21.バケモノ再臨!
茜色の空から夕日の光が差し込みプレハブの教室全体を赤く照らしている頃、守達は物静かに自席に座っていた。
その場の空気はドス黒い暗黒の雰囲気で包まれているが、西野美希だけは呑気にいびきをかいて寝ている。
彼女らしいと言えば彼女らしいのだが……
ではそもそもなぜこんな状況になったのかと言うと、それは守達の退学がほぼ確実に決定したからである。
「…なぁ。お前ら、これからどうすんだ?
俺は大検取って大学行こうと思う。」
山田山田がおもむろに口を開く。
ちなみに大検というのは高校の卒業認定証のようなもので、大学進学には欠かせないものであるのだ。
「拙者は親の脛をかじらながら次元を飛び越えて生きていくでござるよ。」
「お前な。2次元の女の子には体温がねーだろ?現実見ろよ。」
「取り消せよ……取り消せよ!今の言葉!
拙者を救ってくれたものを馬鹿にさんじゃねぇー!!この時代はなぁー!!
2次げ … 」
ーーーーーーーゴツンッ!!ーーーーーー
「痛いでござるよ。守氏!」
「うるせぇー。キャラ崩壊してんだよ。
メラメラの実を食ってもその台詞を言うな。
お前が言ったら感動が台無しだ。」
「ひ、酷いでござるよー。」
気持ちの悪い顔で頬に空気を溜め込んで可愛さをアピールする鳳凰院竜司。
だがしかし、その顔には可愛さなど微塵も感じることはできず、その代わりに圧倒的恐怖が守と山田山田の記憶に刻み込ませた。
「守くーん。鳳凰院君なんかほっといて、こっちで私たちの未来設計について話そう?」
「何の未来設計だよ。」
「もう。分かってるくせに。
アレだよ。これからのメアリーと守くんのラブラブ夫婦生活の事だよ。」
守の腕に必要以上に胸を押し付けて攻撃してくるメアリーであったが、守の感情は微動だにもしない。
「やめろ。Cカップごときじゃ俺を動かすことはできん。だからさっさと離れろ。」
「!?何で私のカップ数知ってるの!」
「いや、お前いつも言ってんじゃん。この前も勉強ノート貸したら、"メアリーはCカップだよ♡結構大っきいでしょ♡" って落書きされて戻ってきたしな。」
「!?ちょっ!守くん!みんなの前で言わないでよ〜。恥ずかしいよ。……」
「…………」
守はジト目でメアリーを凝視する。
恥ずかしい?
メアリーはそんな感情を持ち合わせていたのだろうか?
「…ま、まぁ。それはそれとして、守くん!
巨乳好きだったの!!どうしては早く言ってくれなかったの!!言ってくれればすぐにでも豊胸手術したのに〜!全くも〜」
とんでもないことを口走る高校2年生女子。
どうやらメアリーは守の理想になる為なら何でもやるのだろう。
「おいおい。やめてくれ。そんなに近づくな。…それに俺は巨乳好きじゃねぇ。
むしろ貧乳好きだ!!」
「………え?貧乳…好き……なの?」
「おお!!守氏!お主も貧乳好きでござるか!実は拙者もそうでござるよ!!
個人的には爆裂魔法を放つ女の子が一番好みでござる!守氏は!どんなキャラがタイプでござるか!」
鳳凰院竜司の顔が守の視界にドアップされる。
流石の守も表情に恐怖を浮かべ
(いや、2次元前提の話かよ。)
と考えていた。
「ちょっ!鳳凰院君はあっちに行っててよ!
今はメアリーと守くんがお話ししてるんだから!」
近くに落ちているほうきを手に取り鳳凰院竜司をボコボコと殴り始めてしまう。
「……はぁ。…メアリー。やめてやれ。
鳳凰院、もう気絶してるぞ。」
「……あ。やっちゃった。」
てへぺろ!と舌先を出して可愛げあのるポーズをとる。
「…………………なぁ。守。お前はこれからどうするんだ?……」
「さぁな。まぁ。大学進学はすると思う。」
「そうか。……だが、アレだなぁ。
この一年と数日。本当に楽しかったよ。」
「…………そうだな。悪くはなかったよ。」
「うん。守くんにも出会えたしね。」
「でござるなぁ。拙者も感慨深かったでござる。」
「……zzzz」
その教室は退学になった事への恨みや不安というものは全くなく、ただ仲間との別れを悲しむ、そんな和やかな雰囲気が作り上げられていた。
ガラガラガラガラ
しかし、その平和な雰囲気を壊すかのように何者かが教室に入ってきた。
「あらやだ❤︎まーきゅん❤︎久しぶり❤︎」
(モ、モンスターかよ!)
