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10.カースト最上位の生徒会長はバリ美人

放課後、守は生徒会室の前まで来ていた。

彼にとって、本館の校舎に入るのは初めてで、初め生徒会室の場所がわからず迷ってしまった。


(どうしよ。入るか?いや。……ノックはした方がいいな。……あれ、3回だっけ?2回だっけ?やべ!どうしよ。どっちがトイレだっけ!)


初めての校舎、初めての生徒会室にテンパりを見せ、らしくない焦りの表情を浮かべていると"ガチャっ"と生徒会室のドアが開いた。


「あっ。守様。いらしていたんですね。」


中から出て来たのは山野愛で、普段はかけていないメガネをしていた。

ピンク色のメガネで、実に可愛らしい姿である。


だが、守にとってそんな事はどうでもいい事だった。

何度も言う様だが、彼は圧倒的シスコン。

よって、誰がどんな小細工(化粧や散髪、などのイメチェン)をしようとも、彼にとっては道路に落ちている小石程度の問題にしかならなかったのだ。


「お、おう。山野か。ここが生徒会室でいいんだよな。」


「はい。そうですが、どうかされましたか?」


山野愛が少し首をかしげる。心なしか顔が真っ赤だ。


「いや、なんでお前が生徒会室から出て来たんだよ。生徒会長に呼び出されてたのか?」


「え?言ってませんでしたか?」


「何をだよ。」


「私、実は生徒会副会長なんですよ。」


ニコッと笑顔を作りそう言った。

その時すでに頭から湯気が出ていた。


「へぇー。すげーじゃん。ってお前、顔が真っ赤じゃん。熱でもあるんじゃねーの?」


守はそう言いつつ山野愛の額に手をあてる。


ボンッ!!


大きな爆発音とともに山野愛はヘニャリと力が抜けた様に座り込んだ。


「おい!大丈夫か!」


流石の守でも心配の色を隠せない。


「だ、大丈夫です。それよりも守様。生徒会室にお入りください。」


赤面した状態で座り込んでいる山野愛の姿は、なんかこう……Hな感じだった。


「いや、ダメだ。病人をほっておく事はできん!」


「はぅぅ!」


山野愛は彼のセリフに一層赤面してしまう。

確かに頭の方には病気を持っているのかもしれない。


その時守は山野愛の髪、ちょうど耳の前髪の中心あたりに赤色の糸くずが付いていることを発見した。


「山野。髪に糸くず、付いてるぞ?」


守はそう言いつつ、山野愛に手を伸ばしてそれを取ってやる。


ボンッ!!


