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勇者パーティーはクビになりましたが、どうやらマスコットはやめられないようです!  作者: れんこんのきんぴら和風パスタ
夢見る少女は相容れない2
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28 集う歯車

「帝国は連邦と戦争でも始めるつもりなのか?」


 連邦を目指し並走する帝国の代表船団と共和国代表団の乗り込む小ぶりな一隻の船。その余りにもな対比に圧倒されながらも冗談交じりに苦言を呈すのは、共和国代表団の一人――共和国断罪人リナト・コロボフだ。


「こらこらっ、帝国とは仲良くするよう本国からも言われてるでしょ?」


 それを背後からあくまでも言葉の上では咎めながらも、どこか同調するように茶化す小柄な女性。共和国断罪人ワルワラ・ロフリンは船べりに手をついては後ろ向きでリナト・コロボフの隣へと並ぶ。


「でもよ。何だって帝国はこんな話し合い一つにこぞってこれだけの船を出してきたんだ?」

「そりゃ威圧とか、話し合いの場で有利に立てると思ったからじゃないの? 場所が場所だけに、帝国ならやりそうなことだけど」

「ふーん。まっ、そう言われればそうかもな。でもそのためだけにわざわざ川を下ってきたのか。ご苦労なこったな」


 ふんと鼻を鳴らしては、どこかでまだバカにしたような笑いを漏らすリナト・コロボフ。


「こらこら。だから帝国とは仲良くするんだってば」


 そんなリナト・コロボフを前に、言いながら――しかし堪えきれなくなったと最後には笑いだすワルワラ・ロフリン。二人して軽薄な笑みを浮かべる。


「楽しそうだな。私も混ぜてくれないか?」


 そこに何の前触れもなく投げかけられる楽し()な声。遅れて船内から姿を現した一人の男を前に、その場の熱は急激に零下へと近づいていく。


「も、申し訳ありません!」

「ありません!」


 間髪入れずに叫ばれる二つの悲痛な声。瞬く間に霧散した雰囲気は元より、二人の表情からは感情がごっそりと抜け落ちている。

 しかし男は何も返さない。ただその靴音を甲板に響かせては、時間の流れすら操るようにゆったりとした歩調で二人へと近づいていく。


「帝国相手に偉くなったものだな?」


 男の沈黙をいともしない涼し気な声。びくつく二人を前にピタリと足を止めては、不意に笑顔になる。


「後ろを向け」


 男の声に二人はすかさずその場で百八十度回転する。そしてすでに血の気の引いた顔から更に何かが引かれては、蒼白を通り越して見る見るうちに青くなっていく。


「何を恐れている? それとも緊張しているのか?」


 二人の肩から背に、見た目は気遣うようにして当てられる男の手。どこか悟ったようにして二人はお互いへと視線を流す。


「なら私がほぐしてやろう」


 男は何の感慨も浮かばない表情で、ただそれが当たり前であるかのように二人を眼下の海へと突き落とした。


 ♦


 帝国海軍――といえば聞こえはいいかもしれないが、帝国に海はないのでそれはただ形式上そうなっているというだけに過ぎない。

 その実態は帝国全域に流れる川の管理と物流を一手に任された国営企業のようなものなのだが……国民の生活に密接した事業ゆえに無駄に忙しいことこの上なかったりする。

 かといってそれが悪いことばかりかといえばそうでもない。常日頃から訓練という名の業務に追われていたがために、今回のような急な護送任務にも難なく対応できてしまうのだから……。


「何をやっているんだアレは」


 部下の声に海面を覗き見れば浮かんでいる男女二人組。部下の話を聞く限りでは、どうやらその上司によって共和国の小舟から強制的に"下船を促された"らしい。


「おい、誰か(ロープ)をもってこい。ありゃ死ぬぞ」

(ロープ)です。提督」


 すかさず目の前に現れるブツ。練度が高いだけあってその速度は異常に早い。しかし――。


「お前、助けたいか?」


 正直共和国とはその価値観の違いから個人的に仲良くしたい相手ではない。加えてあくまでも"下船を促した"のが仮にもその上司であるならば、相手の意向次第で後々何かしらの問題になる可能性もある。

 面倒極まりない……。嘘偽りのない心情を吐露するのであれば、提督はそのとき単純に関わり合いになりたくないと、そう思っていた。

 ただし部下はその限りではなかったようで……。


「私に行かせてください!」

「いえ! 私に!」

「是非にも私に!」

「いえ私が!」


 いつの間に聞きつけてきたのか。続々と集まる部下にそこから向けられる真っ直ぐな眼差し。やれやれと提督は心の中でため息をつきながらも、ふと最初に(ロープ)を持ってこさせたのは他ならぬ自分だったなと思い出す。

 そうか……。提督は苦笑を浮かべる。二人を最初に助けようと言い出したのは誰であろう提督自身だったのだ。


「まったく……仕方のないやつらだな」


 俺もお前らも。提督はそう思った。


「あるだけ(ロープ)を持ってこい。貴重な海での救助訓練と行こうじゃないか」


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