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9.次章、プロローグ!カースト世界のお昼ご飯

その月曜日の朝は騒がしかった。

登校して来た守を取り囲む様にクラスメイト達が彼の左腕を心配した。


それから4時間の授業…………まぁ、先生が来ないからアニメ見たり、ゲームしたり、守にずっとくっついていたり、と終始真面目に勉強していたのは山田山田だけだった。


守自身はと言うと、メアリーを引き剥がしたり、メアリーのかまってちゃん攻撃を受けたりと頻繁に邪魔が入ったために集中して勉強することはできていなかった。


ちなみに山田山田はそこそこ勉強が出来るのだ。

実家が貧乏でなければ、確実に低レートにはいなかっただろう。



とまぁ、色々とドタバタした午前授業だったがとうとう昼休み、待ちに待った弁当の時間になった。


「おっ。山田は今日も日の丸弁当か?」


守が山田山田の弁当を覗き込む。

そして、守は彼の弁当を見て目を見開いた。


「チッチッチ。守!俺はそんな時代錯誤な事をする様な貧乏野郎じゃねぇぜ!」


山田山田は誇り高げに弁当を守の方に向けた。


「そ、それは!?」


守は驚きのあまり声が出ない。


「そう!これは、スイスの国旗弁当だ!!守!これなら俺の弁当を馬鹿にできねーだろ!」


山田山田の弁当箱には梅干しがびっしりと詰め込まれており、その表面を真っ白な白米が十字に並べられていたのだ。


彼はそれを見せびらかして自慢げにそう言った。

数秒の沈黙が訪れた。

耳をすませば、ウグイスが"ホーホケキョ"と鳴いているのがきこえる。


「ガハハハハハ!山田!何だそれ!馬鹿じゃねーの?ガハハハハハ!!」


西野美希の大爆笑によってその時の止まった空間は動き出した。


「そうでござるよ。守氏に日の丸弁当を馬鹿にされた事が悔しかったからと言って、それに対抗してスイスの国旗弁当を作ってくるなんておらなでござるよ。……………って臭!」


鳳凰院竜司が太った尻を掻き、その指を匂った。


山田山田は鳳凰院竜司の言葉にビクッと反応する。どうやら図星の様だ。


「山田くん。……私は、いいと……思うよ?スイスの国旗弁当。面白いな。あははは。」


メアリーは苦し紛れの笑みでそう言う。


「もういい!メアリーさん!君の優しさが、胸に刺さるから!だからその顔を辞めて!」


山田山田の心からの叫びであり、膝を床に落とした。そして、それと同時に黒歴史が新しく出来上がった瞬間であった。


「山田よ。俺はその弁当。凄いと思ったぜ。」


「守……」


「一つの弁当箱にそんな量の梅干しを入れるなんて、ど貧民の俺らがとうてい出来る事じゃねぇ。……だからよー。自信持てよ。そのスイスの国旗弁当に。」


守は床に座り込んでいる山田山田に手を差し伸べる。


「ふん。お前ってやつは。」


山田山田がその手を握り返し、立ち上がった。


「何でござるか。この茶番劇は……」


そんな事を呟いた鳳凰院竜司が"茶番劇最高!"とプリントされたTシャツを着ていたのはまた別の話である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇ、守くん。」


その茶番劇の後にメアリーが守のそばに駆け寄って来た。


「ん?何だ?」


「守くんは今日、どんな弁当を持って来たの?」


「いや、それは俺もわかんねーんだよ。毎朝チコが作ってくれてるからな」


「そうなんだー。じゃあ今日も一緒にご飯食べようよ。」


「いいぜ。てか断っても一緒に食べようとするくせに。」


守は半ば呆れた感じでそう言った。


「えへへ。」


メアリーは照れた様に頭の後頭部に手を当てた。


守は「はぁ。」とため息をつき、自分の弁当箱を手に取りその蓋を開けた。

そして守はその中身を見て、即座に弁当の蓋を閉めた。


(こ、これはまずーい!言い訳できないくらいのレベルでまずい!)


弁当の蓋を強く押さえつけている守の額には大量の汗が浮き出ている。


(何で弁当にエロ本が入ったんだよ!)


そう。一瞬だったが彼にはそれを認識する事ができた。

弁当の中にはエ○本の中身が切り取られた状態で、詰め込まれていたのだ。


(マジでまずい!バレたらこの教室内での俺の居場所が……と言うより、何で弁当に○ロ本何だよ。エ○本をおかずにしろってか!)



その時宗谷は今朝の会話が頭をよぎった。


"でもねぇ〜。その時間のほとんどが材料調達で外出してた時間なんだよね〜。3時間くらいかな〜。"

"お兄ちゃんの大好きなものを作ったの!"

"それじゃぁお兄ちゃんは満足できないの。"



(あ、終わった。……)


守は口から血を流し、死んだ目でただ呆然とした。


(何で気づかなかった。冷蔵庫の中に食材がたくさんある時点で、食材調達に外出するなんてあり得ねぇだろ!…そして、何よりもチコの俺に対する認識!俺はエ○本で満足する様な変態じゃねぇ!)