再び爆発音がなった。


「うし。んじゃ、保健室に連れてってやるよ。」


守は山野愛に手を差し伸べる。

すると山野愛はあわあわと挙動不審な動きをみせ、

「わわわ私は、自分でいけますからーーーーーーーー!!!!!!!」

と叫びながら走って行った。


「……なんだ?あいつ。わけわかんねーわ。」


取り残された守は苦笑する。

そして、右手を膝に当てて立ち上がり、

生徒会室のドアを2回叩く。


「どうぞ。」


中から女性の声が聞こえて来る。

そして、守はドアノブに手をかけ、「失礼しまーす。」と言いながら生徒会室に足を踏み入れる。


「君が小山守さんでいいのですか?」


生徒会長であろう女性は豪華な椅子に綺麗な姿勢で座っており、室内には彼女以外いなかった。


守は男に、さん付け?なんてことも考えたが、「ええ、一応そうですね。俺が小山守です。」と返事を返した。


「そうですか。ではそこに座ってください。」


生徒会長は自分の目の前にある高価そうな椅子に座るよう促してくる。

生徒会長が守の対面となる椅子に座った後で、守は指示通りその椅子に座った。


「まずは自己紹介からしましょう。私の名前は三条穂鳥(さんじょうほとり)です。知っているとは思いますが、生徒会長をしています。よろしくお願いします。」


自分の自己紹介をして右手で握手を求めてくる。


「おう。俺は小山守だ。よろしくな。」

守も軽く自己紹介をして、彼女の手を握り返す。


三条穂鳥。高校2年で守と同級生のその女性は品行方正、容姿端麗、文武両道。まさにそれらを兼ね備えた人物で全生徒から憧れの目線を受けていた。

特にその容姿は、もはや天の使いと言っても過言ではないほど美しいものであり、顔の作りや体の作りまで全て黄金比であると言う噂もあるくらいだ。

ただ、クールビューティ系の顔ではなく、キュートな類のそれである。




「それで?なんで、俺を呼んだんですか?」


互いの挨拶の後に守は話を切り出した。


「そうですね。では早速要件の説明をしようかと言いたいところですが、流石に客人にお茶の一杯も出さないわけにはいかないんです。だから少々待ってくれませんか。」


三条穂鳥はその席を立ち上がり守にお茶を注ぎ、お菓子を彼の目の前に置き再び椅子に座った。

その菓子の中には高級そうなものも入っている。


「では、話を始めましょうか。」


「おう。始めてくれ………あっ、これ美味い。」


守はお菓子を片手に話を聞く体制に入る。


「端的に言うと、次の中間考査の話です。」


「うむ。中間考査か。………おっ。これも美味だ。」


「…………そうです。ですが、これから言う話は私の本意では無く、先生方のが決めた事だからそこら辺は理解して置いて欲しいです。」


三条穂鳥は守のお菓子を貪り食う様に困惑しつつも話を続けた。


「分かった。……ほほぉ。これが、うまい棒か。初めて食ったわ。」


「コホン。…まず、今回の中間考査の得点で1人でも赤点を取ったら君たちに罰則が下るそうです。まぁ、その罰がどんなものかは分からないですが、退学の可能性も十分にあります。」


咳払いを一つ入れた後衝撃の事実を守に突きつけた。


「退学!?(むしゃむしゃ)なんだ(むしゃむしゃ)と!!!」


顔はいたって真剣そのものだが、言葉の合間でお菓子の咀嚼音がそれを無意味なものにした。


「そ、そうです。……なんか驚いているのか、驚いていないのか分からない反応ですが、理解してもらったならそれでいいです。」


「うむ!(むしゃむしゃ)俺は(むしゃむしゃ)すごく(むしゃむしゃ)いているぞ!(ゴクン)」


守は主張する様にバッと立ち上がる。

しかしその右手には未だにお菓子が握られている。


「ふっ。ふふ。」


三条穂鳥が口を手で隠して笑う。

控えめな笑い方だ。


「おい。何がおかしいんだ?俺らが退学になるのがそんなに嬉しいかよ。」


守は座りながらそう言う。


「いやすみません。私は君たちに退学して欲しくないですよ。本心です。」


「じゃあ、なんで笑ってんだよ。」


守の目が若干ジト目っぽくなり、三条穂鳥を凝視する。


「あなたが1番分かってるんじゃ無いのですか?ふふっ。……あー、なんか久しぶりに笑った気分です。」


三条穂鳥は笑いすぎにより流れ出た涙を人差し指で軽く拭き取る。


「よし!決めました!私が君達に指導をします!」


三条穂鳥が椅子から立ち上がるなりそんな事を言い出した。


「おお!それは心強いぜ!よろしく頼むぜ。うちのクラスには馬鹿な奴が2人もいるからな。」


2人というのは、鳳凰院竜司と西野美希だ。この2人は学力の低さでレート1に落とされたのだ。


「はい。…しかし、私は会長としての仕事で忙しいので、そのお馬鹿さんを2人も相手できる時間がありません。」


三条穂鳥は考える様に腕を組む。


「まぁ、それもそうだなぁ。それに三条も勉強しなきゃだしな。」


「こんなのはどうでしょうか?まず私は、守さんにだけ授業を行います。それから守さんがその2人に全く同じ授業を行って下さい。そうすれば時間短縮になります!どうでしょうか?」


