3.初陣
トカゲのようなフォルムに、コウモリのような翼。
口内からは鋭い牙がのぞき、同じく鋭い爪もギラギラと光沢をはなっている。
まごうことなきドラゴンがそこにいた。
トラックにひかれ、気づいたら知らない場所にいて、見知らぬ女性から訳のわからぬことを言われ、またしても知らない場所で、イノシシだのドラゴンだのに襲われ――
「ホント何なんだよ!」
絶叫しながら跳ぶ、その真横を何か(何なのかは知りたくない)がかすめていく。
「うぅ……」
腕の中から声が聞こえて、視線を落とす。
感触から人なのはわかっていたが、よく見ると若い女の子だった。
十代半ばくらいだろうか。
きれいに結われていただろう髪は乱れ、着ているドレスはボロボロで、あちこちに血が滲んでいた。
「こわい、こわいよ……もういや……たすけて……」
震えながら泣きじゃくっている。
……正直いって、誰でもいいからとっ捕まえて、質問責めにしたい気分だった。
でも、そんなことができる状況じゃないのは、わかりきった話だった。
イノシシを倒したときを思い出しながら考える。
同じようにすればいいんだ。
たぶん、いける。できる。
何の根拠もないが確信した。
ドラゴンを見据える。
「ウィンドカッター」
言った瞬間、また体中の何かが風になって飛んでいく。
直後、ドラゴンの片方の翼が胴体から切り離されて落ちた。
もう一度、今度はさっきより強く。
胴体に狙いを定め、唱える。
「切り裂け、風刃!」
さっきよりも多くの何かが、風の刃になって飛んでいく。
狙い通り、ドラゴンの胴体は真っ二つに割れ、崩れ落ちた。
次回「襲われている王女をたすける」