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闘神と仙術スキルでアポカリプス世界を駆け抜けろ!  作者: クラント
狩人編

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771話 エピローグ12



「駄目です」



 唐突に始まろうとしていたヨシツネVS機械種タメトモの模擬戦。

 

 しかし、にっこり笑ってラズリーさんが即座に却下。



「どうしてそんな冷たいことを言うのかの、ラズリー嬢?」



 機械種タメトモは不服そうにラズリーさんへと物申すも……



「どうしても何も………、どこの何方が赤化して暴れたおかげで、ここの修繕がどれだけ大変だったと思います?」


「それは…………、のう………」



 笑顔でラズリーさんに詰められ、流石の機械種タメトモもタジタジ。

 可憐なメイドが巨漢の装甲武者を追い詰めるという珍しい構図。



「老公? 貴方が目覚めるまで、ここの信徒たちが汗水流して修繕したのですよ。彼等の苦労を水の泡にさせる気ですか?」

 

「う~む………、しかし、じゃなあ………」


「模擬戦と言っても、老公とヨシツネさんがぶつかれば、互いの被害は避けられません。第一、老公の弓でどうやって寸止めするのですか? 振るった刃は止められても、放った弓は止められませんよ」


「そこは………、儂の腕でじゃな………、致命傷にならぬように………」


「馬鹿を言わないでください! ヨシツネさん相手に、そんな余裕があるわけないでしょう!」



 食い下がる機械種タメトモにラズリーさんが一喝。

 華のような笑顔が一転、柳眉を逆立て怒りの形相。


 美人が怒ると怖いの見本。

 当事者ではないのに、ビクッと肩が震え、

 背筋をピンと伸ばして謝りたくなってくる。



 だが、それでも機械種タメトモは諦め切れずにグチグチと反論。

 しかし、ラズリーさんも一歩も譲らず。


 

 う~ん………

 ラズリーさんの懸念も分かる。

  

 超高位機種同士がぶつかれば、どれだけ手控えようと辺りに被害は避けらないし、互いに手傷を負うのは必須。

 明日の早朝、中央へと旅立とうと言うのに、ヨシツネが傷つくのは避けたい所。


 けれども、機械種タメトモとヨシツネとの勝負を見たいと言う気持ちもある。


 共に源氏を原典に持つ機種同士のぶつかり合い。

 これが原典による作用だとすれば、俺はそういったことを想定して連れて来たとも言えるのだ。


 さりとて、俺にラズリーさんを説得できる自信はない。

 あの剣幕で詰められたら、即座に両手を上げて降伏する以外に道はない。



 可能性があるとすれば、ラズリーさんのマスターである白露にお願いすることだが………


 白露は白露で、激高するラズリーさんに怯えるようにタタッと後方に退避済。


 俺が視線を向けると、血相を変え、涙目で首を真横に何度も振った。

 

 銀髪ツインテールがブルンブルンと横回転。

 『絶対に無理! 勘弁してください!』という強い意思表示が伝わってくるよう。


 どうやら白露もあの状態のラズリーさんを説得するのは難しい様子。


 となると、残る手段は………




「さて、どうするかねえ~………、んん?」



 ラズリーさんに詰められている機械種タメトモを眺めていると、

 その喧騒の場に向かおうとするヨシツネの姿が目に入った。


 

 足取りは颯爽と。

 一片の後ろ暗さはないとばかりに胸を張り、

 青く輝く目には決意の色を灯して………



「まさか………、アイツ………」



 機械種タメトモ同様、模擬戦を行いたいのはヨシツネも同じ。

 故に、機械種タメトモの助太刀をするべく馳せ参じるつもりの様子。

 