「うむ。それならいいな。……それと、俺もそんなに頭がいいものでは無い。それをするなら俺より賢いメアリーに頼んだ方が良さそうだな。」


そう。守は定期考査、模擬試験などのテストでメアリーに一度も勝ったことがないのだ。


「いいえ。それは不要です。」


三条穂鳥が意外な返答をする。


「何でだ?少しでも賢い方がいいだろ。」


守のその言葉に三条穂鳥は生徒会長の机の中にしまっていた書類を守の前に差し出した。


「これ。高校1年生の夏頃から今までのあなたのテストの結果です。」


「?それがどうしたんだよ。」


「守さんの全てのテストの平均点は91点です。」


「お、おう。そうだな。確かメアリーは95?だっけ。91だとメアリーの方が高いな。」


「そうですね。普通ならその通りです。じゃあ、毎回、全教科全科目91点なのはどういうことなのですかね?」


机の上に守のテストの結果がずらりと並ぶ。

その得点は全て91点。数ヶ月の間、1点もずれることなく、同じ点数を取り続けていたのだ。


「私にはわざととってる様にしか見えないです。……そうですね、理由はメアリーさんより高い点を取ったら駄々こねられるのが嫌だから、という感じですかね?」


「………よく調べてるな。……俺にプライバシーはねーのかよ。」


守は苦笑している。流石に呆れている様子だ。


「ごめんなさいね。近くにあなたの事をよく知っている子がいるのですよ。」


もちろん山野愛の事だ。


「それで、分かった。メアリーじゃなくて、わざわざ俺を呼んだのもその為か…」


(やられた。)と思いながら椅子にもたれかかる。


「いえ。あなたにしようって言い出したのは山野さんなんですよ。正直私は誰でもよかったのですよ。」


「は?山野が?なんで?」


「それは分かりかねます。どうしてでしょうね。」


どうやら三条穂鳥も相当な鈍感人間の様だ。その理由を本気で分かっていないらしい。


「まぁ、そのことは後で山野さん本人に聞くとして、授業は明日から始めるので放課後に必ず生徒会室に来てくださいね。」


三条穂鳥が守に温かい笑顔を向ける。


「はぁ。めんどくセーけど、あいつらのためか……しゃーねぇ。明日からだな。

了解した。」


守は自分の荷物を持ち上げながら言う。


「はい。では今日はお疲れ様でした。」


「ああ。三条も気をつけて帰れよー。」


「はい。あ、それと世間ではノックを2回するのはトイレの時だそうですよ。こういう場合3か4回のノックが適切ですね。」


「なっ!やっぱりそうだったか。今度から気をつけるわ。」


守は生徒会室を後にした。

その時少し恥ずかしさを感じていたのは、言うまでもないだろう。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side 山野愛


今日は久しぶりに森川結菜さんが学校に来ました。

アイドルという仕事をしているのでそれも仕方のないことです。

ですが、一つだけ許すことができないことがあります。


それは土曜日の夕方の事。森川結菜さんが私の守様の頬にキスをしていた事です。


だから今日はしっかりそのことについて言及したいと思います。


「森川さん?少しよろしいでしょうか?」


昼休みになったタイミングで私は自分の席に座っている森川結菜さんに声をかけます。


「うん。何か用かな?」


森川結菜さんがキョトンとした表情で私に言葉を返します。

彼女の机の上に開かれたノートに守様そっくりの絵が描かれているのを見た時は、流石にイラっとしました。


「え、ええ。あの〜。その〜。端的に申します!あなたと守様の関係を教えてくれませんか!」


つい感情的になってしまいました。

クラスメイトの視線が私たちに集中します。


「え?私と守君の関係!?」


顔が真っ赤になりました。やはり何かありますね!


「その反応だと、……その……お付き合いされているのですか?」


思い切って聞いてみます。緊張のあまり語尾をはっきり言うことができませんでした。


「つつつつつつ付き合ってないよ!ただの友達!」


腕を顔の前でブンブンと振りながら否定しています。顔がものすごく真っ赤なので全く信用ができません。ですが、もし付き合ってたら否定する必要はないはず。だから私は一安心しました。


「そそそうですか。あはははははは。」


「そそそそうだよ。あはははははは。」


なんか私と森川結菜さんの間に嫌な空気が流れます。

その時、

「ねえ、山野さん。悪いのですが今からレート1のプレハブに行って、放課後に1人だけ生徒会室に来る様に言ってくれませんか?レート1なら誰でもいいですから。」

会長が話しかけて来ました。


「会長!それなら小山守君がいいと思います!」


森川結菜さんが元気良くそう言います。


「そうですね。私も小山守様がよろしいと思います!」


「小山守?ああ、山野さんがいつも生徒会室で話している人ですね。その人でいいですよ。」


「ぎゃーー!会長!それは言わない約束。」


流石にこの時は慌ててしまいました。皆さんに私の想い人がバレるところでしたわ。

会長は鈍感だから問題無いのですが。


「ああ。そうでしたね。それじゃあ2人とも知り合いそうだし、2人で行ってもらっていいですか?」





それから私は森川結菜さんとともにレート1のプレハブに向かいました。


その道中で想い人の探り合いをしましたが、森川結菜さんも十中八九、守様の事を慕っていることは分かりました。

おそらくですが、森川結菜さんも私の想いに気づきました。


私の調べではメアリー=ステュアートさんも守様を狙っているらしいですから、またライバルが増えたと言うことですわ。


ですが、私は負けませんよ!たとえ相手がアイドルだったとしても、最後に守様と結ばれるのは、この私なのですから!



読んでいただきまことにありがとうございます!



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