守が心の中で悲鳴をあげた頃クラスメイト達は唖然とそのモンスターを凝視していた。
「そんなに見られたら〜❤︎気持ちよくなっちゃうでしょ〜❤︎」
ネットリとした舌がそのモンスターの唇を舐める。
ただその行動だけで守は金縛りにあったような感覚にとらわれる。
「お、おい。モ、芦羽!お前、なんでここに来た?」
「うふふ❤︎決してまーきゅんの事が心配できてあげたんじゃないんだから〜❤︎」
(きっ!キモいっ!!!何だその胸糞悪いツンデレキャラは!そして、お前のせいであのシリアスな雰囲気も消し飛んじまっただろうが!)と心の中でひとしきり叫んだ後、再び冷静になってモンスターと対面する。
「そ、そうか。それで?何で来たんだ?」
「うふふ❤︎ひ・み・つ❤︎」
(こ、こ、このバケモノがーー!!殴り飛ばしてやろうか!)
などとは言えるはずもなく、
「芦羽。いや、芦羽さん!お願いだから教えてください!」
と深々と頭を下げる。
「うふふ❤︎仕方ないわねぇー❤︎今日はねぇ。
まーきゅんとその仲間達にプレゼントを渡しに来たの❤︎」
「プ、プレゼント?」
「ええ❤︎そうよ❤︎」
芦羽ダイコはそう言って守に何かを手渡した。
「………これは……」
「そうよ❤︎そこにいる鳳凰院きゅんの失態でバレたカンペよ❤︎うふふ❤︎」
そう。これは碇剣道に取られたはずのカンペだったのだ。
「芦羽……一体どうやっ……」
守がそう言いかけた時、芦羽ダイコは守の口に人差し指を押し付けてこう言った。
「言わせないで❤︎い・じ・わ・る❤︎」
ざわ……
ざわ……
ざわ……
守は鳥肌を立てて恐怖を隠しきれない。
心なしに顔もどこかのギャンブラーの様になっている。
地下労働は嫌だと言わんばかりの顔だ。
「いつものアレをやったのか?」
「ええ❤︎そうよ❤︎」
アレ、体を売ったと言う事を言っているのは言わなくてもわかるだろう。
まぁ、こいつの場合売るのは相手側になるのだろがそこは気にしない。
「そうか……ありがとな。芦羽。…ところで?碇剣道の野郎はどうしたんだ?」
「ああ❤︎あいつらな今、そこの廊下でへばってるわ❤︎私との営みに耐えきれなかったみたい❤︎」
「あっ。そうかよ。」
「そうよ❤︎…それと私この後用事あるからもう帰るわ❤︎」
「ああ。マジでマジでありがとな。芦羽。」
「うふふ❤︎じゃあ❤︎さようなら❤︎……みんなも頑張ってね〜❤︎」
芦羽ダイコは守のクラスメイト達にも手を振り教室から出て行った。
その時碇剣道と思われる男の悲痛に満ちた叫び声があったのはまた別の話である。
「ま、守くん。あのすごい人…誰?」
芦羽ダイコが出て行った後すぐにメアリーが守の側に近づいてくる。
「アレは芦羽ダイコ。会長の秘書みたいな奴だ。」
「守氏。一体何があったのでござるか?」
「おう。実はな、さっきのバケモ……女が俺らのカンペを取り戻してくれたんだよ。
つまり、教師どもには俺らを退学にする物的証拠がなくなったから、俺らの退学が免除になったってわけだ。」
その言葉に空気が固まる。
「じゃ、じゃあ。メアリーは守くんとこれからもずっと一生一緒にいられるって事?」
「ん?一生?……おう!そうだ!」
目に涙を浮かべウルウルしているメアリーはリスの様だ。
「拙者はもっと学校生活をエンジョイできると言う事でござるか!」
「ああ!そうだ!」
歓喜に身を包む鳳凰院は芦羽ダイコにも引けを取らないバケモノにしか見えない。
一方で山田山田は喜びのあまりか顔を真っ赤にして泣いている。
守はそんな山田山田の肩に手を置き、一言こう呟いた。
「山田。勝ったんだよ。俺らは……
勝ち方はどうであれ、退学することはなくなった。…だから顔あげろよ。
俺らにはまだ明日があるからよ。」
「それも、そうだな!…よし!やめだ!
