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2.はっきり言って、恋にカーストなんて関係ない。

チリリリリリリリリリ!!!


ボロボロの目覚まし時計が、部屋中に鳴り響き、守は、それを気だるげに止める。そして、守は、時刻を見た。


「!?8時14分!だと!」


その瞬間、布団から身を起こした守は、光と同等の速さで制服に着替え、リビングに向かう。


「おい!お袋!何で起こさなかったんだよ!」


「あらあら〜。マー君ったら〜。そんなに慌ててどうしたの〜?」


リビングでは、守の母親である玲奈が、ボロボロの椅子に腰掛けて、ゆっくりしている。


「あらあら〜。じゃねーよ!こちとら、もう遅刻寸前なんだよ!このロリババア!!」


「あらあら〜。ごめんなさいね〜。ところで、今日の晩御飯は、マー君のステーキとマー君のしゃぶしゃぶ、どっちがいいかしら〜?」


玲奈の表情には、いつも通りの笑顔が浮かべられていたが、何故だろう。何故だか、守は、恐怖を感じていた。


「………と、ところで、お母様?お弁当の方はどちらにありますか?」


守が、玲奈にそう尋ねると、キッチンの方から、テクテクと誰かが歩いて来た。


「はいっ!お兄ちゃん!今日のお弁当だよ!チコの好きなものばかりを入れたから、きっと美味しいと思うよ?」


その正体は、守の、唯一の妹であるチコだった。


「チ、チコよ。その弁当の中身は、雑草じゃ無いだろうな。」


守は、チコに恐る恐る聞いた。

と言うのも、昨日チコが守の為に作った弁当の中身が雑草だったからだ。


「お、お兄ちゃんは、チコのお弁当。食べたく無い?」


チコがウルウルとした目で、守を見上げた。


「あらあら〜。」


玲奈は、傍観している。


「お、お兄ちゃんは、チコの手料理なら何でも食べられるぞー。だから、チコよ。その上目遣いをやめてくれ。可愛すぎて、失神しそうだ。」


守は、よしよしと、チコの頭を撫でてやる。


「えへへ〜。1ポイントゲット〜。」


チコは、小さな声で、呟いた。

このポイントと言うのは、玲奈や守でさえも、よく分かっていないので、あまり触れてやらないでほしいです。


「うし!んじゃ、そろそろ学校行くわ。」


守は、そう言うと、全力疾走で、ボロボロの家を飛び出した。


「お兄ちゃーーーん。いってらっしゃーーーーーい!」


「マー君〜。今日の晩御飯は、マー君の踊り食いに決めたわ〜。うふふふふふ。」


守にゾゾっとした悪寒が、降り注いだ。


どうやら、玲奈に取ってロリババアと言うのは、禁句だったらしい。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



8時20分。

守が、校門の手前に着いた時はもう既にその時間になっていた。


守達の校舎、と言うよりボロボロのプレハブは、校門を入り、そのまま敷地内の裏山へ入った所に、建てられている。


(今日も、オニギリぶつけてくれねーかなー。

流石に、朝飯抜きは、辛いぜ。)


守は、そんなことを考えながら、プレハブを目指す。


すると、その道中。

たくさんの生徒が、守を取り囲んだ。

登校中と言うこともあって、バッグを肩に開けているやつもおり、何故だか、その全員が手に、バケツを持っている。


「おい。レート1!何で、堂々と表門から、登校して来たんだよ!ここは、お前らみたいなゴミが、使っていい場所じゃねー。」


モブ生徒Aは、守に対し、大声を出した。

しかし、守は、それを無視して、歩みを止めないでいた。


(腹減ったー。)