 だが、ヨシツネは決して口が達者に機種では無い。

 むしろ、交渉事には弱い方。


 しかし、ヨシツネは恐れない。


 それは自身にとって機械種タメトモとの模擬戦が有用だから。

 そして、交渉事が苦手だからと言って、いつまでも避けるわけにはいかないからだ。


 これは以前、教官に指摘されたことでもある。

 そこで自分の限界と思ってしまったらそこで終わり、だと。


 だからこそヨシツネが苦難に挑む。

 自分よりも遥かに長く稼働する大先輩を相手に交渉を持ち掛ける。


 ラズリーさんの元へと辿り着いたヨシツネは、

 一度立ち止まって深く深呼吸する仕草を行い、

 クワッと目を大きく見開き、覚悟を決めた姿でラズリーさんへと声をかけた。


 そして、その結果は………… 




「ラズリー殿。拙者の話を聞いてくだされ!」


「部外者は黙っていてください!」


「……………ハッ」



 ヨシツネは一言で切り捨てられ、

 肩を落としてスゴスゴと帰って来た。



「お前、何しに行ったんだよ?」


「ハッ! 申し訳ありません!」


「膝を突かんでいい」


「ハッ!」


「…………そもそも、何でタメトモと模擬戦をしよう、という話になったんだ?」


「ハッ! 申し上げます! タメトモ殿と会話を交わしている最中、ずっと彼方から『お前と戦いたい』という強い意思を感じておりまして……、拙者も満更ではございませんでしたので……、それでは『やろう!』という流れになりました」


「何だよ、それ………、そんな話、全然してなかったじゃん………」


「態度には出さずとも、互いに相手の能力を探り合っておりました。先方は見た目通りの後衛砲撃型でしょうが、孤軍でも戦える装備を幾つか保有しているようですね」


「ああ、それは実際に戦ったタキヤシャから聞いているけど……」


「それだけではありますまい。奥の手の一つや二つは隠し持っているとみるべきでしょう」


 

 自信を持って断言するヨシツネ。

 武人同士が目と目で語り合った結果と言うべきか………



「つまり、お互いに『戦いたい』という希望が一致したわけか」


「ハッ! 主様に確認せず、話を進めてしまい、誠に申し訳……」


「もういいから………」



 大袈裟に謝罪しようとするヨシツネだが、別に俺に謝ることでもない。

 

 また、ラズリーさんとの交渉に失敗したことも、不甲斐ない結果には間違いないが、教官からの指摘事項にチャレンジしようとした心意気は評価しよう。

 

 しかし、教官の話は、俺のチームの陣容の厚さを知らない上でのこと。

 俺からすれば、戦闘リーダーであり、交渉事に向いているとは言えないヨシツネが無理をする必要も無いと思う。

 

 できる者に任せれば良いのだ。

 例えば交渉事ならドンと来いの白兎とか………



「あれ? そう言えば、白兎、どこいった?」


「見当たりませんね。どこかに行かれたのでしょうか?」



 気が付けば俺の傍に居たはずの白兎がいなくなっていた。

 俺とヨシツネで辺りをキョロキョロ見渡しても見つからず。


 すると、タキヤシャが近づいて来て俺にそっと耳打ち。



「貴方さま、白兎さんは援軍を連れてくると言って、外に出て行かれました」


「え? 援軍?」


 

 一瞬、タキヤシャの言っている意味が分からず、

 呆けた顔を晒してしまうが………



 その時、ちょうど返って来たらしい白兎からの声?が届く。



 フルフルッ!

『連れて来たよ!』


「え? 白兎………、んん? 毘燭?」


「ハハハ……、何やら拙僧の力が必要だと聞きまして……」



 白兎に伴われ、こちらへと歩いてくるのは、俺のチームの参謀でもある毘燭。


 ストロングタイプの僧侶系、機械種ビショップと風水師系、機械種レイラインルーラーのダブル。

 質素ながら格調高いデザインでまとめられた司教服に東方テイストが混じった服装。

 手にした杖は『天沼矛』を杖状に変形できるようにした『天沼矛・改』。

 

 ゆっくりとした足取りで俺の元へと辿り着き、

 恭しい態度で俺へと一礼。

 そして、落ち着いた口調でやってきた理由を説明。


 

「ヨシツネ殿と白の教会の門番との模擬戦でしたな。それならば拙僧の『祝福』と結界が役に立つでしょう」


「おお! それがあったな!」


「また、こちらの『天沼矛・改』を使えば、戦いの後の土壌の整備も容易。ラズリー殿のお手を煩わせることはありませんな」


「それは助かる!」



 毘燭の『固有技』である『祝福』は、1回だけ被ダメージを無効化する加護を他者に与えるモノ。

 戦闘前に施してもらえば、どのような攻撃も1回は無条件で防ぐことができる。

 

 ただし、小傷であれ致命傷であれ、1回は1回としてカウント。

 場合によっては無駄に消費してしまう可能性もゼロではない。

 しかし、『祝福』は発動条件のダメージ量をある程度コントロールできるので、事前に詳細を詰めることのできる模擬戦では特に有効。


 

