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闘神と仙術スキルでアポカリプス世界を駆け抜けろ!  作者: クラント
狩人編

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567話 激戦



 俺達の前に立ち塞がった重量級4機。

 

 前衛に機械種レッサーデーモン2機。

 後衛に機械種ミノタウロス2機。


 どちらも新人狩人が立ち向かうようなレベルの敵ではない。

 

 特に機械種レッサーデーモンは下手をすると中央の猟兵団でも食われることのある強敵。


 重量級としては全高4mと小柄な部類には入るが、それでも生半可な攻撃などものともしない堅牢な防御力と強靱なパワーを持つ。

 さらに多彩なマテリアル攻撃と銃弾を無効化するAMFを備え、攻守ともに隙が無い。


 つまり、弱点を突けないのだ。


 対重量級の戦法として有用な、銃手を並べて物量で攻める手段が通用しない。

 銃弾は片っ端からAMFで無効化され、炎や冷気を吐き散らしながら、4mもの鉄巨人が突撃してくる。


 もう人間ではどうしようもない。


 盾となる同じ重量級がいなければ対処できない。

 若しくは、純粋に戦力で上回るしかない。



 今の俺達のように。




「森羅!」


「はい!」



 ドドドドドドドドドッ!!!



 ガイと共に重量級4機に向かって走り抜ける最中、後方の森羅へと指示を飛ばす。


 元々重量級相手の戦闘は想定していたから、すぐさま俺の指示を理解した森羅が、機械種レッサーデーモンに向かって銃撃。

 


 これは俺達が近接戦へ持ち込むまでの牽制。


 向こうは一息で炎や冷気を噴き出してくる。


 それを避けるために、マテリアル攻撃を持つ機械種レッサーデーモンの意識を一瞬だけでも逸らす。

 

 そう、ほんの一瞬だけでも時間を稼ぐことができたのなら………

 



 走る俺達の頭上を通り越して、巨躯を誇る悪魔型2機の顔面へと銃弾が叩き込まれる寸前、



 シュン、シュン、シュン、シュン………



 当然、機械種レッサーデーモンが展開するAMFが、マテリアル錬成器で作成された銃弾を分解。

 まるで熱したフライパンに水滴を落としたかのように、銃弾は次々と一瞬で蒸発していく。


 

 レッサーデーモンの赤い両目がギラリと光る。

 

 俺達の無様な足掻きを嘲笑っているように、口元の牙を剥き出しにして笑みの形を無理やり作る。


 

 実に嬉しそうな表情だ。

 銃弾をかき消されたことに、俺達が驚き慌てふためく様を期待しているのだろうが…………



 残念、慌てふためくのはお前達の方だ!



 森羅が稼いだ僅かな時間。

 それは次なる一手を打つための布石。

 



「風よ!」




 腕にはまる『定風珠』に仙力を注ぎながら、ただ一言叫ぶ。


 たったそれだけの動作で、周囲の空気が一斉に動く。




 ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!!




 それは人間も吹き飛ばすほどの猛烈な突風。

 瞬間風速100mを超える、車さえ吹き飛ばす程のパワーを秘めた風の暴力。


 俺の前方から発生させた突風は、重量級4機へとぶち当たり、僅かにその機体をよろめかせた。



 流石に限定された空間内の大気だけでは、重量級を吹き飛ばすほどの威力は出ない。

 10トン近い重量を持つ重量級は、それだけでは転倒すらしない。



 だが、俺にとってはそれで十分。


 

 猛烈な風が吹き付けられた重量級4機は戸惑う様子を見せている。



 これ等の現象は人間達が見たなら、俺が持つ発掘品の効果と思うだろう。

 しかし、マテリアル機器の発動を感知できる機械種であれば、在り得ない現象と捉える。


 マテリアル機器が発動したわけでもないのに、空気が不自然なまでに動いたのだ。


 その現象は機械種の晶石内で検索をかけても全くの不明としか出ない。

 この場で発生した不可思議な現象が、レッドオーダー達の困惑を招く。

 

 理解できないことが現実に起こると、思考が停止するのは人間も機械種も同じ。




 よし!

