そして永遠のさようなら
「こっちの方こそありがとうだよ、君のおかげで初めて小説を書けたんだから」
サっくんが言った。
俺には意味がわからない。
まあこんな能力を創造できる存在なんだから俺に理解などできないんだろう。
サっくん、いやサックシャーさん、ありがとう。本当にありがとう。
俺は今、ほんっとーーに、幸せです。
「こちらこそありがとう。短い間だったけど楽しかったよ。」
短い間だったのかな?俺には長く感じたんだが。
「短い間だったんだよ。でもね、その間に色んなことを学べた。ボクがね。感謝すべきはボクなんだ」
どこまでも謙虚なサックシャーさん。俺は何にもしてないよ。
「最初は書き方も何もわからなかったんだ。君の動きが、君の気持ちがひとつひとつ新鮮で、勉強で、斬新だった。ボクは素晴らしい時間を過ごして、素晴らしい体験をした。小説を書くというね」
あいかわらずサっくんの言うことは意味がわからない。
まあ、そこが今では愛らしい。俺はサっくんが好きだ。損得抜きに好きだ。
「ボクはね、君に幸せになってもらいたかった。だから君を幸せにした。サラリーマンのグチを言った時や、競馬をはずした時はね、ボクも変なこだわったストーリーを考えていたんだ。でもそうじゃない。そうじゃないって気づいた。君には純粋に幸せになって欲しい。だからちょっと急展開だったけどこうしたんだ」
サっくんの言うことは何度聞いてもわからない。だけど愛情溢れていることだけはわかった。
「これで最後だから、もう二度と現れないよ。ありがとう、マイパートナー」
サっくんはそう言って消えていった。
本当に二度と帰ってはこなかった。
俺は今幸せだ。大好きな人と暮らして、その人との子供がいる。
サっくんが昔書いた「25」のメモ書きは今でも俺の宝物だ。