魂が引き寄せられた先は(1)
人の死後ってのは、一体どうなるんだろうな?
よく聞くのはやっぱり幽霊ってやつだと思う。それ以外には、死んだ魂は天国へ、はたまた地獄へなんていうのもあるけど、輪廻転生ってのもあったりするな。
そして、転生。
どうやら、俺は転生したらしい。
それも、俺がいた世界とは別の世界に。
おっと、間違えた!
転生じゃなかったな。どういう冗談かわからないけど、俺は死んで召喚されたんだった。
「精霊」 として…。
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俺の最後の記憶。
雪の日、寝坊した俺は焦って支度をし、職場に間に合わないと車を走らせ、急遽高速に乗るっていう最終手段に踏み切ったわけだが、突然の霰で路面は一瞬で真っ白になった。
結果、タイヤがスリップして壁に激突。
死んだなって思ったね。
あんまり経験のない横からの重力を感じながら、死を受け入れたのは覚えている。
俺の見た最後の視界には、壁が横に流れながら近づいてくるっていう、最早逃れられないだろう状況。
それは、最後の審判に感じたんだ。
誰かに呼ばれた様な気がしたんだ。
なんか、夢の中みたいに。
真っ暗な中にいる様な、でも周りの気配を感じるような。
深い眠りから、目覚めて覚醒するまでの間にある、ほんの一瞬の現実と非現実の狭間の世界で、俺は呼ばれた気がした。
誰に?
わからない。
ただ、そこに行きたいと思ったような気がした。
どれだけの時間、この狭間にいたのかわからないけど、意識はその声の方に向いたのは確かだ。
それは、眠りから起こされるように。
閉じた瞼の上を、暖かい朝日の光に導かれるように。
薄膜を通して、暗闇に光を当てられて、深い眠りから覚醒を促されるように。
俺はその薄膜を取り払う。
そして目覚める。
あの事故は夢で、何事もない普段通りの生活に戻り、なんの変哲もない変わり映えしない日常に。
そうそれが、さも当たり前の様に、俺は目開けた。