 取った!



 

 重量級4機に体勢を取らせぬまま、ミドルレンジからショートレンジへと持ち込むことに成功。


 あと数mで俺達の攻撃が届く範囲内となる。

 そうなれば、渾身の一撃を叩き込むだけ。


 

 ガイの奴も大丈夫そうだな。



 思考を加速しながら、俺の隣を走るガイの様子を横目で確認。


 案の定、ギラギラと目を輝かせ、噛みつかんばかりの闘志に溢れた表情。


 これならば、途中でヘタレる心配は無さそうだ。




 対重量級相手に近接戦を仕掛ける時、最も死に易いのが途中で戦意を失うことだ。


 何しろ相手はこちらの倍以上の体格。

 

 最初に駆け出した時は威勢が良くても、相手に近づくにつれその巨大さに尻込みを始め、辿り着くころにはすっかり怯えてしまっているパターン。

 飛び出した手前、逃げることもできず、ただノロノロと歩く木偶の坊と化して、辿り着いた先で重量級に即潰される。


 未来視の魔弾の射手ルートにて何度も見た光景。

 これを乗り越えられなければ、一人前には成れない。



 ガイも1機なら立ち向かうことができるだろうが、重量級が4機も揃うと、その圧迫感は4倍では効かない。

 俺も瀝泉槍を持っていなければ途中でUターンしているかもしれない程。


 だから1対1を2回だなんて、馬鹿な理論を押し通した。

 ここで必要なのは誰にでも分かる理屈じゃなくて、自分を納得させることのできる言葉なのだ。



 まあ、流石にそれだけだと心配だから………



 念の為、少しだけテンポを遅らせるか………



 一息だけガイを先に行かせて様子を見ることにする。


 万が一、ガイがしくじった時のフォローの為だ。


 少し後ろにいた方が、視野に収めやすく手を出しやすいから。




 しかし、俺の心配は杞憂だったようで、

 




「ブーストッ!!!」




 突然、ガイが叫ぶ。


 すると同時にガイが装着する機械義肢の肩部分から後ろに向けて炎が噴射。

 それはジェット機のアフターバーナーのごとき推進器。


 そこに生まれた推進力を乗せて、ガイの身体が急加速。

 足が地面から離れて、僅かばかりの飛行状態へと移行。



「ブラスト!!」



 さらに右腕の機械義肢が細かく振動。

 上腕部から拳にかけてが霞んで見える程の超震動。

 

 

「くたばりやがれぇぇ!!!!」



 雄叫びと共に、震える拳を自身の何倍もの体格を持つ機械種レッサーデーモンの顔面へと叩きつけた。




 ボフンッ!!!




 その音はまるで砂を叩いたような軽い響き。


 それはそのはず。


 ガイの拳で殴られた機械種レッサーデーモンの頭部は一瞬で崩壊。

 破壊でも爆発でも無い。

 ただ拳が当たった箇所が砂のようになってサラサラと崩壊していく。


 

 

 あれは………

 ラズリーさんの攻撃に似てる………




 白露に仕えるストロングタイプ………いや、職業を3つ重ねたヒーロータイプ。

 パーフェクトメイドにマーシャルアーティスト、デストロイヤーを加えた戦闘メイド。


 彼女の超重量級を一撃で破壊した、防御を貫通する震動拳に良く似た現象。



 なるほど。

 あれがガイの切り札か。

 そりゃあ、重量級も一撃で倒せるな。



 機械種レッサーデーモンの、首から上を完全に吹き飛ばされた状態を見て確信。


 思った以上にガイの装着した機械義肢の性能は高そうだ。

 

 

 とはいえ、ロケット噴射で加速して、重量級の顔面に一撃をお見舞いするのはかなりの難易度。

 俺が『定風珠』で飛ぼうとした時もそうだが、どうしても姿勢制御を人力で行う必要があるから、推進力だけがあっても意味が無い。

 思った通りの場所に飛ぼうと思うと、相当な訓練をしないといけないだろう。


 強い機械義肢を装着しても使いこなせなければ、宝の持ち腐れ。

 ガイのように力を引き出さなければ、邪魔になることだってある。


 それを考えると、ガイはアルスやハザンに決して劣らない実力を持っている。

 あとはどうしようもない馬鹿と言う部分をカバーできれば、一流への道も遠くないであろう。




 全く、機械義肢にロケット噴射を付けて殴り掛かるなんて、どこの『シ○ルブリット』なんだよ?


