335話 予想外
ヨシツネが撃ち放った発掘品、『貫き還るモノ』の砲弾は、ただの1発でレジェンドタイプである機械種ダルタニャンを崩壊せしめた。
高位機種にはそれに相応しい装甲、防御手段を持つはずだが、何の抵抗も素通りして、いとも容易く塵へと返す。
「何という威力……」
ただ単純に強いとか速いではない。
あれは撃たれたら回避するのも防御するのも非常に困難なモノだ。
正しく一撃必殺といえる兵器だろう。
「ひょっとして、アレが当たったら俺でもどうなることか……」
機械種の機体を光の粒子に変えてしまうという原理は分からないが、物質変換とか反物質とかだったら、俺にだって効く可能性がある。
アレを持っているのが味方のヨシツネで良かったと思う反面、他にも似た様な武器を持っている奴がいるかもしれないと考えると……
「主様。お見苦しい所をお見せしました」
空中から降りてきて、早速俺に跪くヨシツネ。
全身から立ち上っていた白い煙もやや収まりつつあるようだ。
「ご苦労さん。いやいや、見事な戦いぶりだったぞ」
相手に切り札を使わせてから、こちらの札を切って、さらに奥の手を持つ。
完全にヨシツネのペースで進んだ戦いだった。
というより、いささか機械種ダルタニャンが迂闊だったんじゃないかなとも思うけれど。
「終始優勢だったな。相手が同格だからどうなることかと思ったけど、結局ヨシツネはほどんど手傷を負わなかったみたいだし。これはレジェンドタイプでも差があると言うことかな?」
マテリアルはかなり消費したようだが、ヨシツネに大きな傷は見られない。
俺が授けた発掘品の兵器があったとは言え、蓋を開けてみれば、従機も合わせ4機相手に圧勝。事前に相手の情報が分かっていたという有利があれど、ここまで差があるとは思わなかった。
「相手が正常な精神状態ではなかったからという部分もあります」
俺の質問に淀みなく答えるヨシツネ。
「マスターが目の前で殺され、その相手を前にして、同格の敵が立ち塞がる。逸る気持ちを抑えながらでは、剣先も鈍ってしまいます。また、レジェンドタイプと言えど、マスターロスト時は平静ではいられません。本来の彼はもっと冷静に大局を読みながら戦うタイプであったでしょう」
「……なるほど。英雄の名を持つ機械種にしては、色々とおかしな行動もあったな」
確かに俺の口八丁手八丁にも簡単に乗せられていたし、三銃士の主人公で数々の偉業を成し遂げた英雄にしては、少々物足りないなと思っていたが……
「かの御仁は、この度の戦いにおいて、やや姑息とも言える戦法をとりましたが、それが本来の戦闘スタイルであったのかどうか……、長年、搦め手を多用するマスターに仕えていると、そういった影響を受けることもありますし、投入されたスキルによっても性格が変化しますので」
「ふーむ……、それだとヨシツネも俺に長い間仕えていると、臆病になったり、慎重派になったりするのか?」
「主様……、何をおっしゃいますか?」
俺の発言に、珍しく呆れたような目で返してくるヨシツネ。
「主様が臆病なら、この世に勇敢と呼べるものは一人もおりません。たった一人でダンジョンの最奥まで降りた人間は、後にも先にも主様だけでしょう」
あの時は……、色々あり過ぎて自暴自棄になってた時期だったから……
それでもダンジョンの最奥までたどり着く奴はいないだろうけど。
「主様の力量は把握しておりますが、戦場に絶対はございません。拙者も白兎殿も主様に万が一のことがあれば、あのように取り乱すことになります。戦いでしたらいくらでも拙者が前に出ますので」
「あー、まあ、それは……適材適所と言うヤツだな。お前達に任せた方が上手くいく時には任せるようにするさ。俺も好んで危ない目に遭いたいわけじゃない。これでいいだろう?」
「ハッ、拙者の進言を受け入れていただき光栄です」
従属する機械種にとってマスターの身の安全は、何よりも最優先なのだろう。
俺の無謀な行動で、皆にやきもきさせてしまっているのは間違いないのだから。
「……さて、そろそろ……」
「むっ! 主様、お気をつけを……いや、これは……」
俺の返答を遮り、急に立ち上がって辺りを警戒し始めるヨシツネ。
しかし、途中で何かに気づいたようで、ふっと強張った肩を降ろす。
「……マスター、遅くなりました」
