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11.そのモンスターは男を食い尽くす。

申し訳ございません。携帯の不具合により、短めの投稿しかできませんでした。




「なぁ。三条。思ったんだけどさぁー。」


それはその4日後の放課後、守は生徒会室の机で気だるげにノートを開いて三条穂鳥の授業を受けていた。

ちなみに、火曜日から毎日授業を受けに来ており、この日は金曜日であった。


「ん?何ですか?」


三条穂鳥は授業の手を止めて守の方に振り向く。


「ほら、自分で言うのもアレなんだが。俺ってそこそこ賢いのよ。だからさ、お前の授業を受ける必要なくね?って思ったのよ。」


守は右手で華麗なペン回しをしながらそう言う。


「まぁ、それも確かな事ですね。正直、私はテストであなたに勝てる自信がありません。」


「え?マジですか?」


「はい。マジです。私こう見えて、高校生になってから1度も100点とった事ないんですよ。私の見込みが正しければ、守さんはいつでも100点が取れるほどの実力を持っている。違いますか?守さん?」


「買いかぶりすぎだ。だが、そう思っているのなら何故俺に授業を受けさそうとしたんだ?」


守は机の隅に置いてあるお菓子のバスケットを引き寄せて、その中に入っていたチョコレートを食べ始める。


「それはですね………」


「ん?どうしたんだ?」


三条穂鳥は考え込む様にして、守に返事をするのを躊躇った。


「ええっと〜……絶対に誰にも言いませんか?」


「?……あぁ。言わないよ?」


「なんで疑問系なんですか!」


三条穂鳥は守の対応に思わず大声を上げてしまう。


「ごめんごめん。んで?なんでなんだ?」


「絶対に絶対にですよ!これ結構デリケートな問題なんですからね。」


三条穂鳥は思わず前かがみになって主張する。

おっと、少しだけ谷間が…………………………コホン、艶かしい風景がそこにはあった。


「おけおけ。分かったから。言わないから。」


「本当ですか〜?」


三条穂鳥は疑惑の視線を守に向ける。


「だ、大丈夫だ……俺は口が…硬い。むしろ硬すぎて……しゃべる…のに…相当の力が……必要………だ!」


「物理的になんですね!物理的に硬いんですね!!」


守が喋りにくそうに口の硬さをアピールしていると、三条穂鳥がノリツッコミをした。


その時、生徒会室のドアがガチャっと開いた。


「失礼します。会長。体育祭の予算案について………って守様!!!!」


守はお菓子を食べながら振り向きざまに

「よっ。」

っと軽い挨拶をした。

その人物は山野愛。昨日と同じ様にピンクのメガネをかけている。


「あら、山野さん。どうしたんですか?」


その時の三条穂鳥には、先ほどまでの守との対話の様な女の子らしい雰囲気は無く、the生徒会長というにふさわしい威厳のある態度に取って代わっていた。


「あっ。はい。その予算案の話で………というより生徒会長。なんで守様がここにおられるのですか?」


「あら。言っておりませんでしたか?実は4日ほど前。守さんに中間考査まで授業をして欲しいと頼まれまして、それでもちょうど今、授業をしていたところなんですよ。」


三条穂鳥の対面で守は "はい?何言ってんの?こいつ。" みたいな顔をしているが、彼女はそれを無視して山野愛と会話している。


「あっ。そうだったんですね。じゃあ私も受けてもよろしいでしょうか?守様より頭悪いですし。」


山野愛は手に持っていた書類を生徒会長の机に置いて恥ずかしそうに尋ねてきた。


「……いいえ。それはダメですね。実は守さんは私と2人っきりで授業を行いたいそうなのですよ。だから山野さんはまたの機会という事でいいですか?」


その瞬間守の表情は能面の様に単色のものとなった。だが彼の周囲には真っ黒いオーラが揺らめいている。


三条の滝のその言葉に山野愛はプルプルと体を震わせ、顔は真っ赤に赤面し、目に大量の涙を浮かべた状態で

「会長のバカ!泥棒猫!ちんぷんかんぷん!!」

そう叫びながらバタンと生徒会室を出て行った。


「はぁ。」


三条穂鳥はため息をつく。

その姿は女の子らしい感じに戻っていた。


「三条さーん。さっきのはどういう事、なのかなぁー?」


べったりと能面を被ったかの様な無表情の顔が三条穂鳥の対面にあった。

流石の鈍感彼女でも、彼が怒っているということは分かった。