 しかも不良っぽくて、義理堅くて、幼い少女に慕われていて………


 ツンツン頭で序盤のヤラレキャラみたいな恰好のくせに、主人公っぽい属性をつけやがって…………


 ジュードといい、アデットといい、アルスといい、ガイといい、何で俺の周りには俺より主人公っぽい奴が多いんだよ!

 



 思考を加速させながら、頭に並べ立てるのは、しょうもない愚痴の数々。

 

 だが、思考加速により考える時間はあるといっても、今は戦闘中。




 おっと…………、俺もこうしちゃいられない。

 ガイがカッコ良い所を見せたんだから、俺も負けるわけにはいかない!



 

 思考加速を解除し、ガイに負けじと目の前の機械種レッサーデーモンへと切り込む。



 狙うは首筋。

 


 トンッ!



 軽く踏み込み、足首のバネだけで跳躍。

 それだけで俺の身体は4mの高さまで飛び上がる。

 

 傍目からは何気ない動作からいきなり浮かび上がったとしか思えない挙動。

 溜めも無く、宙を駆け上がったようなあまりに自然な体の動き。



 振るうは一閃。



 シャンッ!!


 

 右手で持った瀝泉槍を横に払うように振り抜き、直径50cmはあろうお羊の頭を刎ね飛ばす。

 

 激しい戦意も見せず、殺気も無い。

 ただテーブルの上のコップを取るように、重量級の首を槍の一振りにて切断。


 

 ドンッ!!!



 機械種レッサーデーモンの首が地面に落ちて、初めて自分は首を刎ねられたのだと気づいたように首から下の身体部分がブルリと震え、


 

 ドシンッ!!



 やがて、膝から崩れ落ちて倒れ込んだ。








 




「俺の方が早かったな!」



 ニヤリと俺に野太い笑みを見せるガイ。

 どうやら俺より先に仕留めたことを自慢している様子。



 この野郎………

 俺の気苦労も知らないで…………


 まあ、これぐらいで腹を立てる俺ではないが、黙ったままでは良くない。

 コイツの将来のことも考えて、少しばかり指導してやろう。




「フッ…………、よく見てみろ。お前は頭を完全に破壊したが、俺は………、ホラ、この通り!」



 コンッ!



 床に転がった機械種レッサーデーモンの頭部を瀝泉槍の柄で小突く。



「狩人は晶石を確保してなんぼの商売だぞ。果たして狩人として優れているのはどっちかな?」


「ぐぬぬっ!!」



 ガイは俺の反論に言い返せず歯噛み。


 俺に口で勝とうなどと10年早い。

 


「んなことより、次のお客さんを待たせているぞ」


「んあ?」



 文字通り前衛を張っていた機械種レッサーデーモンを秒殺したが、まだ後衛には機械種ミノタウロスが控えているのだ。

 

 俺達のあまりの手際の良さに、機械種ミノタウロス2機は斧を構えたまま警戒状態。

 仲間の仇とばかりにすぐに襲って来ないのは、こちらの戦力分析が定まらないせいだろう。


 ガイの強さははっきりとわかる。

 装着した機械義肢の存在からある程度戦闘力をはかることができるから。

 

 しかし、どう見ても強そうに見えない俺が、たった一閃にて重量級の首を刎ねることができた理屈が不明。

 

 手に持った瀝泉槍が発掘品だとしても、鮮やか過ぎる切り口、鋭すぎる身のこなし………

 

