皇国についてそこまで詳しいわけじゃないし、その国の内情までは分からないわよ? けどあれだけは特別なのよ。それこそ皇国というか、私たち連合国もそうだし、もちろんアナタたち王国にとっても他の国にとってもね」

「そうなの?」

「ええ。難しい理屈は抜きにして説明すると、あれは国には属しているのだけれど、政治的には切り離された独立部隊なのよ。というより集団といった方がいいのかしら? まぁ、表向きには政治に絡んでいないとされてるから、その動きと幅に変に自由度と速度が伴うのよ」

「ええっと、要するにどういうことなの?」

「まぁ、その、なんていうかさ。色々なところで厄介ごとを起こして回ってる連中ってことよね」

「ふーん。じゃあ今も魔族を追ってるのかな?」

「さぁ……? 私にもそれは分からないけど、クロナはそこのところどう思ってるわけ?」


 ヤナの声に甲板に集まった一同の注目が自然とクロナへと集まる。しかし当のクロナはと言うと――何やら気になることでもあるのか――海上のある一点を見据えたまままるで動こうとしない。


「何……?」

「連邦まではあとどれくらいかな」


 流れを無視しては不意に問いかけるクロナ。


「さぁ? 私は連邦に行ったことはないし……でもアンタの話じゃもうそろそろなんじゃないの?」


 ヤナは眉を吊り上げては妙なことを言うと、訝し気な表情でクロナの横顔を見据える。


「水泳は得意かな」

「はぁ?」


 誰に言ってんのと言いたげな表情のヤナ。誰の目から見ても不自然な問答を繰り返すクロナは、そうしてまたおもむろに船室へと目を向ける。


()()()()さんを呼んできてもらえるかな」

「え?」

「アリアを頼んだよ」


 クロナは流れるようにヤナへと目を向ける。その直後――。討伐隊との中間に位置する海面が急激に押し上げられ、数秒と経たずに隆起した海面からは、人の常識を遥かに凌駕する巨大な一本のタコ足が突き出していた。


「まったく……」


 気付かないわけだわ。ヤナはうねる軟体をぼんやりと眺めて心の中で開き直る。

 ――だってデカすぎるもの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