サンキューな!!守!目が覚めたぜ!」
「お安い御用だ。」
そして守と山田山田は強く手を取り合った。
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「んじゃ帰りますか〜。」
外はまだ明るい。
と言っても時刻は夕方6時頃。
夕日もだんだん西に傾き東の空には小さく輝く星が散りばめられた薄暗い空がみえはじめている。
「守くん。帰るの?あのさ今日、一緒に帰らない?」
「おう。いいぜ!」
「やったー!ちょっと待っててね!すぐにでも準備終わらすから!」
メアリーは喜びに顔を綻ばせてトコトコと自席に準備をしに向かう。
その喜びぐあいときたら、退学しなくてもいいという知らせを聞いた時よりも歓喜しているご様子だった。
「なぁ。守。……本当に良かったな…………退学にならなくて………。」
守のすぐ隣に移動してきた山田山田はホッと安心した表情で守に話しかける。
「あぁ。芦羽ダイコにはいくら感謝しても仕切れないぜ。」
その女の見た目と手段は外道であるが守たちを窮地から救ったという事実は守達に感謝を感じさせずにはいられなかった。
「そ、それでさぁ。守。……」
「なんだ?山田。」
心なしか山田山田の顔がほんのりと赤く感じる。
窓から差し込む夕日のせいだろう。
「あのさー。……その……」
「なんだよ。早く言ってみろよ。」
「じ、実はな……」
「うん。」
守は適当に頷き返事をするが、その適当な守とは対照的に山田山田はおもむろに、シリアスに口を開いた。
「多分俺………………………………芦羽ダイコさんの事好きになったかもしれない。」
「あー。なるほどね。なるほ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?今なんて?」
(今こいつ、芦羽ダイコが好きになったと言ったのか!?あのバケモノを!
いや!あり得ん。あり得るはずが…ない!これは聞き間違えだ。そうだ。聞き間違えに違いない。)
守は目の前の現実を受け入れることはできない。
それもそうだろう。
例えば友人が好きな人ができたと自分に打ち明けてきて、それが進撃○巨人の主人公であるエ○ンの母親を食べた巨人だったらどうする?
流石に聞き間違えだと思うだろ?
いや思いたくなるだろ?
「おい。何度も言わせんなよ!」
山田山田は赤い顔を隠すように俯く。
いや乙女かよっ!!
「いや。ごめん。…聞き間違えたみたいなんだよ。ははは。だからもう一回言ってくれ。」
「仕方ねぇ。芦羽ダイコさんだよ。
分かるだろ?」
(えぇぇぇぇぇ!!??いや、分んねぇよ!!なんで好きになったの!
悪いけど魅力ねぇじゃん!!
救ってくれた恩人に対して物凄く失礼だけど、人間では無いじゃん!
どこをどう見たらあのバケモノを好きになるんだよーー!!!!!)
「ははは。なんで好きになったの?」
冷静な態度を振る幕外見とは裏腹に、守の内側は相当荒れている。
「そ、それは…アレだよ!……俺も分んねぇよ……」
(だから、乙女かーーーーーーーーーーーーーーーーい!高校男子が顔を赤らめて俯くんじゃねぇよーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!)
「そ、そうなんだ。い、いつから好きなんだ?」
守は汗腺から汗が湧き水のように吹き出す。
もはや彼の思考は限界に達しているようだ。
「さ、さっき。退学から救ってくれたって知った時……からかな……」
再び顔を伏せて赤くなったそれを隠す。
(いやだから、乙女かーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!