「白兎、ナイスな判断だ!」


 フルフル

『模擬戦の話が出た段階で、廻斗に連絡したの。すぐに毘燭を派遣して欲しいって』


「ああ、なるほど。道理で速いと思った」



 白兎が呼びに行ったのではなく、すでにこちらに向かっていた毘燭と途中で合流したのだ。

 白兎と廻斗の直接通信を上手く利用した形であろう。

 



「毘燭殿、ご助力感謝いたします!」



 ヨシツネも声を弾ませ、毘燭へと礼を述べる。

 

 昔はあまり肌が合わない感じの両者であったが、

 最近は共に胡狛にやり込められることも多く、

 『同病相憐れむ』ではないが、結果的に仲が深まったという関係。



「毘燭殿がいれば百人力ですな!」


「ヨシツネ殿………、拙僧の『祝福』も絶対ではございませんぞ。まかり間違って機体に傷でも入った日には、胡狛殿からキツイお叱りを受けるのをお覚悟なされよ」


「………肝に銘じましょう」

 


 毘燭からの言葉に、蒼い目の光を不規則に瞬かせ、

 眉を顰めて苦い口調で返事をするヨシツネ。


 おそらくヨシツネの脳裏に過ったのは、先ほどのラズリーさんと同様、

 ニッコリ笑顔で論理的に逃げ道を塞ぎながら詰めてくる胡狛であろう。


 あの琥珀が『強い奴と戦いてえ!』なんて男のロマンを理解してくれるはずも無い。

 手傷を負ったヨシツネを、一片の容赦なく追い詰めてくるに違いない。



 どれだけ胡狛が怖いんだよ……

 まあ、俺も怒った時の胡狛は怖いと思うけど……




 こうして、白兎が連れて来た毘燭を伴い、ラズリーさんを説得。

 メインで交渉したのはもちろん白兎。


 白兎が耳をフリフリ、毘燭の能力を説明、

 辺り一帯を結界で包み込み、極力周りに被害を出さないことを約束。

 またそれぞれに『祝福』を付与することにより、万が一の事故を防止。

 

 これ等の説得材料を持ってラズリーさんからの譲歩を引き出すことに成功。



「はあ………、分かりました。互いに攻撃を一発ずつ交わすだけ、ということであれば認めましょう」



 渋々ながら、条件付けの上で、この場での模擬戦の了解を得ることができた。


 しかし、この内容に機械種タメトモは納得がいかない様子を見せ、

 ラズリーさんに異議を申し立てるも………



「ラズリー嬢! ちょっと待った! それではつまらんぞい」


「………………」


「あ、いや、すまんかった……、それで構わん」



 ラズリーさんがもの凄い目でタメトモを一瞥。

 すると、タメトモは態度を一変。

 巨大な機体をブルリと震わせ、すぐさま意見を翻した。








 そして、始まる機械種タメトモとヨシツネの模擬戦。


 互いに離れること50m以上。

 近接戦型と後衛砲撃型の勝負では順当とも言える距離。


 

 俺達が見守る中、白の教会の中庭で向かい合う両者。


 ヨシツネは僅かに腰を落とし、手は愛刀『髪切』の柄頭に置いて、


 機械種タメトモは、背中の大弓を使う様子を見せず、ただ腕組み状態で待ち受ける構え。




「両者、良いですか? 互いに攻撃は一発だけ。攻撃を喰らって毘燭さんの『祝福』が剥がれたら負けです。また、戦場は毘燭さんが張られた結果の中だけに限定します。その外に出た場外負けとなりますから注意してください」



 両者に間でラズリーさんが審判役。

 よく通る声でルールを説明。


 ちなみに白露は万が一のことがあってはいけないので建物の中。

 今から砲撃や空間斬が飛び交うかもしれないのだから当たり前。 



「いくら『祝福』があると言っても、相手に大きな損傷を負わせないよう配慮をお願いします。特に、老公? 分かってますか?」


「もちろんじゃ。何度もしつこいのう………」


「その返事、しかと覚えておきますからね」



 どうにも機械種タメトモには棘があるような気がしないでもないラズリーさんの対応。

 ラズリーさんも長く稼働していると思うが、やはり機械種タメトモの方が年次が上なのであろうか……

 