 この世界の設定によらない俺の戦闘力の高さが、レッドオーダー達を困惑させる。


 正しく俺の存在はこの世界の異物なのだから。





「さて、向こうがまごまごしている間に仕掛けさせてもらいますか」


「おうよ! 今度は晶石を確保してやるぞ!」


「狙うなら足を狙えよ。機械種ミノタウロスは攻性マテリアル機器を持たないから、それでほぼ無力化できる」


「ああ!」


「あと、森羅に援護させるから」


「ああ? 要らねえよ!」



 ガイが訝し気な目でこちらを睨む。


 その目が先ほど重量級を一撃で仕留めたのを見てなかったのか? と訴えているが、流石にそれは許容できない。



「相手にAMFは無いから、森羅の援護は有効だ。それに今更わざわざ1対1に拘る必要は無い。余計なリスクを負おうとするな」


「そんなの………」


「教官に言いつけるぞ」


「……………分かったよ、フンッ!」



 そっぽを向いて拗ねたような顔を見せるが、一応理解はしているのだろう。

 

 重量級相手の勝負は命がけ。

 たとえ1%でも被弾率を下げることができるなら、それを躊躇わず使うべきなのだ。



「行くぞ!」


「チッ!」



 ガイは舌打ちしながらも、俺の号令に従う姿勢を見せている。


 全く、素直じゃない後輩の面倒を見ているような気分になって来る。



 俺とガイはほぼ同時に踏み出しながら、ようやく動き出した機械種ミノタウロスへと攻撃を開始。


 俺達の背後からは森羅の援護。

 その正確な射撃は、機械種ミノタウロスの要所要所へと痛撃を加えて動きを鈍らせる。


 さらにその後ろからはパルミルちゃんの『頑張ってええ!!』との声援も飛んでくる。


 ヒーローは良い子の声援を受けてパワーアップするのが常道。

 ならば今の俺達に勝利以外の結果は無い!












 俺達がダンジョンを脱出したのは、それから約4時間後。


 機械種ミノタウロス2機を倒した後は、特に敵とも遭遇せずに25階へと進むことができた。


 25階では、ジャイアントタイプ最下位、機械種イエティ2機と遭遇した程度。


 機械種イエティは所謂雪男。

 以前、エンジュ達との旅の途中、ミランカさんを助けた時に遭遇した機種。

 

 当時はボルトの旋風脚で目を潰され、白兎に膝を折られて、天琉と合わせ3機がかりでボコボコにされていたが、それでも防御力に秀でた重量級。

 決して油断できる相手ではないのだが…………



 だが、すでにその格上を倒している俺達の敵では無かった。 


 

 森羅の先制攻撃で怯んだところを、俺とガイで突撃。


 口から凍てつく冷気を吐かれたが、定風珠の力で無理やり押し返し、その隙をついてそれぞれ一撃で仕留めた。



「こんなに簡単に倒せるんだな、重量級は………」



 じっと自分の機械義肢の拳を見つめるガイが印象的だった。



「重量級の装甲を破壊できるパワーがあるなら難しくは無い。でも、お前の拳も届かなきゃ意味が無いからな」


「分かってるさ。この快進撃もヒロのおかげだってことは………」



 度々発生した突風は俺の持つ発掘品の効果だと思ってくれた様子。


 まあ、それ以外想定しようがないからなあ。

 


 ガイが単独で重量級に挑むのはまだまだ無謀。

 普段の狩りの対象とするなら、100%に近い確率で勝つ相手でないと危険。


 たとえ勝率99%でも、負ければ死ぬかもしれないことを考えると、100回戦闘をこなせば、大抵死ぬことになる。

 せめて敵への牽制や、敗北してもフォローしてもらえるメンバーがいないと狙う相手ではない。

 


 






 25階から汎用キーを使い、3階へと移動。


 出てくるのは機械種コボルト等の軽量級のみ。


 あとは楽ちん。

 森羅に任せて、俺達は穏やかな気分で見学。



 