すると、その態度に腹を立てた生徒達は、手持ちのバケツの水を、守にぶっかけた。


「へへへー!レート1には、これがお似合いだぜ!」


「おっと、すまねぇな。手が滑っちまった。」


「超ウケる〜。」


生徒達は、ニタニタと君の悪い笑顔を浮かべている。

流石の守も、これにはカチンと来たのか、足を止めた。


「おい、お前……」


守が、その生徒達に、怒りをぶつけようとしたその時。


「あなた達!何やってるの!」


守の後方から、大きな声が、聞こえて来た。

守は、もちろん後方に振り返った。

そして、そこにいたのは、昨日守にオニギリをぶつけた張本人である、山野愛であった。


「おぉー。山野様。丁度今、レート1のクズを、懲らしめておりました。」


「山野様に褒められるよう、我々も日々精進しております!」


生徒達は、山野愛の姿を見て、歓喜していた。


「あなた達、今、その()()をこらしめているって、言いましたか?」


山野愛が、生徒達に質問する。


「ええ!我々は、今、このクズを消そうとしていました!」


モブ生徒Bが、満面の笑みで、答えた。

すると、山野愛は、自らの肩をプルプルと震わせ、怒りを表しているような様子となり、

その生徒達に、一言だけ、言葉を返した。


「あなた達。明日から、学校に来なくていいわ。私の前から、消えなさい。」


生徒達は、山野愛の言葉を理解することができずに、呆然としている。


「言っている意味がわからないって顔してらっしゃるわね。ただ私は、あなた達に、消えなさいって、言っているだけよ。」


山野愛は、生徒達に冷たい視線を向ける。


その頃守は、生徒達のバッグの中に入っていた昼食を食べていた。時折、「このソーセージうまっ。」とか言っている。


「ちょっ、ちょっと待ってください!私たちの何が悪かったのですか!」


モブ生徒Cが、慌てて、山野愛に質問を投げかける。予想外の言葉に生徒たちは、困惑の色を隠せていない。


「あなた達に答える義理なんてないわ。そんな事よりも、私の言うことを聞けないと言うのかしら?……どうなるか分かってるのでしょうね?」


山野愛の返答に、生徒達は、悪寒を感じた。

そして、生徒達は、ゆっくりとその場を動き始め、校門から出て言った。


そして、その後すぐに、山野愛は、守に駆け寄って来た。


「あ、あの。だ、大丈夫ですか?」


山野愛は、昨日とは、全く逆の言葉を投げかけた。そして、その顔には、若干の火照りがある。


「ん?誰だ?お前。」


守は、弁当をモグモグと食べながら返事をした。どうやら、昨日、自分にオニギリをぶつけた人間の顔も覚えていないらしい。

確かに守は、興味がないことに対しては、何も覚えようとしない節がある。


「私は、レート10の山野愛と言います。

よ、よろしくお願いします。」


山野愛は、顔から湯気を出しながら、守に握手を求めた。


「お前、レート10なのか。すげーな。俺は、

レート1の小山守だ。よろしくな、」


守は、山野愛の手を握り返した。

すると、山野愛は、真っ赤に赤面した顔から、ボン!っと爆発した。


その時、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り響いた。


「わわわ私は、チャイムが鳴ったのでもう行きますね!」


山野愛は、そう言い残して、全力で走って逃げて行った。


「おー。気を付けろよー。」


守がそう言った途端、山野愛は、コテンとこけてしまった。


「何だ。あいつ。変わったやつだな。」


守は、独り言を言いつつ、弁当に箸を伸ばした。


「この弁当。うめーな。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side 山野愛



私の名前は、山野愛。総資産50兆円の親の元に生まれ、山野グループとして、その名を全国に轟かせている。


その中でも、私という存在は、生まれて初めて話した言葉が、「消えなさい。」であった事から、山野グループの中でもずば抜けた天才として崇められており、一族の期待通り文武両道を貫いている。


でも、こんな私でも、たった1つだけ経験したことがないものがあった。

それが、人を好きになるということだ。


実際、自分に抜けているところが無い、つまりは、完璧な人間である山野愛にとって、恋愛とは、無意味なものでしかなかった。と言うのも、誰かと協力して生きていくなんて事、私にとっては、ただの足手まといにしかならないからだ。


しかし、そうした中で転機が訪れた。

それは、つい昨日のこと。

それは、いつもお迎えしてくれる車がパンクして、歩いて下校しているときのことだ。


「はぁ。車がパンクするなんてありえない。

歩いて下校なんて、生まれて初めてだわ。」


私が、ブツブツと呟いていると、不意に不良集団に絡まれた。


「おい、ねーちゃん。綺麗だな。ちょっくら、俺らとハッスルしねーか?」


「ぎゅへへへへへ。」


不良達は、気持ちの悪いニヤケ顔を私に向けた。


「消えなさい。不愉快だわ!」


「おいおい、ねーちゃん。元気いいなぁー。

ぐへへへへへ。」


「まさに、俺のタイプだぜ〜。」


不良達は、私にジリジリと近寄ってくる。


「や、止めなさい!私にこんな事して、タダで済むと思っているの!」


流石の私も焦り気味に、言葉を返した。


「なーに。そこら辺は、心配することはねーさ。だって〜。用済みになったら〜……」


不良は、ガサゴソとバッグの中から、ある物を取り出し、言葉を続けた。


「証拠が残らないように、殺すから。」


バッグから取り出したのは、ナイフであった。不良は、それを私にちらつかせる。


私は、恐怖のあまり言葉を発せないでいた。


「まぁ。ここに居てもアレだ。取り敢えず、こっちに来い。」


不良が、私の手首を握って、裏路地に入った。


「痛い。」


そして、不良達は、私を投げ捨てた。


「ヘヘェー。ねーさん。俺らもう我慢できねーわ。」

「やっちゃいましょうよ。お頭。」

「そうだなぁー。長引くのも面倒だし。とっととヤッて殺すか。」


その言葉に、私は、恐怖に体を支配され、身をかがめて丸くなることしかできなかった。


「今夜は、いい運動が、できそうだな。ぎゅへへへへへ。」

「お、お頭。俺にも分けてくれよな。」

「ああ、いいぜ。なんせ10人も居るんだ!さっさとヤっちまおうぜ!」


不良達が高揚し、とうとう私に手を出そうとしたその時、私のヒーローとなる人物が姿を現した。


「おい!クサチンども!こっちを見ろ!」


ヒーローとは、程遠いセリフであったが、その声が聞こえた時、私の心は高鳴った。

強すぎる、恐怖心が、一気に晴れるような気分だった。


その、私のヒーローは、不良達を次々に倒していき、ついに、その(かしら)までやっつけてしまったのだ。


そして、そのヒーローが、別れ際に

「今度からは助けられねーかもしれないから、気をつけるんだぞー。んじゃなー。」

と言う言葉を発した時、私は、彼の顔を見てしまった。


そう。小山守の顔を。


その瞬間、大量の涙がこぼれ落ちた。


「ごめんなさい。ごめんなさい。

あんな酷い事しちゃったのに……

ごめんなさい。本当にごめんなさい。」


私は、その場で座り込んだまま、泣き続けた。







読んでくださりありがとうございます!



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