て言うか、吊り橋効果かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!
芦羽ダイコに助けられて好きになるとか、どんだけピュアやねーーーーん!!!!)
「お、おう。まじか。…だが、どうして俺にそんなことを言ったんだ?…わ、悪いが俺は恋愛に関してはダメダメだ。…まずモテだ事がねぇ。」
「お前に相談したのは…アレだよ。
なんか…お前と芦羽ダイコさんが仲よさそうだったから…付き合ってんじゃねーのかなって…思って……」
目元に涙を浮かべて本気で悲しそうにする山田山田。
もはやそこらへんの女子より乙女だ。
(こいつフザケンナよーーい!!!!
な、な、なんで俺があのモンスターと付き合わなきゃならんのやーい!!!
一瞬でもそう思われた自分が憎ったらしくて仕方ないわーーーーーーーーーー!!!!!)
「ふ、ふざけんなよ。付き合ってるわけねーだろ?そもそも俺とあいつじゃ、つりあわねぇよ。」
それは事実である。
なぜなら守はそこそこイケメン。
対して芦羽ダイコはゴリゴリのブス面であるからだ。
守が釣り合わないのではなく、芦羽ダイコがつりあわないのだ。
「そ、そうか……よかった。……そ、それでよ。実は一つだけお願いがあるんだ。……」
「お願い?なんだ?言ってみろよ。」
「そ、その…俺と芦羽ダイコさんとの仲を取り持ってくれないか?」
守は口をがーんと開けて、ただ白くなって呆然とする。
簡単なことだ。
守にとって芦羽ダイコは恩人とはいっても本質的には最悪の天敵。
いわばもう関わりたく無い存在。
それを友人である山田山田が自分の彼女にしたいから協力してくれと言い出したのだ。
もしここでこの申し出を断ったら友人関係の絶交になる可能性があり、
もしここでこの申し出を受け入れたら必然的に芦羽ダイコと関わり合いを持たなければならない。
よって究極の二択に迫られた守は呆然とするしかできなかったのだ。
「守。協力…してくれるよな。」
守は思考した。
友人関係を切り捨てて自分の安全を確保するか………………………………………
それとも友人のおそらく初恋の恋愛を成就させて、自分の安全を危険に晒すか………………………………
そして、最終的に守は
「い、いいぜ。手伝ってやるよ。お前の初恋をな!」
友人を見捨てることはできず協力することに決心した。
「お!サンキューな!マジでありがとなー!!」
相当嬉しかったのだろう。
守の肩をバシバシと叩き喜びを体で表現する。
「あ、ああ。問題ないってことよ……………………」
語尾がだんだん薄れていくその言葉には問題しか感じられないが守は弱々しくそう言った。
「守くーん。帰る準備できたよ!」
その時メアリーが守の視界に飛び込んできた。
「お、おお。んじゃ帰るか。…じゃあなお前ら。また月曜日に」
「じゃあね〜。みんなバイバ〜イ。」
守とメアリーは教室から出る直前に振り返ってクラスメイト達に別れを告げる。
「おう。また月曜日な!…それと守!
よろしく頼むぜ!」
「さらばでござる!守氏。メアリーは氏。」
「………zzzz」
守は山田山田のその言葉に悪寒を感じた。
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side 三条穂鳥
今日。私はテスト終了後すぐに自己採点を行ないました。
気づけば夕日も差し込む時間帯になっていて、春独特の綺麗で大きな夕日がビルの合間から見え幻想的とも言える景色が東京中を包んでいます。
「もうこんな時間か……教室の戸締りして帰らなくちゃ……」
結局私が学校を出たのは6時10分頃。
テスト終わりという事もあってあたりに人はいません。
「……守さん……もう帰ったのでしょうか……」
思わず独り言を呟きながら、トボトボと校門に向けて歩みを進めます。
するとそこには2人の影がたたずんでいました。
誰でしょうか?