 そして、






「ママッ!」


「パルッ!」



 抱き合うパルミルちゃんと母親と思われる女性。


 すでに日が暮れて、街灯が灯る明かりの下。


 鉄杭団の迷宮町事務所の前での親子の再会。


 また、機械種ラタトスクのラトゥもマスターであるパルミルちゃんの傍で見守っており、さらにその周りには鉄杭団の団員達が立ち並ぶ。

 共に感動の再会を喜び合っているようだ。

 

 もう部外者が入っていける状況ではない。

 ただ、今は温かい目で見守るしかないだろう。



「一件落着………ってか」



 負傷した少年は、俺とガイが運ぶ担架から、すでに鉄杭団の団員達が事務所内へ搬送済み。

 


 これで今回の俺のミッションはあと一つを残して全て完了したと言える。




「あのママさん………、美人だなあ…………」




 やや遠巻きに親子の再会を眺めている俺。


 ガイ達が戻ってきたことで、鉄杭団の事務所はてんやわんや。


 いつの間にかガイも事務所内に引っ張られ、今は俺と白兎と森羅だけの状態………



 いや、ガイは俺を関係者として事務所内に入れようとしていたのだが、あえて俺はそれを無視。

 どうにも俺の苦手な筋肉マッチョが多そうだったので、こっそり離れた位置に退避してきたのだ。


 


「でも、あんな美人さんにお礼を言われるなら…………」




 少しだけ心が揺れる。


 本当にマッチョが嫌と言うだけの理由だったら、我慢したのかもしれないが……



 でも、心が揺れるぐらいにパルミルちゃんの母親、パティさんというらしいが………は美人だ。


 パルミルちゃんの母親なら30才前後なのだろうが、十分に20代に見える。


 ウェーブのかかった金髪にメリハリのある体形。

 自分の子供を前にしていることもあるのだろうが、とても優しい印象を受ける。

 眼鏡こそかけていないものの、どこかユティアさんを思い出してしまう雰囲気。

 

 というか、ユティアさんからポンコツ成分とマッドな部分を引いて、大人の落ち着きと色気を足した感じ………


 いや、それだと、もうユティアさんがほとんど残っていない。

 

 なんで、ユティアさんを引き合いに出してしまったんだろうね?




 パタパタ

『助けたのは僕です! って言って来たら?』


「馬鹿野郎。そんな恥ずかしい真似ができるか!」



 白兎の提案を即座に却下。


 今更名乗り出るのも照れ臭過ぎる。

 それに今は親子の再会を邪魔するのも悪い…………




「ヒロ、何やってんだ?」


「んん? ガイか…………」



 ぼーっとパルミルちゃん達を眺めていると、俺の姿を見つけたガイが駆け寄って来る。



「何で事務所に入って来ないんだよ! 報酬の話ができないだろ!」

 

「あ~、その~」


「今は団長がいないからよ、しっかりとした報酬は後日になっちまうかもしれないが…………」


「別に報酬は要らないや」


「はあ?」


「俺とお前で倒した分の晶石は俺が全部貰っているからな。もうこれで十分」


「……………何言ってんだよ」


「ん~~、どうしてもって言うなら、俺の所属する白翼協商と話をしてくれ。勝手に他の秤屋から報酬を貰う訳にはいかないんだ」


「????」



 わけがわからないといった感じのガイ。

 

 本当にしょうがねえなあ、コイツ。




 現在の俺は注目株だ。

 おそらく新人狩人の中では一番目立っていると言っても良い。


 さあ、その新人狩人の中で一番目立つ俺との接点ができた秤屋はどうすると思う?


 たとえ借りだとしても、つながりはつながり。

 

 こちらが驚くほどの報酬を渡して好感度を得ようとするだろう。

 さらにその報酬が継続的に自分達の秤屋と関わり合いになるようなモノを用意するはず。


 そこからズルズルと俺を引っ張ろうとするのだ。

 面倒臭いったらありゃしない。


 しかも、俺が所属する白翼協商だって、他の秤屋から自分達の知らない所で莫大な報酬を与えられたなんて聞いたら決して良い気分はしない。

 