俺から少し離れた所に、いきなり現れた青白い巨体。
翼竜ごとき翼、熊ごとき剛腕と爪、獣面の異形。
紛れもない機械種グレーターデーモンの豪魔の姿。
「豪魔! 無事だったか? すまん! 結局、援軍にもいけなくて」
「いえ……こちらも、あのレジェンドタイプとストロングタイプを引き留められず……」
「いやいや! 囮として良くやってくれた。おかけで無事、脱出できたしな……あれ? 変化の術が解けてる?」
確かレッドオーダーの機械種ジャイアントに偽装していたはず。
それなのに豪魔の姿は機械種グレーターデーモンの姿に戻っている。
「申し訳ございません。四方八方から攻撃を受けているうちに……いつの間にか……」
「いや、それは別に構わない……ふむ。攻撃を受け続けると解ける仕様になっているのか。これは覚えておかないと……、それよりかなりやられてしまっているな。大丈夫なのか?」
豪魔の状態は傷だらけ。
四肢に欠損は見られないものの、装甲は削れ、背中の翼も幾つかの穴が見られる。
顔の横の角も半分はへし折られており、両手の爪も何本かは剥がれている有様。
「行動に支障はございませぬ。表面の装甲は大分剥がれてしまいましたが……」
平然とした態度で答える豪魔だが、装甲の合間から内部が見えているような状態は見ているこっちが痛々しい。
格上であるレジェンドタイプ、そして、ストロングタイプを始めとするジョブシリーズの小隊を単独で相手にしていたのだ。
しかも、最初は機械種ジャイアントに偽装している為、十八番であるアンチマテリアルフィールドの使用を抑えたのだろう。
これではいかに超重量級と言えど、苦しい戦いであったのは間違いない。
「後はこちらに任せておけ。お前は十分に奮闘してくれた」
豪魔を労った後、命令してスリープ状態へと移行させ、七宝袋へ収納する。
流石に装甲があそこまで剥げてしまっては、これ以上戦闘をさせるのは危険だ。
少しの攻撃でも致命傷になりかねない。
五色石のクールタイムが終わり次第、豪魔を修理してやらなくては。
幸いヨシツネはマテリアルを消費しただけだから修理の必要はないし、ドック入りは豪魔だけだ。
完全復帰にもそれほど時間はかからないだろう。
さて、残るミッションはミレニケさんの救出だけ。
主な敵は全て片づけたから、後は俺と……探索役としての白兎を呼ぶか。
「よし! ヨシツネ隊員、次の任務を申し渡す。前線基地へ戻りエンジュ達の護衛を頼む。杏黄戊己旗による補給がある程度進んだら、代わりに白兎をこちらに寄越してくれ。前線基地に戻るだけの燃料はあるか?」
「ハッ、1回の転移分は残しておりますので、エンジュ殿の所へ戻るだけなら問題ありません。……マスターはミレニケ殿の捜索に?」
「ああ、残りは雑魚ばかりだろうから、心配は無用だ。それに野賊の連中も崩壊して、散り散りに逃げるかもしれないし。前線基地のエンジュ達とニアミスする可能性もあるから、そっちの警戒を強化しておいてくれ」
「ハッ、承知致しました」
空間転移によって溶けるように消えて行ったヨシツネを見送り、先ほど脱出してきたばかりの野賊の本拠地へと踵を返す。
立て続けに色々なことが起きて、結局ミレニケさんの救出に手をつけられなかった。
こうなってしまっては白兎の到着を待っている時間も惜しい。
なにせ今ミレニケさんがどこにいるのかもわからないのだ。
先に自分だけでもミレニケさんを探し始めないと。
おそらく彼女がいるのは、ボスであった感応士の部屋のはず。
ボス部屋であれば、建物の最上階である可能性が高い。
当然、ボス部屋なのであれば最も安全な場所にあるだろうが、ここまで予想外が続くと不安になってくる。
不安を解消するにはミレニケさんを見つけて、こちらで身柄を確保する以外に無い。
色々と予想外のことが起きまくったけれど、ここまで来たのだから、目指すは完全なハッピーエンド以外にない。
誰かが欠けてほろ苦いビターエンドなんて御免だ。
ミレニケさんを救出して、ミランカさんに会わせてあげる。
エンジュとユティアさん達と一緒に街まで送り届ける。
助けた有力者の縁者のコネを使って、街に居つく許可を得る。
皆の安全を確保出来たら俺の役目はそこで終わり。
笑顔で手を振る彼女達に見送られながら、俺は旅立つのだ。
その為には絶対にミレニケさんを無事な状態で助け出す!
