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幼馴染に告白したいのに、金髪美少女(子持ち)が全力で迫ってくる  作者: 向原 行人
第2章 お嬢様? 常識外れの金髪少女

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第10話 思い出

「優ちゃん。床に寝ころんで、一体ミウとどんな遊びをしてたん?」


 リナさんが苦笑いしながら、僕の手を取り、上半身を起こしてくれる。

 おそらくリナさんは、僕が寝転びながら、ミウちゃんと遊んでいたと思っているのだろう。

 だけど、実際はそうではない。まだ手が少し震えているし、自分で判るほど血の気が引いていて、立ち上がる事すら出来ていない。

 丁度良い機会だ。優子からリナさんが納得するまで住んでもらうという話もあったし、改めてはっきり言っておくべきだろう。


「リナさん。遊んでいたわけじゃないんです。僕は子供が苦手、それどころか怖くて、ミウちゃんと二人っきりになって、誰からも助けて貰えないと思った途端に、気を失ってしまって」

「優ちゃん。それ、本気で言っているん!? ミウはウチらの娘やで?」

「……うん。僕はミウちゃんと一緒に居るだけで、その小さな身体を傷付けてしまうのではないかって、怖くなってしまう。だから、そんな僕がリナさんの夫で、ミウちゃんの父親だなんて有り得ないんだ」


 言った。言い切った。

 僕のトラウマを誰かに話すのはきっと初めての事で、僕がリナさんの夫ではないという話は三回目だ。

 誰かが一緒に居て、何とかしてくれるという希望があればまだ堪えられるけど、そうでなければ本気で気を失う程、子供が苦手なんだ。

 演技でも何でも無い、今の真っ青であろう僕の様子を見てくれれば、きっとリナさんも分かってくれるだろう。

 さて、リナさんはどんな反応をするのかと、チラリと顔を上げた瞬間、顔に柔らかい何かがぶつかって来て、視界が白一色に覆われる。

 ムニムニとして温かい。これって、やっぱりアレ……だよね?

 無理矢理顔を離すべきだと頭では思っているのだけれど、アレの持つ魔法とでも言うべき強力な吸引力に、柔らかな膨らみから顔が離せないっ!


「優ちゃん、ごめんな。ウチが市販のアイテムなんて使わせちゃったから。ウチとミウみたいに、自分で作った物を使うべきやってんな」


 僕の顔が埋められている膨らみについて考えている間に、優しく頭を抱きしめられ、悲しそうなリナさんの囁きが耳に届く。

 相変わらず話している言葉の意味は分からないけれど、僕の事を気遣い、心配してくれている事は伝わってくる。


「優ちゃん。事故で記憶が混乱しているみたいやけど、ウチと少しずつ思い出していこっか。ミウが初めて歩いた時の事は覚えてる? 部屋にあるソファに捕まって、急に立ち上がった事。それまではハイハイとか転がったりしてただけやったのに、突然過ぎてすっごく驚いたやん」

「……」

「じゃあ、ミウが初めて喋った時は? 最初の言葉がママやったから、パパじゃなかったって、優ちゃんがすっごく悔しそうにしてたやん」


 リナさんが優しい声で、僕に語りかけてくる。

 凄く具体的に話してくれていて、作り話だとは到底思えない。

 だけど、それでもやっぱり僕には覚えが全くなくて、誰か別の人の話を聞いているようだ。


「それなら、結婚式の事は? ウチが両親への手紙を読んだ後、サプライズだって言って、優ちゃんがウチ宛てに手紙を読んでくれた事とか」


 何それ? 結婚式で新郎が新婦に向かって手紙を読むの?


「他にも初めて空を飛んだ時なんかは、まだ恋仲になってなかったのに、優ちゃんが顔を引きつらせながら、ウチに抱きついてきたりしたやん」


 飛行機で? いや、家族旅行や修学旅行で何度か飛行機には乗っているし、顔を引きつらせる程怖がらないと思うんだけど。

 しかも恋仲じゃないって事は、友達とか知人って間柄の異性に抱きついたって事だよね? 流石にそんな事はしないってば。


「それから、ウチと初めて会った時の事は覚えてる? 森の中でモンスターに囲まれて、半泣きになってたよね。あの時、ウチが助けへんかったら、ホンマどうなっていた事かと思うわ」

「ちょ、ちょっと待って。リナさん、さっきから一体何の話をしているの!?」

「ん? ウチと優ちゃんとの思い出やけど?」


 暫くリナさんに身を任せ、大きな胸に顔を埋めながら話を聞いていたけれど、流石に突っ込まざるを得ない内容になってきて、ようやく顔を離す。

 リナさんが、どうしたん? と、キョトンと小首を傾げているけど、小首を傾げたいのは僕の方だからね?

 森の中でモンスターに囲まれるって、一体どういう状況だよっ! というか、モンスターって何!? 僕たちはゲームの中で出会ったの!? オンラインゲームの中で結婚したって事!?

 でも、それならミウちゃんが生まれる訳なんて……


「あ、あれ? そういえばミウちゃんは?」


 ツッコミたい事はいっぱいあるけれど、それよりも何よりも、リナさんが両手を僕の頭に添えているから、ミウちゃんを抱きかかえていない。

 僕の周囲にも居ないし、一体どこへ行ったんだ!?


「きゃははは」


 不意にキッチンの方から、楽しそうに笑うミウちゃんの声が聞こえる。

 リナさんと僕の目が合い、そして二人で声のした方へ向かうと、


「えっ!? 何これ、どういう事!?」


 キッチンの床がびしょ濡れで、水たまりのような水でパシャパシャとミウちゃんが遊んでいた。


「あ! ご、ごめんっ! お皿を洗うのに、お水を出し過ぎちゃって……って、ミウっ! びしょびしょやんっ! 優ちゃん、お風呂借りるね」

「え? あ、うん」


 慌ててリナさんがミウちゃんを抱きかかえて去って行ったけれど、どうやったら皿洗いでここまで水を零す事が出来るのだろうか。

 小さく溜息を吐きながら、雑巾で床を拭き終えた所で、


「優ちゃん。タオルを取ってぇー」


 お風呂場の方からリナさんの声が聞こえてきた。

 バスタオルを手に浴室の扉を開けると、ミウちゃんと共にリナさんが現れたのだが、


「優ちゃん。ありがとう」


 シャワーでミウちゃんを温めてあげたのだろう。

 だけど、リナさんの白いワンピースまで濡れていて、肌色の膨らみが透けてしまっていた。


 ……って、どうしてノーブラなんだよっ!

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