「では、始め!」



 ラズリーさんが声高らかに宣言。

 そして、すぐにサッとその場から離脱。


 戦いの火蓋が切られたのなら、後は戦いに飢える強者同士が鉄と火花を以って打ち合うだけ………



「カカカカカカッ! 行くぞ! ヨシツネとやら! 我が奥義を受けてみろ!」



 中庭に響く大きな声を発した機械種タメトモ。

 メインウェポンであろう弓を抜かず、ただ、その巨大な左の手の平を前に付き出し、叫んだ。




「起動『鎮西八郎砲』!」



 シュイイイイン……



 左の手の平から戦車の主砲並みの砲口がニュッと突き出た。

 さらに左腕の前腕部大きく変形。

 あちこちにロケット状の噴射口がせり出し、真っ白の蒸気を噴き出す。



 プシューーーーーー


 

 さらに全身の装甲の隙間から蒼白い光が漏れ始める。

 全身から左腕へと凄まじいエネルギーが流れ込む様子が見て取れる。


 まるでアニメに出てくるロボットの必殺技発動のシーン。

 いかにも大破壊力砲撃を放ちそうな威迫に満ちた構え。


 どう見てもラズリーさんが忠告したような相手の安全に配慮した攻撃には見えない。




「このクソジジイィィィィィ!!!!!」




 俺の横でラズリーさんが激怒。

 普段のお淑やかな様子も吹き飛ぶような勢いで、罵り声を上げた。




 だが、それで模擬戦が止まるはずもない。

 

 機械種タメトモの行動は大人げないと言わざるを得ないが、威力の大小によって『祝福』の効果は変わるわけでもない。


 当のヨシツネが慌てているようなら、俺が止めに入ることも考えたが、今にも放たれそうな超威力の砲撃を前に、悠然と構えた涼やかな態度を崩していない。


 未だ『髪切』すら抜かずに真っ直ぐに前を見つめたまま。

 どのような攻撃が来たとしても対処できるとの余裕すら垣間見える。




「カカカカカカッ!! あえて迎え撃つつもりかの? そんな甘いモノではないぞ!」


「…………………」


「それとも、空間転移で躱すつもりか? しかし、儂が振り撒いた空間震動はお主の空間制御を妨害するぞ! 出力で上回るこちらの妨害を突破できると思うな!」



 機械種タメトモの口からヨシツネが得意とする空間転移についての言及が飛び出した。


 おそらく互いに探り合った際にヨシツネの仕様をある程度見抜いたのであろうが………


 

「さあ、その身に味わえ!」



 巨大武者の左手から太陽が降臨したかのような光が発生。

 あまりに眩しく手で目を覆うしかできない状況。


 猛烈な風が巻き起こり、幾つもの風塵が渦を巻いて戦場を駆け巡る。 


 これがかつて九州統一を成し遂げた英雄の称号……

 『鎮西八郎』の名を知らしめるのに相応しい舞台。 



 そして、今、機械種タメトモの秘奥たる『鎮西八郎砲』が放たれる……




 

 ピカッ!!!!




 

 一瞬、周りの音が静まったと思ったら、光が爆発。

 閃光が濁流と化して、ヨシツネに向かって一直線に放たれた。

 陸上戦艦の主砲にも匹敵しようかと言う砲撃が戦場を切り裂く。


 レジェンドタイプどころか、超高位機種の重量級や超重量級ですら、大破するであろう超威力のエネルギー砲。

 『祝福』が無ければ、ヨシツネが耐えられるはずが無い砲撃。



 

 しかし、ヨシツネは恐れる様子も見せず、

 ただ、自身が最も頼りにする愛刀『髪切』を音も出さずに抜き放ち、




 シャンッ!!




 その場で刀を一閃。

 縦に振るって、空を断つ。



 すると、ヨシツネの目の前に縦に割かれた空間の亀裂が発生。


 縦10m程の亀裂は、まるで山々の谷間を流れる暗き川のよう。

 それは全てを飲み込み、水合に沈める貪欲な水神。


 その名は………




「飲み込め……『闇淤加美神(くらおかみ)』」




 そうヨシツネが呟くと、




 迫りくる機械種タメトモから放たれた強烈なエネルギー波は、


 ヨシツネが作り出したばかりの空間の亀裂へと吸い込まれた。


 まるで太陽の光が山々の谷間に飲み込まれるように………



 後には何も残らない。


 太陽にも匹敵する光量も、


 戦場を駆け巡っていた風塵も。  

 