 今のところ白翼協商とは良い関係を築いているんだ。

 余計な茶々は入れたくない。


 それに……………、

 もうすでに俺が本当に欲しいモノは辺境の一秤屋で用意できるモノでは無いのだ。


 蒼石とか、翠石とか、ストロングタイプとか、発掘品とか、欲しくない訳じゃないが、どうしてもというレベルではない。


 そんなモノをわざわざ他の秤屋に恩着せがましく与えられるのは御免だ。


 

 だから、あえて『要らない』とも言ったし、その後に『どうしても』という言葉を付け加え、白翼協商を通すという条件を付けた。


 

 俺が欲しいと言ったわけじゃない。

 君達がどうしても俺に渡したいというから受け取ってあげるだけ。

 

 のスタンスを守りたかったから。

 

 つまり恩に着せるなよってこと。


 まあ、もう一つ狙いはあるけど。




「というわけで、伝言頼む」


「…………良いけどよ」



 ガイは憮然とした表情で返事。


 その後、何やら言い淀む様に口をモゴモゴしながら黙り込む。


 ガイの視線が俺と地面を行ったり来たり。


 言おうか言うまいかを迷っているというよりも、言い出すこと自体が彼にとって気恥ずかしいモノなのであろう。 



 ほっ、ようやくか。

 そっちから言いださなかったら、こっちから言うところだった。

 だが、コイツとの関係上、できるだけコイツから言わせないと。



 ガイの表情からだいたい何を言いたいのか察することができる。


 彼の性格からいって、言い出して当然のこと。

 なぜなら元々その予定だったから。

 しかし、現状、彼単独では難しい。


 さらに普段ならともかく、人員が減った鉄杭団では用意できない。

 ならば頼れるのは、さっきまで嫌と言う程その実力を目に焼き付けた、目の前の人間………




「なあ?」


「うん?」


「お前はもう一度、地下35階へ向かうよな」



 おっしゃ!

 来た!



「ああ、もちろん」


「……………なら、俺と一緒に地下35階を目指さないか?」



 ガイの表情が珍しく不安に揺れている。


 きっと断られたらどうしようかと思っているのだろう。



「……………………」


「言ったかもしれないが、俺の手には地下27階から地下32階のエレベーターの専用キーがある。当然、俺にしか使えないが…………」



 知ってる。

 だって、一度ソレを使って上がってきたんだろ。



「ヒロとだったら、地下32階から35階まで進むことができると思う…………、どうだ?」


「………………………」


「………………………」


「…………生半可な覚悟なら…………、死ぬぞ」


「!!! ハンッ! 覚悟ならこの右腕を付けた時からもうできているさ!」


「そうか」



 ゆっくりと顔を上に上げると、すでに空には星が散らばり、月が雲の間から顔を覗かせていた。




 ミッションコンプリート!!!



 

 心の中だけで思いっきり叫ぶ。


 

 打神鞭の占いの結果で出た、地下35階付近のエレベーターの鍵はガイ一行が持つというモノ。


 そして、ガイとの会話でそのエレベーターのキーが専用キーだと分かった。


 ならば、ガイと一緒でなければそのエレベーターは使えない。



 

 フフフッ、全ては計算通り。

 さぞかしお前の目には俺が頼もしく映ったであろう。

 さらに気難しいお前にとって気兼ねなく会話もできる人間は貴重。


 もちろん、救助の対価として、お前を無理やり同行させることもできただろう。

 

 だが、その場合は絶対にお前は不満を抱いたはず。

 

 ガイの性格上、とにかく強制されたら反発するからだ。


 だから、お前から言い出させたかったんだ。


 でないと、ダンジョンに潜る間中、お前の操縦に苦労することになるだろうからな。



「分かっていると思うけど…………」


「ああ、探索中はお前の指示に従う。俺は頭を使うのが苦手だから………」


「まあ、馬鹿だからな」


「そうだな、馬鹿だから…………、馬鹿じゃねえ!!!」



 うん、やっぱりコイツはこんな感じで居てほしい。


 俺に揶揄われているくらいでちょうど良い。



「悪い悪い…………、じゃあ、明日朝、8時にここに集合しよう」


「今からじゃなくてか?」


「無茶言うな! …………というか、お前も休めよ。ずっと気を張り詰めていただろうからな」



 ダンジョンから帰還して、次の日の朝にもう一度潜るなんて、本来なら無茶苦茶な段取りだが、こうもイレギュラーが連発する中、とてものんびりと休憩なんてできない。


 それに地下35階へ挑むなら、メンバーは俺が今、表に出せるフルメンバーを連れてこないと…………



「俺は一度街に帰って、編成を組み直す。最強メンバーを揃えるつもりだ」


「……………噂に聞くストロングタイプだな?」


 