逸る心を抑えながら森を抜け、俺が破壊した建物を囲むフェンスの所までやってきた。
遠目に幾人かの野賊の連中が右往左往としているのが目に入る。
そうだ。アイツ等を捕まえて、ボス部屋の場所を吐かせることにするか。
ここまで状況が混乱していれば、相手の口も軽くなっていることだろう。
相手をビビらすために、七宝袋の中から莫邪宝剣を取り出そうとした時、
ドガアアアアアアアアアアアアン!!!
辺りに響き渡る轟音。
まるで隕石でも落ちてきたかのような振動が地面を揺らす。
ドカンッ!
ドカンッ!
ドカンッ!
続けざまに重いモノがぶつかり合う音が連続して鳴り響く。
そして、遅れて届く土埃を含んだ風圧。
「え? 一体……」
音がした方向へ顔を向ければ、絶句。
数百m先にいたのは、建物を殴りつける、見たことが無い程の巨大な人型機械種。
その身長たるや豪魔の比ではない。
地面から頭まで40m近くありそうだ。
天を支えることができそうな程の大巨人。
「機体の色が黒い……、ということはレッドオーダー?」
その腰ほどの高さしかない野賊の本拠地であった建物を攻撃する、人類の敵対者であるレッドオーダー。
この周辺が赤の威令が届きにくいスポットとはいえ、白鐘が無ければレッドオーダーが襲ってくることもあるという話であったが……
「え? どういこと? 何でこのタイミング? 待って! 意味わかんない!」
突然、現れた超大型巨人型のレッドオーダー。
全高40mというのはウルト○マンとほぼ同等の大きさだ。
ここまでの高さを持つ機械種には未来視内でもほとんど見たことが無い。
そもそもこれ程の巨大な機械種が近づいて来れば、気づかないはずがない。
しかし、どう考えても、この場に突然現れたとしか思えない状況。
「何で? どうして? あんな化け物みたいな機械種がいきなり現れるんだ?」
俺の頭の中はパニック状態だ。
あまりにも想定外のトラブルに脳の処理が追いつかない。
「ギャアアア!! 誰か、助けてくれ!」
「うああああ、こっち来るな!」
狼狽する俺に、野賊の男達の悲鳴が届く。
視線だけをそちらに向ければ、もう一体のレッドオーダーが、これまたいつの間にか現れて、野賊の連中を襲っていた。
その姿は一言で言えば、骸骨の仮面を被った道化師。
手には錫杖ごとき長柄の武器を持ち、次々と逃げまどう野賊を殺し回っている。
一振りすれば、人間の首が飛び、マスターを守ろうとする機械種が破壊される。
さらに口から霧状の液体を吹き出し、それを浴びた人間や機械種を凍りつかせていた。
「……あれは、機械種マッドピエロ?」
中央で稀に現れるワンダリングモンスター。
フラフラと荒野を徘徊していたり、巣や遺跡の中で番をしていたり、さらには白鐘に守られている街の中にも出現する非常識な機械種。
恐るべきことに、ある程度白鐘の恩寵を無視する機能が備わっているらしく、街の外縁部であれば人間を殺めることもできる最悪の殺人機械。
中央でも高い賞金首がかけられており、コイツの首を持っていくだけで一財産となる程。
もちろん討伐するのは並大抵の難易度ではなく、ほとんどの狩人達はコイツの威名を轟かせる材料になっている。
「どうして、そんな機械種がこの場に……あ!」
人間達を殺し回る機械種マッドピエロの肩から胸にかけて、レッドオーダー特有の漆黒とは違う色合いが混じっているのが目に入った。
それは目の覚めるような橙色。
まるで勲章のように黒の機体に映える色合い。
「まさか! アイツも……」
超巨人型の機械種に目をやれば、人間で言えば心臓の位置の辺りに、黒みを帯びた濃い紅色……臙脂色の配色。
こちらは機体の黒に紛れて見にくくなってしまっているが間違いない。
「色付き! ……いや、ユティアさんが言っていた『橙伯』と『臙公』」
赭娼、紅姫に匹敵する高位機種。
通常機種より遥かに強い特殊個体。
一体倒すだけで超一流の猟兵団が半壊するくらいの被害をこうむることもある。
「そんな奴等がなんでこんな所に……」
なぜそんな機械種がこの場にいきなり現れた?