「ひっ!…ま、守さん?落ち着いてください。そ、その、先ほどのは本当にごめんなさい!今から説明しますから。」


数分間、三条穂鳥は綺麗な土下座を続けた。

容姿端麗、品行方正、文武両道の完璧超人は、土下座さえも黄金比だったのはまた別の話である。


「はぁ。頭を上げてくれ。生徒会長に土下座させたなんて知れたら、レート1じゃすまねーぜ。」


守は、バスケットからうまい棒を取り出しかじりつく。


「許してくれるんですか?」


顔を上げる三条穂鳥。

斜め45°の三条穂鳥。

少し涙目の三条穂鳥。

控えめで言ってもチート並のルックスだ。


「ああ。許す。だが、なぜあんなこと言ったのかは教えろよな。」


守はそのルックスにもなんの関心も示さずにそう言う。


「分かっています。……では、これを見てください。」


三条穂鳥は隠し持っていたプリントの冊子を守の前に提示した。


「ん?こ、これは!」


「はい。次の中間考査の問題用紙です。」


そう、そこには次の中間考査の問題用紙がずらりと並べられていたのだ。


「お、お前。これどこで手に入れたんだよ。」


守は驚いていた。驚いていたのだが、お菓子を食べる手も休めることはなかった。


「秘密にして置いてくださいよ!これバレたら、私退学になっちゃいます。」


「ああ。分かってる。それで?どうやったんだよ。」


「じ、実はですね……その……か、体を売りました。」


モジモジとしながら赤面した三条穂鳥がそう言った。


「………は?お前ビ○チかよ。」


「ち、違います!私じゃありませんよ!わ、私は……しょ……未経験です!」


三条穂鳥は慌てながら言う。顔は真っ赤だ。


「信用なんねーな。俺はビッ○が嫌いだからな。」


守は疑惑の視線を三条穂鳥に向ける。


「じゃ、じゃあ。か、確認しますか?私、守さんなら、別に………」


三条穂鳥は目を強く閉じて、少しずつボタンを外して服を脱ごうとする。

その手は震えていた。


ポコン。


その時、守は彼女の頭をチョップした。

三条穂鳥は"え?"という顔をしている。

どうやら何も理解できていない様だ。


「ばか。辞めろ。信じてやるから。……そう言うのは、特別な奴とやるもんだ。滅多なことするんじゃねーよ。」


その言葉に三条穂鳥は自分の顔が熱くなるのを感じた。


「ほら。ボタン閉じろ。」


彼の言葉に呆れさえ感じられる。

だが彼女はその言葉に少しときめいていた。


(なんでしょうか。この感覚。……)


「は、はい……」


三条穂鳥はボタンを閉じて手を膝の上に置く。視線は下がっているので顔は前髪で見えない様になっている。


「それで?体を売ったってのはどういうことだよ。」


「は、はい……その私の側近が……ですね。……」


俯いたままの三条穂鳥の声は消えそうなほど小さいものであった。


「側近?そいつに体を売らせたのか?お前……鬼畜だな。」


守は苦笑いを浮かべる。


「ち、違いますよ!私はそんな事命令してませんよ!彼女が自分で……独断でヤったんです!」


三条穂鳥は必死でそれを否定した。


「自分で?…すげー肉食系だな。ホントに三条の秘書なのか?」


「はい。ミリオンっていう女生徒です。一応私の秘書であり、生徒会書記なんですよ。……そうですね、守さんにも紹介しておきますね。」


「紹介?」


三条穂鳥は守の言葉を無視して、手を二回だけ叩いてヒューーッと指笛を鳴らした。


すると、ほんの数十秒後に、天井からドスンッと何かが降ってきた。

埃煙が舞い上がり何が降ってきたかわからない。


「うぉ!なんだ!」


煙が晴れて行き、その正体が次第に明確になって言った。


「!? モ、モンスター!!!」


守はその瞬間、顔の血色が無くなった。


「紹介します。こちらが生徒会書記。

芦羽(あしわ)ダイコさんです。愛称はミリオンです。仲良くしてあげてくださいね。」


紹介された人物は女……とは程遠いモンスターだった。


身長は170センチの黒髪ロングで、目はパッチリと開いており、泣きぼくろがある。

ここまで聞けば、あれ?可愛くね?と思うかもしれないが、それは浅はかな考えだ。

目は確かにパッチリと開いているが、千と千尋の○隠しで出てくるユ○ーバみたいな目で、可愛らしさなど微塵もないし、泣きぼくろは発達しすぎて15センチくらいまでデカくなっており、毛が一本そこから生えている。