 多分、ガイが知っているのは、秘彗までだろうな。

 剣風達を表に出したのは、最近のことだし。



「ああ、当分は楽にできるぞ」


「楽をするつもりはないさ。きちんと前衛を張らせてもらう!」



 パシッと拳を合わせて気合を見せるガイ。

 

 やはりその様子では秘彗しか知らない模様。



 ほら、やっぱり。

 多分、会わせた時、驚くだろうな。



「では、また明日な」


「ああ、よろしく頼む」




 ゴツンッ!



 ガイと左拳を合わせて、別れの挨拶。

 

 左なのは、一応気を使ってくれたのであろう。

 別に機械義肢の方でも俺は押し負けなかったけれども。

 








 ガイと別れて、バス停へと向かう俺達。


 白兎と森羅を引き連れて、夜の迷宮町を進んで行く。



「やはり、メンバーはヒスイさん達を?」


「そうだな、お前達に加え、秘彗、剣風、剣雷、毘燭、胡狛………、それに廻斗と輝煉もな」


「キレン殿も! それは…………」


「今回の件で勉強した。負傷者を運ぶとなると、どうしても運搬力を持つ機種が必要になる」



 亜空間倉庫には生きた人間は入れられない。

 だから負傷者を運ぶとなるとどうしても、直に運ばなくてはならない。

 重量級の輝煉であれば、リヤカーみたいな荷車さえあれば何人でも運ぶことができる。

 何せ任務は救護なんだ。

 負傷者がいる可能性はかなり高い。

 


「と言っても、機械種オウキリンの姿をそのままにしないさ。俺の変化の術で機械種グランドホースにでも化けさせるつもりだ」



 変化の術の効果時間は丸一日持たない程だが、俺がずっと近くにいるなら問題は無い。

 


「もちろん、ヨシツネや天琉、豪魔、浮楽、ベリアル、辰沙、虎芽、玖雀は七宝袋の中に入れておく。正直、ダンジョンの中で何が起こるか分からんからな」


 

 今回は下見のつもりだったから、ガレージにメンバーを残したが、本格的に潜るつもりなら戦力を残す理由は無い。

 



 フルフルッ!

『フルメンバーでダンジョン攻略だね、楽しみ!』


「ああ、そうだな」


 パタパタッ!

『この分だと、きっと会ったことも無いような強い敵が出て来そう!』


「不吉な予言は止めろ!! お前がそんなことを言うと洒落にならん!!」





 さて、白兎の言うように本当に会ったことも無いような敵が出てくるのかは……………、今のところ不明。


 だが、どんな敵がてて来たとしても、俺と俺の仲間達であれば倒せるはず。


 さあ、ダンジョンでは一体どんなイベントが待ち構えているのか………




 

 


ストックが尽きましたので、書き溜め期間に入ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ようやくのフルメンバーお披露目に期待マシマシで楽しみです。 加えて作品全体として連日掲載と書き溜めのサイクルが読む側にとってもメリハリがついていいな、と感じています。ワクワク期間ということ…
[気になる点] そういえば今のヒロって髪を茶色、パーカーの色を灰色にしてますよね。仮に鉄杭団の事務所で紹介されても黒髪黒パーカーの印象とは異なるため信じてもらえないのでは?…………あと、髪の色とか元に…
[一言] ぐっ…(;`皿´) フルメンバーという驚かすというワイ的熱い展開が…!!( 'ω')クッ! …楽しみにしてまそう|ूᐕ)
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