 



「なんとおおお!!!」



 


 左手を突き出したまま驚愕する機械種タメトモ。


 自身の秘奥たる『鎮西八郎砲』が完全に無効化されたのだ。

 驚くのも無理はない。



 だが、ヨシツネの行動はそれで終わらない。


 互いに攻撃を1発ずつなのであれば、

 まだヨシツネの攻撃は残っているのだから。


 


「吐き出せ、『闇御津羽神(くらみつは)』」




 ヨシツネが刀をシャンッ!と振るいながら宣言。


 すると、ヨシツネの目の前に発生した空間の亀裂から、


 

 ゴオオオオオオオオオオオッ!!



 闇色の龍神が咆哮と共に現れた。


 

 そして、重量級ですら一口で飲み込めそうな巨大な口をパカンと開けて、





 ピカッ!!!





 眩い光が爆発。

 一条の閃光となって竜神の口から撃ち出された。

 それは機械種タメトモが放った『鎮西八郎砲』と同種の光。

 先ほど空間の亀裂に飲み込まれたエネルギーが竜神の口からそのまま吐き出されたかのように。




「ぬおおおおおおおっ!!」




 流石に機械種タメトモも、これには対処できず。

 自身が放ったエネルギー波をそのまま喰らって、後方へと吹き飛んだ……






 『闇淤加美神(くらおかみ)』も『闇御津羽神(くらみつは)』も、日本神話における天津神。


 『闇淤加美神(くらおかみ)』は谷間に流れる水の神。

 『闇御津羽神(くらみつは)』は峡谷の水源を象徴する龍神。


 共に、伊邪那岐神が火之迦具土神を『天之尾羽張』で斬った際に、その血から生まれたとされる神。


 つまり、『天之尾羽張』に非常に縁のある神だと言える。

 これはヨシツネが亜空間倉庫に収納した『天之尾羽張』の影響を受けて発現した『固有技』であろうか?

 

 ただ亜空間倉庫に収納しただけで、そんな『固有技』を覚えるなんて妙な話だとは思わなくもないが……


 

 

 



「カカカカカカッ! 儂の完敗じゃわい!」



 敗れた機械種タメトモはあっさりと負けを認め、

 機嫌が良さそうに大笑い。



「まさか儂の『鎮西八郎砲』が完璧に跳ね返されるとはのう………、夢にも思わなんだぞい」



 毘燭の『祝福』の効果もあり、機械種タメトモに破損は見られない。

 無論、ヨシツネも無傷であり、模擬戦としてはこれ以上無い形で終了となった。



「老公。お相手していただき、感謝つかまつる。御身の一撃、上手く合わせられなければ、負けていたのはこちらだったでしょう。誠に肝の冷える砲撃でございました」


 

 ヨシツネは勝利者ながら謙虚な姿勢で老練な英雄型へと感謝を示す。



「この一戦、拙者の刀に新たなる重みを加えるものとなり申した。この御恩は一生忘れませぬ」


「カカカカカッ! お主、いきなり饒舌になったのう? やはり武人同士は刃を交わしてからでなくては、胸襟を開いた話などできないか! カカカカカッ!」 



 どうやらヨシツネも機械種タメトモと打ち解けることができた様子。

 この武人気質な次席は、相手と仲良くなるには真正面からぶつかり合わなければならないらしい。


 まあ、それはあくまで仲間以外の話、且つ、対等に近い実力を持つ者同士のことに限るのだろうけど。

 



「カカカカカッ! では、ヨシツネ。儂に勝った褒美をやろう。コレを受け取れ!」



 機械種タメトモはそう言いながら、自身の装甲の胸板部分を毟り取り、ヨシツネへとポンッと手渡す。



「老公? これは………」



 ヨシツネは手渡された40cm程の装甲版を手に問う。

 すると、機械種タメトモは豪快にニヤリと笑ったような雰囲気を見せ、 



「餞別じゃな。持ち帰ってお主の装甲に組み込むと良い。その部分には『万能防御』の『祖霊珠』を使っておるからな。きっと防御力が満遍なく上がるぞ」



 雑にトンデモナイ情報をこちらへと放り投げて来た。



 『祖霊珠』?

 それって、ボノフさんの所で聞いた『祖霊』のことか?