体型は、鳳凰院竜司みたいな感じで、芦羽(あしわ)ダイコという名前の通りの大根足。足はダイコンだった。

愛称はミリオン。まぁ、その事には触れなくてもいいだろう。


この(モンスター)に貞操を奪われたなど、教師にとっては一生のトラウマであらに違いない。その断末魔が容易に想像できた。


そして、有ろう事か三条穂鳥は守にその(モンスター)と仲良くしてと言ったのだった。

(死刑宣告かよ!)

守は反射的にそう考えた。


「あら。会長〜。次はこの男を頂いてもよろしいのですか〜〜。❤︎」


その(モンスター)芦羽(あしわ)ダイコからネットリとした声が出てきた。


「!?」


守の顔は一層青くなる。


「待ってください。ミリオン。この人に手を出してはいけません。」


三条穂鳥が慌てて芦羽(あしわ)ダイコを抑制する。


「あら。そうなの?残念。❤︎」


芦羽(あしわ)ダイコが自分の唇をべロリとひと舐めする。


「それで?会長。なんで私を呼び出したのかしら?❤︎」


「ミリオン。実は、この人…小山守さんに中間考査の問題用紙の話をしたのですよ。それで、貴方のことを紹介しないといけない流れになって今いました。」


「あら、そうなの。❤︎でもどうしてこの男にあんな大事なことを教えたのかしら?会長が人を信用するなんて珍しいじゃない。❤︎」


「そうですか?でもまぁ、守さんは確かに信用に足ります。」


「ヘェ〜。その根拠は?❤︎」


「……ありませんよ。ただ、なんとなくです。」


三条穂鳥はクスっと笑って見せた。


すると芦羽(あしわ)ダイコが守の耳元に寄ってきて囁いた。

「ねぇ貴方。❤︎会長に気に入られてるじゃない。良かったわね。❤︎」


「!?」


ネットリとした声が守の全身を駆け巡り鳥肌を立てさせた。


「守さん?どうなさったのですか?」


「い、いや。何でもない。…話を……続けてくれ。」


守の顔は異常なほど引きつっており、何でもないことはない事は簡単に予想できた。


「ミリオン。こっちに来てください。」


「あら。分かったわ。❤︎」


芦羽ダイコがドスンドスンと三条穂鳥の元へ帰っていく。

守はホッと一息つく。


「ミリオン。守さんはレート1の生徒です。だから明かす義務があったのですよ。」


「ああ。なるほどね。合点がいったわぁ〜❤︎……それにしてもこんないい男がレート1にねぇ〜。❤︎」


芦羽ダイコがゆっくりと近づいてくる。

守は恐怖のあまり口が引きつる。


「守さん、もう察しがついていると思いますが、一応説明しておきますね。私が中間考査の問題用紙をミリオンにとって来てもらっていたのは、あなた方レート1の生徒を救済するためなのです。教師達のくだらない企みのせいで貴殿方が退学するなんて、私許せませんから。」


「お、おう。そうか。だから始めは言うのを渋っていたのか。」


「はい。凄くデリケートな問題だったので。……申し訳ございません。」


三条穂鳥が深々と頭を下げる。

その行動を見た守は芦羽ダイコを押しのけて、三条穂鳥に近づき

「気にすんな………と言うより、お前が謝ることなんて何もねぇ。頑張ってくれたんだからな。こんなレート1のためによ!」

と言いつつ頭を優しく撫でてやった。



トクン……………



(またこの感覚。……何だろう。でも、別に嫌な感じはしないです。)


三条穂鳥の頬はピンクに染まっていた。


その時守の背後から重低音に特徴がある声が聞こえ、その直後守の首筋にフッと息が吹きかけられる。


「あら、私には無いのかしら?体を売ったのはこの私よ?うふふふふ❤︎」


守は恐る恐る振り向く。

するとそこには、バケモノ(芦羽ダイコ)がいた。



「ギャャャャャャャャャ!!!!!!!!」



夕日をバックに響き渡る叫び声は山彦の様に、何度も繰り返し反響した。


この日初めて、守の意外な弱点が露見されたのだった。




ショートカット派です。

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