俺が倒した感応士とナニカ関係があるのか?
でも、2回も見た未来視では、コイツ等は全く出てこなかった。
なぜ今回だけコイツ等が出てくるんだ?
もう、ワケが分からん!!
ドガンッ!!
ドカンッ!!
ドカンッ!!
目まぐるしく変化する状況に対応できず、ただ呆然する俺を他所に、ひたすら建物を殴り続けている超大型巨人。
ガラガラガラガラガラガラッ!!
白の文明時代と思われる建物だけあって、かなり頑丈な仕様のようだが、流石に度重なる攻撃に耐えられず、一部が崩壊し始めた……
「あ! 建物にはまだミレニケさんが!」
崩壊したのはこの建物の大きさから言えば、ほんの一部であるが、このままではボス部屋にいるはずのミレニケさんが生き埋めになってしまう。
「てめえ! 何してやがる!」
ミレニケさんの危機に怒気が吹き上げ、頭の中を巡っていたアレコレが一気に吹き飛んだ。
邪魔する奴はぶっ潰す!
七宝袋から降魔杵を取り出して、超大型巨人へ向かって投げつける。
「行け! 降魔杵! 押し潰せ!」
俺の全力投球により、一直線で数百m先の超大型巨人へと飛んでいく降魔杵。
そのまま遥か高みにある頭部にぶち当たり、そこを中心として超重力を発生させる。
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!
無形の圧力が天から落ちて、不遜なる巨人を押しつぶさんと迫る。
実際の所、重力は惑星を構成する質点が物体を引く力の合力だから、天から降ってくるモノではない。
しかし、超重力を耐えようとする超大型巨人の姿は、正しく天に押しつぶされそうになっている。
超大型巨人はガクッと膝をつき、そのまま押しつぶされるかと思ったが・・・
「げ! 対抗しやがった!」
膝立ちの体勢のまま、降魔杵が発生させる超重力を押し返そうとする超大型巨人。
己の体内にもつマテリアル重力器をフルパワーで稼働させ、降魔杵の超重力へと対抗。
ブオオオオオオオオオオオオ!!!
不可視のエネルギーがぶつかり合い、辺りに暴風が巻き起こる。
それは宝貝が生み出す超常現象と、この世界の科学が生み出す超兵器との対決。
臙公ともなると、俺の宝貝に対抗するだけの力を持つと言うことか……
「いや、まだ俺の降魔杵は全力じゃない! まだまだ余裕があるぞ! 降魔杵よ! やれ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!
俺の命令を受けて、さらに出力をあげる降魔杵。
泰山と同等の重さを発生させる降魔杵のパワーを舐めるな!
持ち直しかけた超大型巨人が再び追い込まれ、その猛威を前に文字通り膝を突きそうになった時……
ガラガラガラガラガラッ!!!