不思議に思ってそろりそろりと忍び足で近づいて誰なのかを確認します。
「……あ。森川さんに山野さんではありませんか。どうなさったのですか?こんな時間に…」
そう。そこにいたのは森川結菜さんと山野愛さんでした。
「か、会長。…わ、私は何もしてませんよ!人を待ってるだけです。」
森川さんがアワアワと声を裏返しながらそう言います。
その様子に普段からアイドルやってるなんて想像もできません。
「会長こそ。何をなさっているんですか?もう夕方ですよ?」
山野さんも少し焦っていますね。
一体どうしたのでしょうか……。
「私は自己採点をしていまして、先ほどようやく終えたので今帰宅しようとしていたところですよ?
……ところで…森川さん?誰を待っているのですか?もう校舎には誰1人いませんよ?」
これは本当ですよ?
校舎には誰もいなかったのです。
だから私は誰かを待っているという森川さんの言葉に違和感を感じました。
「そ、それは………」
森川さんが何かを言おうとしていたその時、私と後方から誰かの声が聞こえました。
それと同時に森川さんと山野さんは
「「やっと来たよ…」」
と顔を赤らめて、その声がするほうに駆け寄っていきます。
誰なのでしょうか。私は森川さんと山野さんを追いかけるように視線を背後に移します。
ーーーーーーーートクンーーーーーーーーー
「守さん……」
彼を見たその瞬間、私の心臓は急に活発に動き始めます。
でも……でも、なぜか守さんが女の子と話しているのを見ると胸がキリキリと痛みます。
「……お!三条ー!」
ーーーーーーーートクンーーーーーーーーー
守さんが手を振ってこちらに近づいて来ます。
「テスト。どうだった?満点取れてそうか?」
「……自己採点しました。」
「お、おう。それで?どうだった?」
守さんはゴクリと生唾を飲みます。
どうやら私のことを心配してくれてたみたいです。
「…はい!守さんのおかげで国語以外は100点取れました!」
「お!おおーー!やるじゃん!!!
流石だな!!三条!」
「は、はい……守さんのおかげです…」
「何言ってんだ。俺は何もしねさてねーよ。結局あのノートを勉強したのは三条だろ?だから、ほら。もっと自信を持てよ。」
その時守さんの手は私の頭を優しく包み込みました。
幸せな時間。至福の時間。
唖然としている3人の女の子など目にも入らないほどに周りが見えなくなり、私が感じるのは1つだけ……
(そうか……気づいてなかったのは私のほうだったんだ。)
私は守さんがいつか話してくれたある人物の昔話を思い出しました。
そして……………
「ねぇ。守さん。…」
「ん?何だ?三条。」
「その!私、実は ーーーーーーーーー。」
その瞬間私の声は自然に溶け込むように風の音に染み込んで流される。
「…え?今なんか言った?」
やっぱり聞こえてなかったみたいですね。
「いいえ。何も言ってませんよ。
さぁ。一緒に帰りましょう。守さん。」
「お、おう。」
でも、今は聞こえてなくていいです。
だけど、いつかは…………………………………………………………………
守さん。"後悔先に立たず"ですよ。
覚悟しておいてくださいね。
その時、私は笑顔で守さんを見つめることしかできなくなっていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森川「ねぇ。今の聞こえた?」
山野「はい……まさか会長までもが……」
メアリー「え?あれが会長さんなの?て言うか、大胆すぎません?そしてなんか許しがたいですね。恨めしいよ!」
森川「守君め。またライバルを増やしちゃったよ。どうしよ。しかも相手は会長……か……」
山野「あははは。守様……何でよりにもよって会長を……一番戦いたくない相手です。」
メアリー「確かに美人さんだね。
でも、メアリーは守くんと結婚の儀を交わしてるから問題ないよ。君たちは残念だったね。」
山野「見え見えの嘘はつかないでください。……て言うかあれ?なんか私たち取り残してあの2人帰ろうとしてますよ!
ちょっ!待ってくださーい!」
森川「!?ちょっ!守くーん!待ってー!!私も一緒に帰りたいよー!」
メアリー「ままま守くん!一緒に帰る約束忘れてないよねーー!」
その後、三条穂鳥に先手を奪われた女子たちは守とともにガヤガヤと賑やかに下校したのであった。
ガハッ!(吐血)
昨日コンビニでエ○本を買っている人初めて見た。
いるんですね。未だに紙媒体の人。