「あれ?守くん。お弁当一緒に食べようよ。ほら。」


メアリーが自分の隣にすやる様促してくる。


「メ!メアリーさん?今日はお腹減ってないんで、やっぱりお弁当は食べないわ〜。」


"グゥゥゥゥーー。"


守の腹の虫が、守の言動とは真逆の反応を示した。

メアリーはその音に反応する。


「今、お腹の……」


ボコンッ!!


守はメアリーの言葉を遮る様に自分の腹を思いっきり殴る。


「ぐはっっ!!」


「!?大丈夫?守くん!そして何で殴ったの!?」


メアリーが急いで守に駆け寄ってくる。


「はは。気にすんな。蚊がいただけだ。」


守は所々で「ぐはっっ!!」と血を吐きながらそう言う。


「蚊やっつけるだけで、何で瀕死になってるの!」


「ん?守。お前なんかおかしいぞ。この弁当箱を開こうとしたあたりくらいからか?」


話に割り込んで来た山田山田が守の弁当に手を出そうとする。


「ぐぅっっはぁぁ!!!やめろ!?その弁当に手を出すな!」


致死量の血を吐血しながらその弁当箱を山田山田から奪い去る。


「おいおい、どうしたんだよ。お前らしくねーぜ。」


「うるせー。この弁当は今日は食べないと決めたんだ。だから何人たりともこのパンドラの箱を開けることは許されん!」


「へへー。お前は俺の弁当を見たのに、俺はお前の弁当を見れないってか?そりゃ、筋が通った話じゃねーなー。」


山田山田が立ち上がる。


「バカが。あれは半ば自分から見せにいったものだ。カウントにははいらん。」


守は大事そうに弁当を抱えて反論する。


「お!なんか面白そうじゃねーか!オレも混ぜろよ!」


西野美希が机を飛び越えて山田山田の側に立つ。


(2対1ってわけか……だが、俺はこれを死守しなければ明日はない。ヤルしかねぇか。)


「おい!そこのデブ!お前はどうするんだ?」


西野美希が鳳凰院竜司を呼ぶ。


「西野氏。拙者は少しだけ膨よかなだけ。デブとは程遠いでござる。…拙者はパスでござる。」


Tシャツからはみ出たお腹。2重にも3重にもなっている顎。

まさにデブの体現とも言えるモンスターが宣った。


「そうかい。じゃあ2対1ってわけだ。」


教室内に不穏な空気が漂う。

メアリーはアタフタしている。


「山田山田。相手は骨折中とはいえ守だ。

命賭けろよ!」


「ああ!わかってるぜ!」


その掛け声とともに2人が一斉に守に突進してくる。


(まずーい!左手骨折。右手にエ○本!使えるのは足だけ!どうする!小山守!)


"ガラガラガラ"


そのほんの一瞬の思考の最中に、教室の扉が開く音がした。


その音につられて山田山田と西野美希の注意がそのドアの方にされる。


(来た!)


守はそれを見流さなかった。

2人の突撃を紙一重でかわし、山田山田の尻を思いっきり蹴る。


"ゴリッ!"と言う明らかにヤバい音とともに山田山田はぶっ飛んでいき黒板にめり込んだ。


黒板なんて使うことないからいいだろう。


守は「ふぅ。」と一息つく。


西野美希はと言うと、教室の扉の方に思いっきりガンを飛ばしている。

………………うん。怖い。


教室の扉の前に立っていたのは2人の少女だった。

1人は森川結菜。

もう1人は山野愛だ。


「あっ!結菜ちゃん!またあったね!」


メアリーが森川結菜に飛びつく。


「結菜?ああ。この前言ってたアイドルのやつか。」


西野美希が彼女らを睨み付けることをやめた。


「お前ら。どうしたんだ?森川と………えーと、山野んだっけ?」


守がその2人に近づく。


(はっ!覚えててくれた!私の名前。)


山野愛は心の中で喜んでいる。


「おー。2人とも守の知り合いか。さっきは睨んで悪かったな。」


「「いえ。大丈夫です。」」


西野美希は意外とあっさりその場を離れ自分の席に着いた。


「それで?なんでここまで来たんだ?」


守が再び同じ質問をする。


「ああ。そうだね。えーと。実は…生徒会長が君を呼んでるんだよ。」


森川結菜がそう言った。


「お。マジか。とうとう退学かなー。」


守は案外すんなりとその言葉を受け入れる


「た、退学!?ダメだよ!守くん!退学になったら私も退学するからね!」


メアリーが慌ててそう言う。


「大丈夫ですよ。退学にはさせません。この山野家の名にかけて!」


山野愛が胸に手を当ててそう言う。


「お、おう。サンキューな。」


キーンコーンカーン。

その時校内に予鈴のチャイムが鳴り響いた。


「あ、もう鳴っちゃったよ。と言うわけだから、放課後に生徒会室に行ってね!」


「りょーかい。」


「守様。実は私、あなたの事が…って、うわー!離しなさい!」


山野愛の言葉を遮る様に森川結菜が彼女の襟を掴みその場を立ち去って行った。


(一体なんだ。あいつら。)


こうして守の波乱な昼休みは幕を閉じたのであった。



どうもです。マルセイユです。ご無沙汰しております。

まずは読んでくださりありがとうございます。

私、実は他にも"スキルレベルがカンストしている復讐の喜劇"って言うのも書いています。

興味がおありの方は是非呼んでみてくださいね。



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