超重力のぶつかり合い余波に耐えきれず、建物の一部がさらに崩れ、ミシミシと音を立て始めた。
「イカン!戻れ!降魔杵」
これ以上は建物がもたないと判断した俺は、攻撃を中断。
超大型巨人を倒しても、建物を崩してしまったらミレニケさんは無事では済まない。
「降魔杵で倒すには被害が大きいな。かといって、火竜鏢で仕留めるには時間がかかる。やっぱり莫邪宝剣でぶった切るしか・・・」
降魔杵を手元に戻し、超大型巨人への対抗策に頭を悩ませていると……
ギロリ
凶悪なまでに赤く巨大な瞳がこちらを見つめてきた。
漆黒の機体の中、目だけが異様に赤く輝き、こちらへの敵意を迸らせている。
やがてゆっくりとこちらへ向き直り、その口に当たる部分を大きく開いた。
口内から漏れるのはエネルギーが収束していく際に発生する発光現象。
その巨大な機体に備わったマテリアル収束器による粒子加速砲は、どこまでの威力を発揮するのか……
「チッ、ここは一旦、攻撃を受けてから……」
俺が急に接近したり、逃げ回ったりして、万が一、あの粒子加速砲が建物に当たったら大惨事だ。
ここは一度俺に向かって撃ってもらうとしよう。
たとえ臙公の一撃であっても、粒子加速砲なら耐えられる。
攻撃後の硬直を見越して一気に接近すれば……
しかし、どうやってアイツの頭まで攻撃を届かせようか?
あの高さでは俺の2段ジャンプでも届きそうにない。
かといって、超重量級相手に足元から戦闘を挑むのは厳禁。
ミレニケさんがいる建物近くで長々と戦闘なんてしていられないから、できれば一瞬で仕留めたいのだが……
その時、俺の視界に隅に映った黒い影。
道化師の姿をしたレッドオーダー。
「あ! いつの間に!」
超大型巨人へ俺が気を取られている間に、接近してきたのは、先ほどまで野賊を虐殺していた機械種マッドピエロ……の橙伯。
手に持った錫杖を振りかざし、俺へと攻撃を仕掛けてきた。
え? このタイミング?
味方からの粒子加速砲が発射されようとしているのに?
コイツ等、誤射が怖くないのか?
スローモーションのゆっくりと時間が流れる中、ふと機械種マッドピエロの持つ錫杖の先端が目に入った。
その先端の周囲だけがブレて見える。
それはストロングタイプの魔術師系とやり合った時に何度も見た光景。
『空間攻撃』
しまった!
このタイミングは……
死の鎌が俺に振り下ろされようとした、その瞬間……
ビュンッ
ビュンッ
俺の背後から2条の閃光が煌めいた。
機械種マッドピエロが持つ錫杖に一発。
もう一発は肩口にあたり、火花を散らせた。
「ギギギギッ!!」
不快な音を立てて、大きく後ろに飛びずさる機械種マッドピエロ。
俺という獲物を仕留め損なった愚痴だったのだろう。
突然の奇襲に痛手を負い、即座に距離を取った。
そして、その直後。
ビカッ!!!
俺の遥か頭上を、先ほど閃光とは比べ物にならないくらいの白色光線が通り抜けた。
見たことのある澄み切った白い閃光。
俺の前に立ちはだかる敵を薙ぎ払う、無垢なる光。
混沌を束ね、ほんの少しの愛嬌を足し合わせた破壊光線。
その名も『白天砲』。
ドガアアアアアアン!!!
口から粒子加速砲を放とうとしていた超大型巨人の顔面に直撃。
顔を抑えてのけ反り、たたらを踏む。
流石に一撃とはいかなかったが、それでも打撃を与えたのは間違いない。
紅姫と同格である臙公。
それも超重量級ともなれば、その物理的戦闘力は上位である緋王、朱妃に迫るのかもしれない。
それほどの強敵にここまでダメージを与えられる存在。
それは……
「白兎か? ……と、天琉も!」
ピコピコ
「あい! テンルもだよ~」
森の中から現れたのは、俺の筆頭従属機械種兼宝貝の白兎。
それと機械種エンジェルの天琉。
それはこれ以上ないほどの俺への援軍だった。