 ボノフさんから『祖霊』の話を聞いてから、打神鞭で占ってみたのだが、結果は『白鐘』の絵がテーブルに浮かび上がるという中途半端な情報。


 『祖霊』を生み出すには『白鐘』が何か関係するのかと思いきや、

 まさか今回、白の教会で『祖霊』が手に入るという意味だったのか?


 ここは色々聞いてみなくてはなるまい。

 メンバーを強化する為の情報は喉から手が出るほど欲しいのだ。


 

 思わず機械種タメトモへと駆け寄り、詳しい話を聞こうとすると、



「おっと! 『祖霊珠』に関する話は勘弁してほしいぞい。これは白の教会の秘匿情報に関わる話でな……」



 流石にそんな上手い話は無い様子。

 また、機械種タメトモからは『白の教会』の関係者に聞くのも止めておいた方が良いと助言された。

 

 何でも、白の教会の秘匿情報を漏らした人間は地位に関わらず厳罰を受ける可能性があるそうだ。

 また、それなりの情報を持つ者は定期的に情報漏洩を行っていないかどうかのチェックを受けることもあるらしい。



「…………と言う訳で、白の教会の秘密に近づくのは注意した方が良いじゃろう。どうしても必要なら『打ち手』になるのが一番早いがの」


「……………なるほど」



 どうやらこれ以上の情報は、機械種タメトモ、及び、白露やラズリーさんから聞くのも難しい様子。

 後はこちらで他の情報源を探すしかないであろう。



「お主がそれ以上に力を求めるなら、早く中央に向かうと良いぞ。得られる宝物は辺境と比べるまでも無く、手に入れる名声も同様。お主の力はすでにこの辺境には収まらないだろうからな」


「はい、分かっています。明日にはこの街を発ち、中央に向かう予定です」


「カカカカカカッ! そうかそうか! では、お主の活躍が辺境まで届いてくるのをこの街で待つことにしよう!」



 快活に笑う機械種タメトモ。

 貴重な情報を俺にもたらしてくれた上、ヨシツネに餞別まで与えてくれた。


 会って間もない相手ではあるが、俺達に残してくれたモノは非常に大きい。


 もっと早く会っていれば、色々な話を聞けたかもしれないが………



「ではな、狩人ヒロとやら。この街に戻ってきた時はぜひ顔を見せてくれ。そちらの白兎、ヨシツネ、お嬢ちゃんと一緒にな!」



 そう言って俺達に背を向ける機械種タメトモであったが………




「ヒロさんとの話は終わりましたか? 老公?」




 静かながら、地獄から響いて来たかと思う程の怒りが込められた声。




「私の忠告を綺麗に無視してくれたことは、無かったことにできませんよ」




 すでに戦闘服姿のラズリーさん。

 額に怒りのマークをビシリと浮き上がらせ、

 顔は笑顔ながら、内から炎のような憤怒を吹き上がらせて登場。



 当の機械種タメトモは、一瞬機体をビクッと振るわせると、



「…………………さらばじゃ!」



 それだけを一言告げ、

 脱兎の勢いで、自身の定位置である見張り塔の中へと駆け出していった。




「待てや、クソジジイ!!」



 

 それを猟犬のごとき俊敏さで追いかけるラズリーさん。

 もはやメイドでは無く、怒りを迸らせた執行者の様相。

 

 見張り塔の中へと消えていく2機。

 俺達をその場に置き去りにして。 



 なんか、ラズリーさんに抱いた印象が、

 ほんの短い間で急変してしまったような気がする。


 

 俺は足元の白兎と一瞬目を合わせて苦笑い。

 また、ヨシツネ、タキヤシャも似たような雰囲気を醸し出した。







エピローグはこれにて終了。

明日の投稿でエンディングとなります。

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― 新着の感想 ―
カクヨムの方でタメトモは重量級から中量級にダウンサイジングされたとありましたが、逆に改造でアップサイジングする事も可能なのでしょうか 例えばアスリンみたいに重量級しか従属出来ないなら、サポート型の機種…
タメトモから素材もらってるけどブルーオーダーが勝手に自分の素材をあげても良いのかな?弱くなることは街を守るのにデメリットしかないし主人の命令に反してそうな気もするけど 祖霊に関してどこかで触れてたっけ…
打神鞭が情報を出しきっていない…あたりもしかして打神鞭も別の周回?の記憶とか持っていたりしそうだなぁと 太公望の宝具の時点で結構ヤバい代物でしょうし…
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